初めての日曜日

昨日遅くまで作業をしていたせいか、多少疲労感の残る目覚め。

ラボを訪ねると、鍵がかかっている。アブーから着信があり、 彼はいま洗濯物を洗ってるところだとのこと。わざわざ鍵を開けるためだけに来てもらうのも悪いので、今日は大丈夫だ、もしラボに来るなら教えてと伝える。

そうだ、日曜日は休むべきだ。ということでタコラディの町へ繰り出す。地元の人は町の中心部をタウンと呼んでいる。シティじゃないのがポイント。高い建物も存在しない、まさにタウン。

TTIからタコラディ市内にでると、幹線道路が3本走っている。真ん中のLiberation Rd.を南に歩いて行くとマーケットサークルにたどり着くことを学んだ。

しかし協力隊も入っておらず、全く外国人の気配がしないタコラディ。単身で乗り込んでいる身としては寂しさを感じることもあるが、一たび町中に出ると中国人、中国人と言って騒がれるので寂しくはない。

ぶらぶら歩いていると女の人に腕をつかまれた。中国人?と聞かれたので日本人と答える。あなたまだ結婚してないでしょ、結婚して日本に連れて行ってくれと頼まれた。初めてのプロポーズに苦笑いしつつ「オーケー」と情けない返事を返す。こういうとき何か気の利いた返し方はないのだろうか。

朝ごはんをまだ食べていなかったのでローカルフードの食堂を探す。You 84のスーパーの2Fはこじゃれたレストランになっているのでここでも食べられるが、せっかくの滞在なので地元の食事を楽しみたいところ。

そうこうしていると食堂を発見。店の女の子がフフやバンクーを売っているのが見える。鍋の中のスープはひたすら茶色い。よく考えるとこの茶色い色素ってスパイスの色なのだろうか。ターメリックとか?

バンクーは昨日食べたのでライスとチキンを注文する。ライスの上にケチャップで和えたスパゲッティをのせて、その上にスープの上澄みの部分をソースとしてかけてくれるのが現地流。

ご飯にスパゲッティかけるのが面白い。関西ではお好み焼きと御飯を一緒に食べるのと一緒か

席は埋まっているので、体格のいいお兄さんと相席した。運悪くスピーカーの目の前に座ってしまい、鼓膜がやぶれんばかりの爆音とともに朝食を食べる。昔デスメタルのライブで鼓膜を痛めた記憶がよみがえった。ガーナの音楽は好きなんだけど、スピーカーの前での食事は一種の苦行である。

さてご飯を済ませると、かねてから習得したいと思っていたファンティ語(現地語)の教材を購入すべく本屋を探す。耳の奥ではまだガーニアンミュージックが響いている。歩いていると看板を発見、いくつか本屋はあるみたいだ。しかし店の前に立っている少年に尋ねると今日は日曜日なので閉店しているとのこと。平日にまた来よう。

次はトシコさんに聞いたいくつかのお店を探してみようと散策を続ける。タコラディはパイナップルが美味しいと聞いていたが、道端でパイナップルを切って売っているおばさんを発見。一つ50ペソは安い。

とてもフレッシュです

パイナップルをほおばっていると、道の向こう側から大声で「カガワ、カガワ!(ガの位置にアクセント)」と呼ばれて吹き出してしまった。彼らにとって日本人とはマンUの香川なのか、と感慨にふけっていると、腰に下げた時計は何かと聞かれた。ガーナに来る前に勧められてつけているベープのことだが、これ時計に見えるんだ。

さて、次はベーカリー(パームベーカリー)を探してみようと散策を続ける。ハーバー行きのシェアタクシーのステーションの近くにあるそうだが、場所がわからない。ロンリープラネットとにらめっこをしていると、中学生くらいの子供たちに声をかけられた。名前はアーベイトとデニスという。どこに行くの?と聞かれたのでベーカリーと答えると、連れて行ってくれるという。 到着したのは普通のブース式のパン屋さん。教えてもらった店はたぶんここじゃないけど、パンを1セディだけ売ってもらった。

お昼も近くなったのでそろそろ帰ろうと思う。2人とは電話番号を交換した。バングラデシュでも子供たちが電話番号を教えてというのはよくあることである。

STCのバスステーションの近くに向かうと、North Seaというレストランを発見。ここも教えてもらったお店のうちの一つである。さっき朝ごはんを食べたばっかりだが、調査がてら店の中へ。なかなか綺麗な内装である。カウンターにはウィスキーやワインなどの酒瓶が所狭しと並んでおり、酒好きの友達と飲みに来てみたいなと思った。

飲み友がいないのがつらい

ここでは軽くハンバーガーとオレンジジュースを頼むだけに留める。 少し休憩したあとTTIに戻った。タクシーに乗るとだいたい4セディとられるが、何も言わずに3セディ渡すと大丈夫だった。やっぱり現地価格は3セディなんだ。

TTIに戻るとエマニュエル先生が昼ごはんに誘ってくれる。さっき食べたばっかりだが、お誘いなのでとお家へ向かう。2人の息子たちと奥さんのジュリーを紹介してもらった。上のお姉さんは結婚してアクラに住んでいるそうだ。

お昼ご飯をごちそうになり(朝ごはんとほとんど同じメニューだった(笑))、ソファーに腰掛けてエマニュエル先生と話す。ところで専門は何?と聞かれたので簡潔に設計支援システムですと答える。自身の 専攻である航空宇宙工学から適正技術の設計支援という現在のテーマへの変遷を話すのはなかなか難しいことである。学部時代は熱流体をやっていて、ロケットエンジンも設計しましたというとウケがいい。(確かに学部の授業ではロケットエンジンの構造及び設計という授業が一番楽しかった)。そこから現在の研究テーマに移るわけであるが、発展途上国のニーズに適応するようなプロダクトの開発をいかにして工学的に支援できるかに興味があり、このような実践活動を通じて知見を得たいのだと話すと納得していただいたご様子。

君の設計図面を見たよ、とエマニュエル先生。廃棄物処理問題を解決するためのこのプロダクトは良い着眼点だ、とおっしゃっていただいた。このプロジェクトは他の学科も巻き込んでTTIにおける統合的なプロジェクトとして取り組む価値があるともおっしゃっていただいた。かねてよりエマニュエル先生のお考えは聞いていたが、このようなものだ。講義で理論を学ぶだけではなく、プロジェクトに即してハンズオンスキルを身に付けることが必要である。そして大事なことは学科を横断したプロジェクトを行うこと。ファブラボに通う電子科だけでなく、TTIには機械、溶接、冷凍・空調設備、建築などの学科が存在する。そのような学生の知恵を結集してプロジェクトを行う教育プログラムを目標としているそうだ。その起爆剤としてファブラボを活用していきたいとエマニュエル先生が熱弁を奮う姿に、自分もまた共感し、再び奮起するのであった。自分のプロダクトの開発には溶接や機械加工が必要であるし、生徒たちにとってよい教材となってくれることを願う。

さて、話は多岐にわたった。3DプリンタのRepRapを日本のファブラボでも製作したりしているが、いずれオリジナルの3Dプリンタを開発してTTIに持ってきたいというと、 大喜びだ。また、自分がAVRのプログラミングやMODELAの使い方を生徒に教えているのを見て、テーマはなんでもいいから1日か2日のワークショップを開いて欲しいという。それはこちらとしても光栄な機会だ。iOSやAndroidなどのモバイル開発、Ruby on Railsを使ったWebデータベースアプリケーションの開発など教えたいことはたくさんあるが、おそらくArduinoの使い方を教えるのが効果が大きいように思われる。というのも彼らはハードウェアの製作には熟知しており、ソフトウェアの基礎もわかっている。しかしハードウェアをソフトウェアで制御するというところのリンクが不十分な印象があるからだ。XBeeも持ってきたことだし、無線通信を試してみても面白そうだ。

そういえば今年は去年は時間がなくて出せなかったJICAへの要請を出すと言っていた。この学校は実践に即した画期的な教育プログラムを提供できる可能性を秘めていると思うので、うまくJICAの支援が入ればもっと面白くなると思う。もしそうなったときはアドバイザーとして参加できないだろうか、と思いを巡らせるのであった。

28. 8月 2012
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