燃焼試験(KNSB)の進捗
第2コホート(2022年)のインターンによる燃焼試験が進んでいる。
第1回:2/22実施
推進剤中の水分、とくに液体ソルビトールに含まれる水分を十分に蒸発させて再トライすることに。
第2回:2/25実施
第3回:2/28実施
CuringはCasting後、通常1〜2日で完了する。放置が長すぎると硬化することが知られているが(5日程度で完全に硬化 by Nakka)、推進剤の性能も損なうようである。
第4回:3/1実施
最大推力は5N程度にとどまり、理論値の140Nとはかけ離れている(28倍の開き)。ただし計測値の信憑性が低いことが判明したため、次回の計測で検証する。
第5回:3/2実施
第2バッチのインターン生も参戦
計測された最大推力は60Nであり、理論値の140Nに近づいている。次はさらなる性能向上をねらって酸化剤リッチ(O/F = 68:32)で試してみる。ところで燃焼初期のCoughingが気になるところではある。
第6回:3/3実施
O/F比を高めて実験に臨む(O:F=68:32)。
最大推力は140Nを超えて160Nだった。設計の再確認を行うことに。
O/Fを少し低くして再実験する(O:F=67:33, 66:34)。
第7回:3/10実施
耐熱性から軟鋼で製造したノズルに換装して実験を実施。O:F比は67:33で、グレインを2つ搭載した。これにより、300N近くの最大推力が想定される。
試験は破壊的失敗に終わった。具体的にはノズルが脱落し、モータが破損した。
得られた推力曲線(ロードセルの仕様から、500N以上は信頼性に欠ける)
まとめ
- 最大推力は750N程度と出ているが、ロードセルの限界を超えているので信頼性に欠ける
- ノズルが分離したことは結果的に安全弁として機能した。チャンバーの圧力を逃がした。
- ノズルは遠くには飛ばず、テストスタンドのすぐ横に落下した
- テストスタンド、特に片持はりになっている部分が曲がった
- ケージが破損した
- 燃焼効率はほぼ100%であった
考えられる破損の原因
- 燃焼熱で燃焼室壁が溶けてしまった。ノズルとチャンバーの接続部周辺に穴が開いている
- 上記で空いた小さな穴の周辺に応力が集中し、チャンバー壁の変位をもたらした
- この変位によりチャンバーがノズルを保持できなくなり、ノズルを排出した。
改善点
- 燃焼熱からチャンバーを保護するための断熱を検討する。Nakkaのウェブサイトを参照する。
その後気づいたのがA7075の融点の低さ。A6063の融点615℃に対してA7075は477℃で融解する。そのため素材をA6063に変更することを検討した。材料の変更に伴い強度が低下するので、燃焼室の厚みを2mmから3mmに増加する必要がある。
一方で、シールが不十分なためにガスがノズルとチャンバーの隙間から漏れ、ノズルとチャンバーの不双方に過度な熱負荷が生じたという指摘があった。したがって次回の実験ではシールを強化し、A7075のまま実験を進めることになった。
第8回:3/18実施
失敗直後の実験で緊張したが、実験は成功した。概ね理論値に近い値が取得できた。KNSBが一歩完成に近づいた瞬間である。あきらめずにKNSBを追究した学生たちに拍手。