学部生研修

参加学生の所属学科は機械工学科(Department of Mechanical Engineering)、メカトロニクス工学科(Department of Mechatronic Engineering)、および電気電子工学科(Department of Electrical and Electronic Engineering)である。なかでもメカトロニクス工学科が半数以上を占め、全体のほとんどが最終課題(Final project)を控えた最終学年(学部5年生)の学生であった。また、17名の参加者のうち女性の参加者は5名であり、もともと工学部での女性の比率が少ないことを踏まえると、ジェンダーバランスも悪くはなかった。

12. 2月 2018
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技官研修のアンケート

次回また研修を実施する場合、どのようなことを望むか?

  • 最低でも2週間は時間をとって欲しい
  • 参加者はソフトウェアを事前にインストールしてくるべき(※だいたい最初の30分くらいの時間がインストールしてこなかった受講者のフォローで無駄になっていた)
  • MATLABの講習をしてほしい
  • 演習を多くして、1ヶ月間やってほしい
  • 特定の機械について、もっと深く掘り下げて教えて欲しい
  • CNCのプログラミングが知りたい
  • SolidWorksでの機械製図
  • CNCについてもっと知りたい
  • 演習の時間をもっと増やして欲しい
  • 参加者はソフトウェアを事前にインストールしてくるべき
  • 講習の修了証明書を発行して欲しい
  • もっと期間を長くして欲しい
  • Inventor、EAGLE、LPKF milling machineの講習をもっとやりたい
  • 自動車の電装、オンボード診断、新型車両のソフトウェア、SolidWorksを学びたい
  • PLCを学びたい
  • トヨタ、日産、スバルの車両の講習を受けたい
  • MATLABを学びたい
  • 最低でも1ヶ月は欲しい
  • Arduinoの使い方をもっと知りたい

今回の研修で得たスキルをもとに、どのようなプロダクトを開発してみたいか?

  • 家のモニタリングシステム(停電検知、水の備蓄量を計測、照明の自動調整、扉の遠隔開閉)。スマートフォンで操作可能にする。
  • Arduinoを使ってiPICにLED電光掲示板を設置したい。どの部屋が使用中であるか、その掲示板にリアルタイムで表示したい。
  • 地方の人々に使ってもらうために、バナナの葉からガラス板をつくりたい
  • ロボット
  • ドアの施錠装置
  • 流量計と計測装置(例:センサーつきで自動で停止するポンプ)
  • システムシミュレーション(例:鋳造部品の故障解析。排気ガスの条件分析。回転部品(ギアドライブ、モータ)のシミュレーション)
  • ソーラーポンプシステム
  • ロボットアーム
  • iPICで展示されているビークルのためのArduinoとステッピングモータで作る回転スタンド
  • 前方に車両が近づいたらヘッドライトを自動的に暗くする装置
  • 自動車のセンサーとアクチュエータ
  • 盗難防止のための自動車のイモビライザーとサムスターター
  • 自動車の追跡措置
  • 自動車用の排気ガスの汚染量センサ
  • 室温に応じたファンの回転数の自動制御

10. 2月 2018
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技官研修5日目

C言語によるArduinoプログラミング実習第三

この日の午前は、前日に説明していなかったArduinoによるプログラミングの要素を解説した。具体的には以下の2つである。

  • N型FETを用いたDCモータの速度制御
  • ステッピングモータの励磁の基礎と角度制御

 DCモータにはケニア現地で調達したDVDの駆動用モータを利用し、N型FETをドライバとして使うことで、FETのゲート電圧をArduinoからPWM駆動して回転速度を制御する方法を学んだ。また、ステッピングモータはiPICに在庫として保管されていたULN2003Aドライバつきの小型ステッピングモータを利用し、サードパーティのArduinoライブラリを利用してステッピングモータの角度制御を行う方法を解説した。

MIT App Inventor 2を用いたAndroidプログラミング実習

 本実習は当初開催を想定していなかったが、MATLABによる制御実習が割愛されたことと、受講者にアンケートをとったところ希望が多かったため、実習を実施した。

MIT App Inventor 2(以下AI2)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)によってメンテナンスされているAndroidアプリケーションの開発環境である。教育用プログラミング言語であるScratchに似たグラフィカルインターフェースを用いて、視覚的にプログラミングできることが特徴である。また、スマートフォンという身近な機器を自由に制御できるという体験は、多くのプログラミング初心者にとって新鮮な体験である。筆者は2016年にガーナの工業高校(Takoradi Technical Institute)で、教員及び学生を対象として、AI2を用いた一週間のプログラミング講座を担当した経験があり、教育におけるその有効性を実感していた。今回ケニアでも同様の試みを行ってみたかった、というのが背景である。

App Inventor 2によるAndroidアプリケーションのプログラミング

とりわけ参加者の興味を引いたのが、音声発話のアプリケーションである。任意の文章をテキストボックスに入力して実行ボタンを押すと、入力した文章が音声に合成されてスマートフォンから聞こえてくる、というものである。それだけでも結構面白がってもらえたのだが、たまたま参加者の一人がスワヒリ語を入力してもきちんと発音される事に気づいた。そうなると今度は自分の部族の言葉(Local language)を話させたいけど可能か?という質問が筆者のもとに来た。もちろん筆者はケニアの部族語を入力して発話させた経験がない(そもそも発音が正しいのかどうか分からない)ので、やってみればわかるよと伝えた。その参加者が早速試すと、周囲が爆笑に包まれたのであった。どうやらアクセントが微妙に違うが、割といい感じに発音されているらしい。筆者はケニアの言葉に詳しくないが、おそらくローマ字表記にかなり忠実に発音される言語なのであろう。筆者が以前滞在していたガーナの西部地方におけるファンティ語では、独自表記される子音の発音が多く、このようにうまく発音されるわけではないだろうと推測される。ケニアには42の異なる部族があり、政治への影響もあると聞く。自分の部族の言葉に自信のアイデンティティを感じている者も多いのだろうと感じた瞬間であった。

09. 2月 2018
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技官研修4日目

本日の研修では、マイクロコントローラを制御するためのプログラミングを学んだ。Arduinoと呼ばれる8ビットのマイクロコントローラを利用し、プログラムの開発環境としてArduino IDEを用いることで、機械設計によく使われる制御要素のプログラミング技術を習得することを目的とした。デジタル電子回路を制御するためには必須の技術であり、参加者のモチベーションも高かった。

C言語によるArduinoプログラミング実習第一

この講座では、Arduinoに関する簡単な説明と、プログラミングの基礎を説明した。ArduinoはC言語をベースに独自の関数を追加して拡張したArduino言語を用いて開発を行う。講習の際に心がけたのは、トップダウンにプログラミング言語の文法の解説を行うことはせず、あくまでも「それによって何ができるか」というトピックにもとづいて、その方法を解説するということである。本講習では、以下のトピックに基づいて実習を行った。

  • デジタル入出力とLEDのOn/Off制御
  • PWM(Pulse Width Modulation)とLEDの電流制御
  • UARTを用いたPC-Arduino間のシリアル通信
  • for文による繰り返し制御

プログラムのソースコードはなるべく簡潔にし、原理はホワイトボードを用いて分かりやすく解説することを心がけた。なかにはプログラミングのセンスを感じる質問を投げかけてきた参加者もおり、JKUATにおけるプログラミング教育のポテンシャルを感じる場面もあった。

ホワイトボードで動作原理の解説
Arduinoとブレッドボードを用いた電子回路上でのプログラムの動作確認

参加者の声としてC/C++プログラミング言語は学校で学んだが、実際に手を動かして実習を行ったことはなかったので、自信につながったという嬉しい声も聞かれた。

C言語によるArduinoプログラミング実習第二

この日の午後は、引き続きArduinoのプログラミング実習を行った。内容は以下である。

  • if文による条件分岐
  • A/D変換による可変抵抗器の両端電圧の読み取り
  • PWMによるサーボモータの角度制御
  • 実習:可変抵抗器を用いたサーボモータの角度指令制御

 A/D変換値とPWM出力のスケール変換を行うmap関数というArduinoの組み込み関数の理解が肝であったが、おおむね理解してもらえたように思う。また、サーボモータというアクチュエータの制御は、ロボット設計に向けた第一歩であり、興味を持ってもらえたように感じた。

08. 2月 2018
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技官研修3日目

本実習では、Autodesk Inventorを用いて2種類のシミュレーションを行う方法を解説し、実習を行った。この実習科目についても、iPICスタッフから是非研修を行ってほしいという要請があった。

iPICスタッフからの聞き取り調査によれば、彼らが用いたシミュレーションという言葉は、3DCAD上で設計したモデルのアニメーション動作のことを意味していた。これを学びたい背景は、製品設計において、仕様や動作を説明する際に活用したいということであった。したがって、Autodesk Inventorという機械設計で用いる3Dモデリングソフトウェアを利用し、シミュレーションの実習を行った。

Autodesk Inventorを選定した理由は以下である。

  1. 教育版の無償ライセンスが存在する
  2. アセンブリ拘束条件に対するアニメーションが作成可能である
  3. 構造解析(FEA)が可能である

研修に先んじて調査したところ、JKUATでは機械科にSolidWorksのライセンスが導入されているとのことであった。しかしiPICにはSolidWorksのライセンスは導入されていなかったため、教育用無償版ライセンスが利用可能なAutodesk Inventorを研修に採用した。また、今回の研修に必要な機能である、アセンブリ拘束条件に対するアニメーション機能と、構造シミュレーション機能(FEA)が可能である点も重要であった。

補足として、同様の条件を満たすAutodesk Fusion360の利用も検討したが、参加者の多くはAutodesk Inventorの経験は多少あるものの、Autodesk Fusion 360は利用したことが無いという者が大多数だったため、今回はAutodesk Inventorを利用することにした。

Autodesk Inventorを用いた運動学シミュレーション実習

 本実習では、平歯車の噛合動作のアニメーションの作成を行った。本テーマを選定した理由は、機械設計で最も頻出する、回転拘束に対してアニメーションを設定するという項目を解説したかったためである。なぜ回転拘束に対するアニメーションが重要であるかというと、機械設計ではモータやエンジンなどの回転駆動軸が、クランクシャフトやリンク機構を介して機械の全体動作を生み出すことが多いためである。

平歯車の設計はAutodesk Inventorに内蔵されるSpur Gears Component Generatorを利用して行った。そして大小2つの平歯車に対して、拘束とギア比を適切に設定することで、歯車の回転シミュレーションが行えることを確認した。また、最終的に作成したアニメーションを動画ファイル(.wmv形式)に書き出す方法も学んだ。 

歯車の噛合動作のアニメーションを作成する参加者

Autodesk Inventorを用いた力学シミュレーション実習

 Autodesk Inventorを用いて行うことのできるシミュレーションには運動学シミュレーションと、力学シミュレーション(構造解析)がある。iPICスタッフからの要望は前者のみであったが、後者も機械設計では重要なスキルであり、念の為に受講者に受講希望があるか多数決を取ったところ、ほぼ全員が(非常に前のめりな様子で)学習したいと挙手した。このため、当初のスケジュールに追加して研修を行った。

実際に行ったのは、有限要素法(FEM)による片持梁の応力・変位解析である。まず簡単に片持梁の材料力学理論を解説すると(片方を固定端、もう一方を自由端、自由端の末端に集中荷重)、参加者の多くが、理論は学んだことがある、という反応を示した。

 実習ではまずAutodesk Inventorを起動し、片持梁のモデリングを行った。その後Stress Analysisメニューから新規Studyを生成し、境界条件設定、荷重設定とメッシュ生成を行い、有限要素計算を実行した。von Mises応力および変位のヒートマップ表示を確認し、さらにアニメーションの生成方法を学んだ。そして運動学シミュレーションと同様に、動画の書き出し方法を習得した。

 筆者の印象であるが、FEMによる応力解析には参加者が特に興味を示していた。

電子回路基板への電子部品の実装実習(はんだ付け)

この日の午後はLPKF S63基板加工機を用いて作成した、DCモータの速度制御基板に対して、電子部品を実装するはんだ付けの実習を行った。筆者には驚きであったが、参加者の多くがはんだ付けは初めてであるようだった[

電子部品の基板上へのはんだ付けを行う参加者

実装した部品は、整流用ダイオード、積層セラミックコンデンサ、電気抵抗、およびFETである。事前に各部品に対する注意点の説明も行った(ダイオードの極性、電気抵抗のカラーコード等)。また、はんだ付けの代表的な不良パターンについても解説した(はんだ過少による接触不良、いもはんだ、ブリッジ)。なかでも、いもはんだの説明の際に、日本ではこの接触不良をその形状からPotato solderと呼ぶと解説したところ、受講者からは大きな笑いが起こった。はんだ付けの実習の際には、そっちのはTomato solderだ、いやAvocado solderだ、と独自の形式を生み出して冗談を飛ばしていた。

はんだ付けの実習が終わった後は、デジタルマルチメーターを利用した基板の導通チェックの方法について解説し、実際に受講者に対して基板検査を行ってもらった。かなりうまく部品を実装できている者も見られたが、全てのグループが何らかの箇所で導通不良を起こしていた。これは、はんだ付けを楽にするための、はんだフラックスが現地で調達できなかったこと[と、切削の深さが甘く、端子を切り離せていない加工不良の基板が存在したことも理由である。いずれにせよ、継続的にはんだ付けの練習をしていくことが必要である。


[1] 実はペンタイプのはんだフラックスがケニアでも調達できることを後で知った。

07. 2月 2018
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