あせらずに行こう
事務的な朝の作業を済ませると、ラボに向かってCADの修正を行う。
CNCで切り出す木材のパーツにスロットをつけて、再度dxf形式で書き出す作業だ。
作業をしているとオベッドがやってきた。
この子は鼻歌を唄いながら思ったことをつぶやく可愛い子だ。
いつも絵を描いてるよね、と言われる。確かにこの前オベッドがいるときもモデリングの作業をしていた。
君が絵を書くのが好きなら、僕は歌を唄うのが好きだ、とオベッド。この子はいろんなことに疑問を持つので面白い。
絵がうまいんだね、とオベッド。言っておくが自分の絵心の無さは筋金入りだ。自分は絵が下手だけど、ソフトウェアを使ってるから素早く絵が書けるんだよ、と伝える。自分はソフトウェア使えないや、それになんて速くタイピングできるんだ、自分もいつかそんなに速くタイピングしたいなあと言う。
そしてそのラップトップいいね、とオベッド。ガーナ人はみんなMac book airに興味津々だ。何その薄いPC?アップルのPCなの、と尋ねてくる。HDD入ってないの?とオベッド。薄いHDDが入ってるんだよと伝える。すると家にラップトップが欲しいなあ、それ置いてってよ、と言う。残念ながらそれは無理だ。
するとオベッドがあることに気づいた。なんで日本語使えるのにOSの言語設定を英語にしてるの?と。
これには参った。強いて言えば英語ソフトウェアを使っているときに日本語と英語が画面に入り交じっているのが嫌だからというのが理由だが、うまく説明できない。うやむやにしてごまかす。子供はいろんなことに気づくなあ。
他にも、いつ洗濯してるの?洗濯機、手洗い?家に帰ったら一人で何してるの?御飯食べて寝るだけ?とか疑問に思ったことをひたすら聞いてくる。家に帰っても絵を描いてるの?と言われたときは吹き出した。これは仕事だからやってるんだよと言うと、いつも仕事で忙しんだねと言われた。
Facebookをやってる?と聞かれたのでやってるよと答えると、自分もやってるという。彼のアカウントでログインすると、ymailというのを使っていた。こないだ買った蚊取り線香のパッケージに書かれてた代理店もymailだったな。ガーナのメールサービスなのだろうか。
ログインすると、これ見て、avatar知ってる?という。avatarなら知ってるよというが、なんか違う。Avatar: The Last Airbender(アバター 伝説の少年アン)という番組だそうだ。wikipedia見たら日本でもやってたらしい。その登場人物の解説を事細かくしてくれた。
すると今度はこれがお兄さん、と言ってお兄さんにメッセージを送る。
オベッド:hi
お兄さん:what? bad boy
兄弟のやり取りが微笑ましかった。
ところでカメラ持ってないの?と聞かれたのであるよ、と見せると写真をとってくれという。
若干キメ顔のオベッド
すると今度はカメラを手に取り、周りの写真を撮り始めた。
作業中のエベネザ
筆者近影
今度はアングルを工夫し始めた
色々と話に付き合っているとモデリングの作業は完了した。次はMOSFETを実装するPCB基板のパターン作成だ。 まずはEAGLEで回路図を書く。
お昼をもう回っているので、お腹がへったとオベッド。お母さんが家にまだ帰ってきてないようで、ここで時間をつぶしているようだ。しばらく遊んでいたが、どうやら時間が来たようで家に帰っていった。
さて、PCBパターンができたのでMODELAで切り出すことに。まずUbuntuとMODELAのシリアル通信を確認する。うまく通信しないので、シリアルの設定を変更する。ボーレートは9600で合ってそうなので、おそらくハードウェアフロー制御がOFFになっていたのではないかと思う。Linuxではminicomというソフトでシリアル通信を設定できることがわかった。
さて、基板を削り出そうとするとダグラスがやってきてcam.pyの使い方を教えてくれた。このソフトは使ったことないが、すごい多機能だ。Epilogレーザー、OMAXウォータージェット、その他カッティングマシンへのNCコードはひと通り出力できるらしい。もちろんMODELAのRMLもサポートしている。
さらに便利だなと思ったのが、座標の移動にgotoというコマンドを使っている。コマンドラインからMODELAのペンプロッタの座標を移動できるのだ(もともとはmoveというコマンドをリネームしている)。これは便利だ。原点をこのコマンドで調節して、相対座標を使って切削するのか、絶対座標での切削しか知らない自分には新たな発見だ。実際には絶対座標を利用していたが、目視で確認しながら位置を調節できるので、無駄が少ない。ここからも材料を極限まで有効活用するという姿勢が感じ取れる。
さて、自分の作ったbrdファイルをcam.pyで開こうとするが開けない。OS XとLinuxの改行コードの違いによる問題じゃないか、とか原因を探っていると、EAGLEのバージョンが自分の使っている6.2ではなく、5.7であることをダグラスが発見する。
そうなるとUbuntu側のアップデートが必要だ。このネット環境ではたかが数10MBのダウンロードに1時間以上かかる。なかなか不便だ。
あまりに時間がかかるので、自分で作ったRMLスクリプトを転送したが、座標が整合していない。日本ではうまくいっているのに、何でだろう。とりあえずEAGLEのアップデートを待とう。
MOSFETが使えないことにはステッピングモータが試せない。DCモータ用のTA7291Pは2個あるが、バイポーラトランジスタなのでスイッチング速度が遅いのと電圧降下があってステッピングモータには不向きだ。いや、待てよ。ある程度の周波数のパルスには応じるはずだから、テストには使えるはずだ。明日試しに使ってみよう。
夕方になり、モデムのクレジットがなくなったので買いに行く事に。前回のお店ではチャージできなかったので、別の店へ。全部で15セディ分のクーポンが必要だが、店によってはチャージできない可能性がある。よって5セディ買ってチャージしてみてOKなら15セディ買う、という作戦でいく。
まず最初のお店。5セディ購入して、チャージするがactivation code doesn’t exist. と出てチャージできない。例のごとく店のおじさんにチャージできないと言っても無駄なので次の店へ。5セディチャージ、成功だ。あと10セディくれというとAirtelはそれが最後だ、という。みんなMTNかTigoを使ってるのかな。
途中の店で晩ご飯を買った。今日もジョロフライスとチキンのセットだ。お腹へってたのでチキンを2つ、魚も一切入れてくれというと、だめだめ、チキンは1つだけよと言われる。ええ、追加って概念はないの?オリジン弁当だったら唐揚げ一つ追加してくれ、はダメそうだけど、個人商店なのに融通聞かないのね。お金は別で払う、って言わないといけなかったのかな。 ちなみにここではファンタを購入。久しぶりのジュースだ。
さて、Airtelを探して次の店へ。5セディチャージ、ここも成功。あと5セディくれというと、それで最後だという。なんでみんなAirtel持ってないの、と思いながら次の店。5セディくれ、というと2セディと1セディしかないというので2セディ購入してチャージ、成功だ。これで大丈夫、と残りの 3セディを購入する。ちなみにフライドチキンも売っていたので2セディで買った。ショーケースにフライドチキンが並べられている光景は、まさにファミリーマートのファミチキだ。ファミチキのコンセプトってもとはアフリカ起源なんじゃないの?とか勝手に思った。
ラボに帰って晩御飯を食べると作業の続きだ。
ビニール袋に入った水しか飲んでなかったのでファンタは至高の時間
Diecimiela-XBee-XBee-UNOという構成でヘンリーの回路を試すが、シリアル信号を受信していない。XBeeエクスプローラで直接送るとUNOはシリアルを受信している。ということはDiecimiela-XBee間の通信がまずいのか。要素はできていて、点と点をつなぐところまで後もう少しなのだが。
時間は20時を回った。蚊がすごいので退却することにしよう。明日はアブーもきっと来てくれるはず。ちょっとスケジュールが押しているのは若干不安だが、あせらずに行こう。
ミニスカ
ミニスカ=ミニスカートのことではありません。
ファンティ語でお金がない、という意味。
朝学校の中を歩いていると、休憩時間でたむろしている生徒たちにチャイナ、チャイナと囃し立てられる。これはいつものことなのだが、 今日はちょっと勝手が違っていた。というのも朝から知らない女の子にイタ電といたずらメールの攻撃を受け、かけてくるなと言っても繰り返しかけてくるのに多少気が立っていたからだ。多分、町で子供に携帯番号教えたのが友達に流通したんだろうな。
1回目は普通に通り過ぎたものの、次に道を通った時にチャイナ!と言われて反応してしまい、踵を返して生徒たちの方に向かった。家政科の前で女の子たちがスナックを売っており、男の子もそこに集まっている。俺は中国人じゃない、日本人だ、と騒いでいる子供に言う。すると彼はああ、そうといって、じゃあ何か食べ物買いなよと言ってくる。お腹いっぱいだからいらないと言うと、違う違う、俺は腹減ってるから買ってくれと言ってくる。明らかにからかっているのが目に見えたので、
「ミニスカ」
と捨てぜりふを残して立ち去った。
すると 後ろは大歓声である。ファンティ語喋った!ミニスカだってよ!みたいな感じ。
別に中国人って言われたことに腹が立ったわけじゃないのだが、もう少しフレンドリーな絡み方してくれればと思うのである。
さて、今日はCNC用のステッピングモーターの動かし方を考えていた。
ステッピングモーターの駆動にはドライバー回路が必要だ。MOSFETは町で手に入りそうだが、コントローラICは手に入るのか?ない場合はマイコンで自作することになりそうだ。というか、G-CODEからパルス信号を生成するソフトウェアの規格がよくわかっていない。Mach3は日本語だからLinuxCNCを使うことになるのかな。
色々と調べ物をしていると、ヘンリーがちょっと聞きたいんだけど、と話しかけてきた。
見せたいものがある、といってUSBドライブを挿して文書を開く。
文書にはラジコンボートの作り方が書いてある。ははぁ、これが作りたいのか。
作り方をダウンロードしたんだ、と計画書を見せてくれた
そして発泡スチロールで作ったボートを棚から持ってきた。モーターもつけてある。
彼によると、無線による制御回路をどう作ればいいかが知りたいようだ。
見せてくれた文書はラジコン用のリモコンを使っている。リモコンはあるの?と尋ねると持ってないという。
ここで持ってきた秘密道具の出番とばかりに、XBeeを見せ、これを使うと簡単に無線制御ができるんだと説明する。
これはガーナのどこで手に入るの?と聞かれたので、そうだよね、ガーナでは手に入らないと思う。だからこれは君にあげるよと伝えた。
口頭で説明するだけじゃわからないと思い、ラジコンボートを作るにはこういうシステムが必要だね、とノートに書いて作るべき要素を説明する。
彼の作りたいボートはスクリューではなくファン(プロペラ)で駆動し、フィンをサーボモータで動かすというものだ。プロペラは持ってるの?と言うと、設計してレーザーカッターでつくってみたけど風が来なかった、という。それもそのはず、ブレードとなる翼型にはキャンバーが必要だ。平板翼を軸に垂直に回転しても迎角がないので翼の上下面で圧力勾配は起こらず、風は発生しない。ちょっと待ってて、とヘンリーがCPUの冷却ファンを持ってきた。このCPUファンが使えないかな、と言うので少し重いかもね、と伝える。家にまだ別のがあるから明日持ってくるよ、とヘンリー。
しかし車でも飛行機でもなく、ボートを作りたいというのが面白い。なんでだろう、と思っていると別の文書を見せてくれた。そこにはエンジンでファンを回して推進する水上ボートの写真がある。父さんがこれと同じボートに乗ってたんだ、と教えてくれた。そうか、その姿を見てボートが作りたくなったんだと納得。
ここでヘンリーが、「でも、なんか納得出来ないんだ」と言う。聞いてみると、後ろに付いているファンを回すだけで人が乗ったボートが動くなんて信じられないと。ああ、確かに子供の疑問としては当然だ。例えば扇風機を回しても、勝手に前進したりしないから。「プロペラは後ろに空気を送り出しているんだけど、その空気というのは質量を持っている。そして力学の法則というのがあってね。僕がヘンリーを押すと、ヘンリーは僕を押したことになる。僕が机を押せば机は僕を押したことになる。これを作用、反作用の法則という。つまりプロペラが空気中の粒子を押すということは、プロペラは空気中の粒子に押されることになる。これがプロペラで推進できる原理なんだ」
彼は、そうなんだと笑顔で納得してくれた様子。ジェットエンジンやロケットエンジンも、機構は違えどもガスの排気による推進という点では同じようなものだ。ペットボトルロケットの実験とかしたら喜びそうだ。
面白いプロジェクトになるね、と彼に告げる。今日はこれで大丈夫だと言ってヘンリーは帰っていった。
さて、ステッピングモーターの続きだ。その前にお腹が減ったことに気づく。今15;30を回ったところだが、昼ごはんを食べていない。最近1日2食生活が続いている。朝8時に食べて、夕方17時に食べるといった具合だ。あんまり動かないのでこれでも大丈夫だと思っていたが、やはりしゃべるとお腹がへる。そうだ、トシコさんに教えてもらったNo.9近くのフライドライス屋に行ってみよう。
No.9とは場所の名前で、TTIの目の前の通りを北に10分ほど歩いた信号のある交差点のエリアの通称である。なぜNo.9っていうんだ、No.1とかNo.2はないのか?とみんなに聞いたら笑いながら、No.1とかNo.2はあるよ。そういやNo.6はどこだ?なんて話をし始めた。ダグラスが自分の家はNo.1にあるという。なんでNo.1って名前なの?って聞くと、「そりゃ自分の家は初めての場所だからだよ、なにが初めかっていうと」というところまで言って自分で吹き出し始めた。とりあえず誰も理由は知らないようだ。あとでエマニュエル先生に聞いてみたら、ガーナのミスコンに出た女性(タコラディ出身ってこと?)の登録番号がNo.9だったからとか、なんかいろんなことを教えてもらった。諸説あるのだろうか。
さて、歩いているとNo.9に着いた。しかし肝心のお店はどこだろう。散策しているとスポットを発見!スポットとはバーのことである。アクラでは立ち寄ったことがあるが、TTIの周辺では全く見なかった。しかも看板にフライドライスと書いてある。早速入ってみるが、電気がついておらず人影がない。閉まってるのかな、と店をあとにする。するとその隣にブースのフライドライス屋を発見。ここの事かもしれないと思い、フライドライスを頼むと売り切れとのこと。ジョロフライスを注文した。
フライドライスにはキャベツを入れてくれるのだが、すかさずマヨネーズも入れてくださいとお願いする。ライス系の食べ物にはシトというソース(食べラーという表現をされている方がいたが、まさにそれ)をかけてくれるのだが、シトとマヨネーズの組み合わせは最高においしい。シトはかつおだしの香りがするのだが、この組み合わせはまさにお好み焼きみたいな味である。
さて、ご飯を購入したのでTTIに戻る。帰りはトロトロで。
ご飯をすませて作業を進めていると、また停電だ。夜のファブラボは完全に真っ暗闇なので、片付けをして家に帰る。それにしても蚊が多い。
帰宅してもPCのバッテリには余裕があるので調べ物を続ける。また、ステッピングモーターの動かし方について、CNC自作の経験がある友人(メカ屋)と頼りになる後輩(回路屋)に相談する。2人の共通点はロボコンをやっていたことだ。ロボコンやってる人の技術はすごいと感心する事が多い。
ここでふとマイコンのプログラミングについて、あるアイディアがひらめく。ATtiny26をSTK500でプログラミングするのもいいが、ArduinoISPを使ってはどうだろう。ATmega328は多分ガーナで手に入らないが、空輸できるとしたら…
磁石を集めよう
朝ラボに着くと、早速HDDを分解してネオジム磁石を取り出していた。
HDDを分解して磁石を取り出す
アイザックは横断幕の作業の続きをやっている。この作業が終わり次第町に繰り出して磁石を探しに行こうとスティーブンと話す。
ここで停電だ。またPCその他の機材が使えない。ラボにいてもやることがないので、Vodafoneオフィスに併設されているインターネットカフェでダウンロードを行うことにする。
ここで述べておきたいのが、ここガーナではデータのダウンロードに時間がかかるということ。フリーソフトウェアであっても、日本でのように、すぐにダウンロードしてインストールというわけにはいかない。一回一回ダウンロードし直すのではなく、データはCDなどのメディアで保存しておき、次回のインストールに備えるのが普通のようだ。AVRStudioやArduinoなど、今後みんなにインストールしてもらいたいソフトウェアがたくさんあるので、ここで一気にインストールすることにした。
Vodafoneネットカフェの利用料金は1時間1.8セディ。速度は1Mbps程度で自分のE-Mobileと変わらないが、3G回線よりはかなり速く感じる。ちなみに通常は持ち込みPCでWi-fiを利用することができるそうだが、故障中で使えなかった。
Python,AVRStudio(4,5,6),WinAVR, Ruby,Java(JRE,JDK,Android SDK),eclipse(Java EE),MySQL, X-CTU,Arduino, Processing, Visual Studioなどをひたすらダウンロードする。
途中でFirefoxを落としてしまいVisual Studio 2010 Expressのダウンロードだけ間に合わなかった。それにしてもVisual Studioのダウンロードに1時間以上かかるとは何ともはや。
さて、午後にラボに戻ると、町に繰り出す準備が出来たようだ。スティーブン、アブー、ダグラス、そして自分というチームでトロトロに乗り込んでタウンへ。果たして磁石は手に入るのか。
磁石を求めて町を歩く
はじめの1,2軒では すぐに1個、2個ほどHDDを譲ってくれた。幸先はいい。
しかしここから難所にはまることになる。 ガラクタ同然であとは捨てるだけのHDDでも、こちらが欲しているという状況につけこんで高額を請求してくるのだ。
もともとジャンクのHDDはスクラップとして2セディで売っているらしい。よってこちらの作戦としては、磁石を外してあとの部品はケースに戻し、磁石だけを廉価で譲ってもらえないか?というものだ。
この交渉を最年長のスティーブンが買って出る。しかし商売人相手の交渉は難しい。近くにいると、あの中国人は誰だ?と騒がれて交渉に悪影響を与えかねないので、忠告通り離れたところから見守ることにした。
すると子供たちが恐る恐る寄ってきた。最初は挨拶だけにとどめていたのだが、赤ちゃんをだっこさせてもらったりすると、子供たちも警戒心が溶けたようでもう大騒ぎだ。
「オブロニ、オブロニ!」と集まってくる子供たち
写真をとると、自分もとってくれ!と順番にポーズを取り出す始末。子供たちが集まりすぎて道を塞いでしまい、通行の邪魔になったのでその場を動くことを余儀なくされた。しかし、子供たちは可愛かったなぁ。そのときの写真は別の投稿にまとめました。
さて、店を覗いてみると交渉はうまくいったようだ。HDDを外して磁石を取り出してもらっている。
HDDを分解してもらう。店のおじさんのTシャツのレベルがSuperdryばりに高かった。
さらに数個の磁石を手に入れて、休むことなく次の店へ 。しかし、なかなかうまくいかない。この店主は10セディだ、と言い出した。ゴミ同然のものを欲しい人がいるから売りつけるというのはわかるが、商売人ならタダ同然なんだから無料であげて、信頼を築いた上で次回に自分の店で商品を買ってもらおうとは思わないのかな。結局この店での調達はあきらめ、次の店を探すが、今度のおばさんは20セディだと言い出す。これにはアブーが話しても時間の無駄だと言ってすぐに立ち去ることに。
今日はそろそろ日が暮れるので、明日また散策を続けることにする。TTIに帰る前にケンケを買って帰ろうとの話になり、サークルへと向かう。ケンケはコーンをすりつぶして発酵させたものである。
ケンケをチリソースにつけて食べる。魚、エビ、タコのフライを添えて
さあ、今日はもうおしまいにしようかというところで、ラボの端末にPythonをインストールしてみた。
かねてからプログラミングを教えて欲しいと言われていたので、興味津々でみんなが集まってきた。これは教えるチャンス、ということでリスト、タプル、ディクショナリの区別、forループとインデントなどを教える。
チュートリアルがてら、こんな感じのコンソールアプリを作ってみた。ファブラボのメンバーの年齢を尋ねるものだ。
>> Who’s age do you want to know?
ebanezer
>> 20
これにはみんな大喜びだ。「プログラミングすげえ」 と言わんばかりに言葉を失ってくれて、こっちもうれしい。
調子に乗ってAndroidのプログラミングの方法を見せたり、前に作ったスターリングエンジンを見せたりした。するとそれに触発されたのか、今自分は自作のCNCミリングマシンを動かしたりプラズマカッターの修理がしたいんだ、そのためにAVRを勉強したい、とアブーが言う。
結論として、ファブラボの中にもいろいろとニーズがあることがわかった。まずは手始めにCNCのステッピングモーターのドライバを書いてみよう。
材料の選定に関する私的メモ
材料の選定における「木材+金属の提案」→「フル金属で作ろう」→「やはり木材」という曲折は自分の研究にとって学びの大きい経験だった。最初の提案の意図は、「負荷のかかる軸周りに金属を利用し、それ以外の部分は加工しやすく安価な木材を使う」という提案だった。これがリジェクトされてフル金属の提案に賛成した理由は、木材は劣化しやすくランニングコストがかかることであった。そして最終的に金属加工に困難が予想され、木材が選ばれたのであった。
これだけの事例だが、材料の選定という工学的な意思決定に関して興味深い考察を行うことができる。
結論から言うと、自分の中で明示的ではなかった思考の前提条件が明らかになった。
まず「木材+金属の提案」フェーズでは、「プロトタイプとしての加工容易性」と「価格が安価」という2つの観点をこちらから主張した。
そして「フル金属への合意」フェーズにおいて、「価格が安価」という点について金属の方がランニングコストが低く、修繕のコストもかからないことを彼らに説明された。また、「高い慣性モーメント」と「強磁性体」というおまけの機能(あったほうがいいかもしれないが、オプション)があることも提案を補強する理由とされた。今考えるに、つまりは「プロトタイプという目的」を最優先に主張しなかったことが曲折の要因であると考えられる。
しかし更に考えると、自分はこの地ガーナにおいて「資源に対する価値観」と「金属加工のハードル」という2点の認識に関するチューニングを誤っていたのではないか、というのが本考察である。
「資源に関する価値観」とは、簡潔に言うと失敗を重ねてゴミを出すことに対する憂慮である。自分の提案する手法は、プロトタイプを素早く作って新たなニーズに応じて改変していくということであるが、いたずらに失敗を重ねることは無駄なゴミを出すことにほかならない。もし木材を使ったプロトタイプがうまくいった暁には(木材は捨てて)どうせ金属で作ることになりそうだから、最初から金属で作っちゃう方がいいかなと考えたのである。(これについては、作った木材のプロトタイプの再利用を考えることで自分のフレームワークを改善することができるかもしれない。)
次の「金属加工のハードル」の意味は、「自分は金属加工に慣れていないが、彼ら(特に機械科の学生)にとっては金属加工、溶接などはお手の物なのでは?」と考えたことである。金工が容易であるなら(前述の理由もあって)金属をとらないわけはない、と思ったのであった。(結局、当初想定しなかった困難が発生して金属加工を回避した)。実際に彼らと接していると、「え、そんなに金属加工って当たり前なの」と思うことが多い。自分も帰国したら金属加工、溶接の腕を上げよう。