物理学科のドローン機材の見学
ドローン研究グループ(ウェブサイト:Drone Research Group at JKUAT)のメンバーたちと物理学科の実験室を訪問してきた。ドローングループに参加している物理学科の学科長の提案で、物理学科が保有するドローン機材を見せてくれるとのことである。この機材はIEEEの一部会であるGRSS(Geoscience and Remote Sensing Society )から2021年にJKUATに寄贈されたものである。(参考記事:Varsity Receives Drones from American based Engineers’ Society to aid Research (jkuat.ac.ke))
なぜドローン機材が物理学科に提供されたのかについては、JKUATの物理学科のコース分けが関係している。
- Control and instrumentation
- Renewable energy
- Geophysics
- Physics
1のコースでは自作した電子回路による科学観測を研究で扱っており、従来は高高度気球やCansatを用いていた。新たにドローンを使うことでより観測の幅が広がるため、この学科への供与が適切と判断されたようである。
ちなみに1のControl and instrumentationは「計測と制御」というニュアンスだと思うが、初めに聞いたときはなぜ物理学科の下にこのコースがあるのかが疑問だった。科学観測のための電子回路を設計実装してデータを取得するという点では理学部に位置づけられていることは理解できるのだが、一方でただ単にPLC(Programmable Logic Controller)のシステムを実装している卒業課題もあるようなので、これはむしろ電子工学の分野なのではという印象も持っている。また、2のRenewable energyでは例えば風力発電のタービン周りの流体計算などに取り組んでいる。3は地熱発電のための重力探査などで、ケニアならではという印象も受ける(ケニアは国の電力の約半数を地熱発電でまかなっている)。
フライトコンピュータと地上局の通信試験
本日は電装班がJKUATの農場でフライトコンピュータと地上局間の通信試験を実施していた。
N-2ロケットのボディ製造
今日は機体チームがグラスファイバー製のロケットのボディを製造していた。
まずは型となるPVCチューブ(56mm1本と75mm2本)にポリエチレンのシートを巻き付ける。これは硬化したグラスファイバーを型から抜きやすくするための処置である。学生たちは最初ポリエチレンシートを使っていたが、ポリエチレンシートのしわが最終品の寸法に悪影響を与えるため、別の方法(サランラップを用いる方法や剥がすための溶液を用いる方法など)を模索していた。結局どの方法もうまくいかず、最初の方法に帰着したとのことである。
固体モータの改良とリカバリ機構の動作試験
N-2ロケットの固体モータを改良している点については以前ブログに書いた。
先日の試験ではアルミ製の燃焼室が溶けてしまったため、燃焼室を軟鋼に変更して燃焼試験を実施することになった。自分はちょうど日本に出張中だったが、同僚の先生の監督の元、学生たちは無事に試験を実施することができた。
上記の動画ではテストスタンドがのたうち回っているが、これはロケットモータから隔壁(バルクヘッド)が外れてしまったことが原因である。バルクヘッドを固定するためのスナップリングを止める燃焼室の溝が浅すぎたため、バルクヘッドが外れてしまった。その点を改良して実施したのが次の試験である。
推力曲線は以下で、ピーク推力は514Nを記録している。今度はバルクヘッドではなくノズルが射出されてしまったため、急激な圧力低下が発生した。次はノズル側もスナップリングの溝を深くして実験を実施することになった。
さて、固体モータの改良に加えて重要なのが、リカバリ機構、すなわちパラシュートによるロケットの回収である。残念ながらパラシュートによる回収はこれまで成功しておらず、次回のイシオロでのN-2ロケットの打ち上げでは達成が悲願の目標となっている。ノーズコーンの射出は火工品(パイロテクニクス)を用いており、具体的にはクリムゾンパウダーと呼ばれる火薬を使用している。
加えてフライトコントローラに実装されている制御プログラム(ステートマシン)をテストするべく、チームはペットボトルロケットを作って実験に臨んでいた。
ペットボトルロケット打ち上げ(成功)
ケニアの学生たちと日本を訪問
ケニアの学生10名および同僚のケニア人教員5名と日本を訪問してきた。さくらサイエンスという科学技術振興機構(JST)が実施する交流プログラムによる招待で、東京都市大学に受け入れていただいた。学生たちはロボットやドローンの制御に取り組む研究室に滞在し、ケニアでは体験することのできない研究環境のもと、実験に取り組んだ。