ガーナの変化
両替と携帯のSIMの購入を済ませると、タコラディ行きのトロトロに乗るためにカネシへと向かう。
為替は1ドル3.9セディだった。1年前は3~3.3くらいだったと思うが、すごい勢いでセディが安くなっている。
カネシに向かう途中でRing road cetralを通っていると、遠くサークルの方に大きな坂が見える。
もしやと思って近づくと、なんと高架の道路を建設中である。ウガンダのカンパラも交通渋滞解消のための高架を計画中であり、いつできることやらという話を聞いていたが、こちらは1年で一気にできてしまった。なんとも景気が良いのだろうかと思った。
運転手にこの道路は初めて見たと告げると、これはブラジルの建設会社だよと言われる。よく見ると、「queiros galvao」というポルトガル語風の会社名を記したロゴが道路に刻印してあった。
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タコラディまでのトロトロは28セディ。荷物でさらに10セディとられたが、今回はバックパック、スーツケースにさらにインバータを入れたバックパックと荷物が多いので、致し方ない。
タコラディまでの陸路は何度も通っているが、見たことのある景色かと思えば、全く見たことのない場所もある。
Effiaの辺り(Effia Kumaとは異なる)は、ガソリンスタンドが多くあり、前面がガラス張りになった2階建てのオフィスビルなど、新しそうな建物も見られた。
また線路沿いではショベルカーがせわしげに稼働しており、建設業の人々が多く働いているのを見ると、ガーナ全土で建設ラッシュなのかとも思ったりした。
アーチのようにかかる街路樹の中には赤い花が咲いていたが、あれはなんという名前の花なのだろうか。
T.T.Iに到着してファブラボに一歩入ると、ラティーフ、クムシン、アイザックが迎えてくれた。みんな私服を着ていたが、ラティーフとクムシンは去年卒業したらしい。ラティーフはTTIの電気技師の退官に伴ってここで雇われる予定だそうだ。クムシンは仕事はしていないが、進学を考えているとのこと。200セディで購入したという、モニターに傷が入った中古のラップトップでProcessingのサンプルを動かして遊んでいた。電源コードを分流して自作のファンにつないでいたのは、彼らしいことだ。
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ほどなくしてエマニュエル先生とスティーブンがやってきた。結婚おめでとうと言われる。そう言ってもらえるのは率直にうれしかった。
深センからはるばる持ってきた5000Wのインバータを開封して彼らに見せると、屋上に設置しようと話している。以前太陽電池パネルを屋根に設置すると言っていたが、そこからバッテリを介して接続するのだろう。
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ジョンとアベル先生は今日はもう帰ったとのことなので、持ってきた電子部品は明日渡すことにする。
宿舎に到着すると、スティーブンが次のように言った。自分のために用意してくれた部屋には使えないエアコンがついていたが、今日の午後、エマニュエル先生が突然思い立ってそれを外すように命じた。今そのエアコンの設置口にはぽっかり穴が開いているので、木の板でふさごうという。しばらくするとラティーフとスティーブンが板を持ってきて釘でふさいでくれた。次に帰ってくる頃には新しいエアコンがついてると思うよ、とも言う。以前はエアコンなど望むらくもなかったが、それは楽しみな話である。
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穴の修繕を待っている際に、電気の状況はどう?とラティーフとスティーブンに聞くと、なんと改善されたという。その理由が驚くべきであるが、今年の11月に選挙があるためであるとのこと。国民の支持を集めるために頑張っているらしいが、頑張ってできることなら常にやってほしいと思うのは自分だけだろうか。
部屋にはいるといつもの故障したブラウン管テレビではなく、BRAVIAが置いてある。地上波はアナログ/デジタルとも見れないが、備え付けてあるチューナーで衛星放送を受信できるようだ。以前はそもそも電気がないのでテレビなど見ようと思わなかったが、楽しみが一つ増えたのはよいことだ。
蛇口をひねると相変わらず水はでない。バケツに水が組んであるが、バケツ一つでは足りないだろうな、と思った。
蚊よけのスプレーを撒いて、再びラボに戻る。
ラボに戻って最近の状況を聞くと、昨年作ったものとして、道路に設置する発電装置のプロトタイプを見せてくれた。道路を通過する車両の重量によってプレートが下に沈みこむが、この垂直変位をラックピニオン機構で回転力に変換してダイナモを回すという仕組みである。
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アイディアとしては面白い。が、発電後の整流回路や、そもそもアクリルで作っているために構造強度が考えられていない点が目についてしまう。これは自分がこの1年で機械設計の仕事をずっとやってきたからだろう。協力していただいていたHONDAの技術者の方と議論する中で、プロトタイプという言葉の定義が自分のなかで少し変わってきたこともある。
さて、見せてもらった発電装置は、機械科のクロード先生がアクラで同じものをみたという。彼に話を聞きに行こうと言うことで、機械科へ向かう。機械科ではメンサ先生と再会した。寡黙で怒ると怖いというイメージがあるが、温かく迎えてもらった。まあみな良い人たちである。
クロード先生に件のアクラで見た発電装置の写真を見せてもらったが、動画がないことからすると、これも本当に動作するかは疑わしいところである。ガワを展示会に出展して注目をあつめる、というのが常なのかもしれない。
クロード先生は数カ月前にフフパウンダーを作ったといって写真を送ってきてくれたのだが、今どこにあるのと聞くと、どうやらPolytechnicの学生が作ったらしい。ポリテクにあるから明日見に行こうと言われる。
機械科をあとにすると、世界銀行の支援で作られたという石油採掘用のシミュレータ室(Drilling console)を見せてもらった。なかなかお金がかかっていそうな雰囲気である。スティーブンが動かしてみようかというのでお願いすると、ひととおり機能を見せてくれた。使い方はUSのメーカーの技術者が直接講習を開いてくれて覚えたそうだ。ただし、より詳細な使い方についてはさらに講習を受けないとわからないとも言っていた。このシミュレータを使った実習を受けに来るのはTTIの学生ではなく、卒業生や現場の技術者らしい。
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同じ部屋ではダグラスが電気工学の個人講習を受けていたが、どういう目的で受けているのだろうか気になった。純粋に学究的好奇心で受けているわけではないと思うけど。
ラボに戻るとクムシンのラップトップにPythonや他のソフトウェアをインストールして過ごした。VisualStudioも入っていて、OpenCVの使い方を教えてくれという。自分で1ヶ月くらい試したが、難しすぎるとのこと。大学入学前のレベルでそれはそうだろうなと思ったが、明日やってみようと話した。
18時を過ぎてラボを後にしようとすると、スティーブンが話があるという。ラティーフとクムシンには席を外してもらって、ダグラスと3人で話をする。ジョンとアベル先生に買ってきた電子部品のことについて、忠告があるそうだ。
彼らとの話の中で、知らなかった事実が多く明らかになったが、まず、アベル先生が自分に頼んだ物品はTTIの仕事とは関係ないとのことだった。どうやら主にポリテクの学生に対して販売しているらしい。まあそれ自体は良いのだが、スティーブンたちが気にしているのは、前回GSMモジュールを送った時の代金を自分が回収していないことらしい。DHLで送料のみで250ドルくらいかかったやつのことだ。本体はeBayで60ドルくらいだったかな。正直に言ってもう忘れてしまっていたし、あのときの心境としては誰かのためになるならと損をかぶってしまっていたのだが、現地の人たちの間でアンフェアだとの声があがるようであれば、きちんとしなければならないなと思った。
スティーブンたちの心理としては、前回の代金を回収しないままに今回の物品を手渡すことはやめたほうがよいとのことだ。これは、そうすることにしよう。
それよりも厄介なのは、自分はFabLabに貢献すると思ってジョンやアベル先生を支援していたが、逆にスティーブンたちから見ると、自分は利用されているだけで、FabLabの成果につながっていないように見える話だ。
今回はGSMモジュールを使ってジョンたちをサポートすることを突破口としようと思っていたが、そういう心理的背景があると、当初の計画通りに進むかどうかは疑問が残る。まあそんなことは考えなくてもなんとかなるのかもしれないが。
晩ごはんを買いにいつものフライドライス屋に行くと、なんと閉まっている。閉店してしまったのだろうか。看板はまだかかっている。
しょうがないので交差点の場所、パイパーノまで歩いて行くと、ジョロフライスっぽいのを売っている店があった。そこで6セディのライスを買った。フライドライスじゃなくて、カリーライスと言っているように聞こえたが、普通のジョロフライスのような味だった。
食べてベッドに横になると、すぐに眠っていた。
機構変更
3/3 (Tue)
・筐体を溶接した後、ウィットウォース機構が上手く作動しなかったので当初の往復スライダクランク機構に戻す
・同時に往復する長さが足りなくなったので、モータに直結するアームの長さを増やす
・さらに重心を考慮してスパン方向の軸長を増やしたため回転軸回りの慣性モーメント(+杵の引き上げ時の曲げモーメント)が上昇し、ワイパーモータの最大トルクで駆動できなくなった 機構のガタも機械効率を下げている
・アーム長さを減らし、リンク機構をアクリル板に変更することに 重量計が無いので金属シャフトを使って天秤を作って計量する技を見出した
・アクリルは密度こそ鋼材より小さいが、長さにつれて反りが増えるので、重ねて使うことに 結局バンドルしたアクリル板を実際に計量してみると、鋼材の方が軽いという結果になってアクリルは却下された
・ここにきてアイザックが木材を使うことを提案したので、木材をノコギリで加工する
・機構を変更して再度組み立てるも、結局アームの長さがネックになってうまく回転しない これ以上アームを短くすると、フフを突くのに支障が出るのでこれ以上は短くしたくない
・このまま行くか決断を迫られたが、やはりワイパーモータは負荷時の回転数が低いので、日本から持っていったギヤードモータにまた戻すことに
・再度リンク機構を分解する 分解と言っても鉄をノコギリでひたすら切断するので相当な重労働である 手伝ってくれていたアイザックとエマニュエルがへとへとになっていたので、作業は明日に持ち越すことに
miscellaneous
3/2 (Mon)
・筐体組み立て
・過去数年やってきたなかで、一番タフなことの原因がわかった 口は達者な彼ら(功罪が半々)をどうやって手を動かすところまで持っていくか、ということ
・議論には参加するし、俺がその加工やってやると口ではいうが、実際にはやらない そこにボトルネックがあるからいつまでたっても製造業が生まれないのではとも思ってしまう あるいは階層化された教育機関の組織だけの話なのか
・失敗を許容する文化がない。失敗すると囃し立てられる。そこで偉くなるのは、実際には手を動かさずに口だけでのし上がる人。実際に手を動かすと化けの皮が剥がれる。
・Ask for permissionの文化から、Beg for forgivenessが認められる風潮にしないといけない。
・溶接科の先生に、ちょっとずつ加工するんじゃなくて、最初に全部の図面を持ってきて、一度に加工しろと言われる
・教科書にはそう書いてあるかもしれないが、残念ながらそれはここの現実には合っていない 先生は学校で加工を教えていても設計の経験がないので、まず試作という概念から理解してもらわないといけない
・特にここガーナでは材料に制約があるので、当初の理想的な設計は往々にして変更を迫られる また、その設計は必然的にブリコラージュである すなわち、設計解は材料の新たな発見とともに動的に更新される
・設計の議論において難しいのが、「試作だからここは不要」という点をどこで切るか。例えば臼を固定するピンは試作においては必ずしも必要でなく、あれば便利という程度の機能である。ただしそれを溶接してしまうと、組み上げた後の杵の位置の調節が効かなくなるというデメリットがある。
・この機能は不要だと納得してもらいたいが、口が達者な方の先生は議論では譲らない。
・最初は泳がせておいて、製作中にその制約(杵の位置調節の要求)が顕在化(目で見えるようになる)した時に、「それとなく」「ここは要らないんじゃないか」という必要がある 一旦引いて、その後うまく落とし穴にはめないといけない
ワイパーモータを動かす
3/1 (Sat)
・ワイパーモータの動作チェック
フレーム組み立て
2/28 (Fri)
・寝不足と日射病か重なったかわからないが、偏頭痛がする一日だった
・溶接科の学生のクリストファーにアーク溶接を手伝ってもらい、フレームを組み立てた