N-1モータ燃焼試験(4th trial)とモータの破壊
ロケット初打ち上げの余韻に浸る間もなく、学生たちは開発を続けている。
今日は打ち上げではなく燃焼試験をする計画だという。お昼前頃に試験実施のアナウンスがあったので、いつもの場所へと向かった。
またもや点火システムの不具合で、なかなか燃焼が開始しない。どうやら電池は2個よりも1個がベターのようだ。
3個くらいイグナイターを駄目にして、ようやく燃焼が始まった。
前回よりも明らかに推力の高まりを感じる。モータの片方の端を抑えているセメント製のノズルが宙を舞った。数秒後にカランカランという音がし、ものづくり工房の屋根に破片が落下したことを悟った。
2機目はラバールノズルつきのSRM。同様のサイズなので嫌な予感はするが、2機目は1機目よりも燃焼圧力が低くなる計算だとの報告を聞いて、2回目の試験に臨むことに。
SRMの構造が圧力を支えきれずに破裂した。車の防犯アラームの音が辺りに鳴り響き、ワークショップの技官たちが集まってくる。今はロケットの燃焼実験をしているところで、次回からは別の広い場所(運動場)で実験すると伝え、了解してもらった。
テストスタンドは木っ端微塵に粉砕されていた。
以下がモータ破壊時のスロー再生映像。防護のためのアクリル板を突き破って手前側にSRMが飛んできているのが分かる。あとで回収したところ、30mほど吹っ飛ばされていた。
推進班に事故原因の究明を指示する一方で、以下の方針を決定した。
- Static testはものづくりセンターの中庭ではなく運動場で行うこと
- 今回のモータの飛散距離30mを考慮して、Static testの実施時には安全半径30m以内に立ち入らないこと
- 次回の試験は今回のモデルより小型化すること。燃焼室圧力を落とし、ノズルで性能を補償すること
- 安全メガネの着用の徹底。EN166規格対応の安全メガネを購入する。
以下はテストスタンドが記録したデータ。
1回目は200Nを超えたところでノズルが吹き飛び、破壊には至らなかった。ノズルが安全弁(リリーフバルブ)の役割を果たしてくれたといえる。2回目は底板が破断しており、またロードセルの測定限界(200kg~2000N)を超えているために、この値に信頼性は無い。いずれにせよ、1回目に比べて10倍以上の推力が出ており、なんらかの要因により、設計値以上に燃焼室圧力が高まったことがうかがえる。
N-1モータ燃焼試験(3rd trial)〜そして打ち上げへ
Nakuja Projectのインターンの学生たちも順調に活動を進め、3度目の燃焼試験に挑んだ。実際は前回の試験から2回ほど点火システムの以上で燃焼に至らない実験があった。
今回はKNSUを2つ(F87級、F92級)とKNDX(F63級, F65級)を2つチョイスし、推進剤を製造した。
結果としてはKNSUは完全燃焼したが、KNDXは燃焼開始に至らなかった。学生の意見では、前日に製造したためにKNDXは湿気を吸ってしまった可能性があるとのこと。
動画は以下。燃焼時の音からもかなり推力が上がっていることがわかる(学生がよろめいているのに注目)。学生が試験するのを後ろから見ていて、これはロケットが飛ぶのに十分な推力だろうと確信した。思わず一緒に立ち会っていたケニア人の同僚とも目配せする。
燃焼試験の結果を学生がブログにまとめてくれた。
https://nakujaproject.blogspot.com/2021/04/report-on-static-testing-done-on-16th.html
推力試験のRawデータはここに。
https://github.com/nakujaproject/N1-motor/tree/main/Tests/April%2016%2C%202021
ピーク推力51N、平均推力17.49Nとのこと。1月にKNSUの初回燃焼試験をしたときはピーク推力が70gf程度だったので、70倍以上も推力が増強されている。
さて、SRMが仕上がるにつれて打ち上げが現実的になってきたなと思っていたら、今日の午後にワッツアップグループでロケットの打ち上げをするからと連絡があって驚いた。自分が学生のスピード感についていけていないが(汗)非常に良いことだ。
打ち上げ前には緊張の一瞬が辺りを包む。
飛んだ、、、が機体はすぐに空中でバランスを崩して墜落。しかし飛んだことには変わりはない。本当に飛ぶんだという純粋な驚きと、遂にここまで来たかという感慨にしばらくひたっていた。
後でスロー再生してみた動画が以下。
離陸直後に機体がロールしていることと、迎角が急激に増大していることがわかる。機体自体の安定性および発射台(特にレール)の改良が必要だと思われる。今後は機体の姿勢の安定化に取り組んでいく。
駐車料をぼったくられる
土曜の朝買い物にでかけて最後に寄ったウエストゲートで事件は起きた。カルフールで買い物しているとドライバーから電話がかかってきた。係員に駐車料金を払えと催促されたので*647#をコールして手続きに従って払ってくれとのこと。わかったといって電話を切ったが、代金が200シリングと一般的な料金の4倍くらい高いことに疑問を持った。再度ドライバーにかけ直し、ウエストゲートの駐車場に止めたんだよね?と確認するとそうだと言う。なぜか早く払わないといけない理由があるらしいので、伝えられた番号にコールして手続きを進めようとすると、3,000シリングという請求額がでてきた。どう考えてもおかしい金額だし、ナンバープレートを入力せよというダイアログで数字を入力させるキーパッドが起動してしまってナンバープレートのアルファベットを入力できない。ドライバーに不具合で払えない旨を伝え、駐車場の現地で払うことにした。
その後レジで支払いをしていると、レシートとは別にバーコードのついた紙をくれた。これを機械でスキャンすれば駐車料金が無料になるらしい。買い物して駐車料金が無料になるのなら200シリングを急いで払わないといけなかった理由はいったい何なのだろうか。ドライバーに連絡すると、車を動かせないので徒歩でくるとのこと。ウエストゲートの構内ではなく向かいの駐車場に止めたらしい。歩いて駐車場に到着すると、黄色いベストを来た係員の女性がいる。
(経緯が長くなって書ききれないので結論のまとめ)
- 駐車場はウエストゲートではなくカウンティの所有だった。駐車無料バーコードは使えなかった。
- 駐車後30分以内に200シリングをMpesaで払う必要がある。現金は受け付けない。払わないとタイヤをチェーンでロックする。買い物を終えて駐車場に戻ってきた時点でほとんど残り時間はなかった。
- Mpesaで払うプロセスで車のナンバーを入力しないといけないが、システムのバグでキーパッドが表示されてしまいアルファベットが入力できない。おばさんにシステムがバグっていて払えない旨を伝えると、お前は嘘を伝えて時間を引き延ばそうとしていると、取りあってくれない。本当だから話を聞いてくれと押し問答をしているうちに駐車から30分が経過してしまい、延滞料金の2000シリングが追加された。
- 駐車料金徴収のおばさんは停める人たちに終始喧嘩を売っていた。おばさんからの執拗な罵倒にキレて運転席から飛び出し、つかみかかろうとした若いケニア人男性は料金を払わず解放されていた。
- そもそもこのおばさんは本物の職員なのか?周囲の人をつかまえては罵倒を繰り返すなど、まともな勤め人の対応ではないだろう。ウェストゲートまで戻って警備員に助けを求めに行くと、うちの管轄ではないからと一蹴された。
- 結局駐車場の近くにいたインド人っぽい人たちに頼んで彼らの携帯からMpesaで2200シリングを代理で送金してもらい、同額を現金で彼らに渡した。彼らの携帯だとアルファベットは入力できていた。携帯の機種がシステムに対応してないから罰金を払わされるというのは全く納得がいかない。なぜシステムの不具合のつけをユーザが払わされないといけないのか、意味がわからない。
- 後で調べてみた感じだと、おばさんが本物の雇われスタッフであることは間違いなさそうだが、対応がメチャクチャなので気をつけたほうがいい。
N-1モータ燃焼試験(2nd trial)
まとめ
- 推力400gf(1月: 70gf, 3日前: 200gf)なので、着実に推力が上がっている
- 理論上の推力は~2,000gfなので、まだ1/5程度しか性能がでていない
- 2回点火が不発に終わったが、イグナイタの修正時にノズルのスロート径を広げた可能性がある。OpenMotorで計算してみたらスロート径5mmが6mmに増加すると(20%の増加)、ピーク圧力が30%程度減少することがわかった。燃焼室圧力の減少はすなわち推力の減少につながる。
- 点火システムの改良が望まれる(ニクロム線や火花点火など。モデルロケットのスタータを参考)
- パイロットランプなど、作動状況のモニタリングができると良い。リモコン信号の到達レンジも可視化したい。
N−1モータ燃焼試験
まとめ
- モーターケースが飛んでいった(バルクヘッドの保持力が不十分なのが原因→Manufacturing error)
- 最大推力は瞬時値で200gf。前回のグレイン(Castingしなかったもの)では70gfだったので、3倍弱程度の推力増加となる。
- 点火システムの改善が必要。最初の点火が不発に終わった。
- アクリル板で遮蔽してて良かった。。。😱