ココンペ
ココンペ(Kokompe)は青空市場を意味する言葉で、特にタコラディではアクラステーションの近くにあるスクラップなどの鉄鋼や木材などが手に入る巨大マーケットを指す。
Fab Moduleのサイトにはkokompeの名が冠してあるが、すべての機械を操作できるというコンセプトと、何でも手に入るココンペをニールが結びつけて名付けたようだ。
今日まず行う作業として、シャフトやベアリングを買いに行くことにする。寸法を確認して町に出かけようとすると、スティーブンが学校からのファンディングが下りたかどうか確認してこようと言うので、2人でエマニュエル先生の元に向かった。
エマニュエル先生の部屋に入り、本件はどうですかと尋ねると、どうやら最近の多忙のために校長先生へはまだ話をしてくださっていないようだ。経緯を了解し、ラボへ戻る。ファンディングが下りなかったことを説明すると、スティーブンがはてどうしようとため息をつく。
この流れはガーナで何度か体験したあのパターン、つまり今が自分で流れを変えていく時だと気づき口を開いた。「材料について、一番高価なのは発電機だ。したがってシャフトや小物については自分が負担するので今日部品を買いに行こう」と。スティーブンは、そうか、それなら大丈夫ということで出かけることに。
機械科のアイザックの案内のもとに、ココンペへ向かう。ココンペはアクラステーションからAxim Rd.を西に入って行ったところにある。
さて、買い物リストは以下だ。
– Φ12シャフト(軟鋼、あるいは低炭素鋼)×1100mm
– ベアリング
– 釘(1インチ 0.5lb、2インチ0.5lb)
– ボルト・ナット(M4×68個)
– スクリュー(M6×10個)
さてココンペに着くも、店の位置は看板などに示されていない。ニジェールのニアメのメインマーケットではエリアが細かく指定され、入り口に大きく掲げられていたものだが。とりあえずアイザックと一軒ずつ聞いて回る。まずはベアリングを調達した。一つ2.5ペソを2つ購入。その次はボルト・ナットとスクリュー。
ボルトとスクリューを購入
ボルト・ナットは一組30ペソ、スクリューは1個10ペソだった。ボルトは日本のホームセンターに比べて少し高めだなと感じた。そして次は釘だ。
釘を購入する
釘は重量単位で売っているのでハーフポンドと言って注文すると、手づかみでごそってとってくれた。どうやら重さは正確に計らないようだが、気前がいいのか悪いのかわからないところである。1インチと2インチを合わせて1ポンド購入して、2.5セディ。
さて、残るはシャフトだけだがなかなか見つからない。歩いて店を訪ね回るが、それにしてもココンペは広い。
材木店が集積しているエリア
歩いていると鉄材を扱っているエリアに差し掛かった。溶接の光が方々から目に入る。シャフトはこの辺で手に入りそうだ。集められた鉄鋼のスクラップが壮観だったので写真を取ろうとすると、近くにいるおじさんが声を上げている。なんで写真を取るんだ、と言っている様子を見るに、どうやら怒っているようだ。西アフリカでは勝手に店の物の写真を取ると金を払えと言われることが多い。ガーナは比較的写真については穏便だと感じていたのだが、人によるようだ。アイザックと目が合うと、小声で気にするなといっている。とりあえず印象が悪いようなのでおじさんの元に向かい、こんにちは、どうしましたかと声をかけるが、何を言っても「No, good.」の一点張りである。かなり頭に来ているようだ。仕方がないので、どうもすいませんでしたと告げてその場を立ち去った。
あとでアイザックが言っていたが、外国人が写真を撮るのを快く思わない人はガーナでもたまにいるそうだ。アイザックは写真とるだけなのに別にいいじゃないかとは思うんだけど、ああいう変わった人もいるんだよ、と言っている。自分のこれまでの経験から、もしかするとココンペはスラム、あるいは労働者のドヤ街なのかと思いアイザックに尋ねると、いや、ココンペは普通に商いの場所だよと教えてくれた。学校に行かずに仕事を手伝っている子供もいるけどね、とも言っていたが。
材料も手に入ったのでアクラステーションを通ってEffa Kumaステーションへと歩く。ところでココンペへ向かう道すがら、アクラステーションを通った際に物乞いの子供が近寄ってきた。自分は物乞いにお金を渡すかどうかは慎重に判断する節がある。判断に躊躇しているとアイザックが財布に手を伸ばしたので、これは現地民でも渡すべき状況なのだなと思い、コインを手渡した。この子をよく見ると、目に病気を患っているようだった。
ラボへ戻ると、別舞台がベルトコンベアに用いる自転車のチューブを切り開いていた。
自転車のチューブをベルトコンベアに用いる
並行して、買ってきたばかりの釘を使って土台を組み上げる。
土台の組み上げ作業
土台が組み上がると、ノミを使って底板の加工だ。
ノミを使って底板に穴を開ける
ちなみに英語でノミのことはChiselというが、筆者はこの単語を知らず、ノミを使おうと言われた時に、え?Chip saw?Chistle?と聞き返していた。あまり使う機会のない単語だが、道具の名前を覚えておくことは重要である。
お昼を過ぎると、いつものおばさんが落花生を売りに来たので一同が手を休める。このおばさんはさながらヤクルトレディといったところか。
落花生を売りに来るおばさん
作業を再開すると、次はローターにアルミニウムの保持パーツを釘で打ち付ける。
アルミニウム板を配置する
パーツを等間隔に配置するために端材のアルミニウム板でゲージを作ったが、これの精度が甘く、中心角45度の弧に10個配置すべきところが8個しか配置できなかった。ゲージをやすって修正したものの、結局想定していた80個の配置は78個となった。仕様には影響はないので大丈夫だ。
さて、片面だけで160個の釘を打つのはなかなか大変な作業だ。疲れたこともあり、反対側は翌日に持ち越すことにした。
今日アブーと雑談していて興味深かったのが、ガーナの言語に関してだ。昨日バンドソーの回転方向についてみんなが議論していた時に”Oruko one direction.” (オルコ ワン ダイレクション=一方向に回転する)と言っていたよねとアブーに尋ねると、そうそう、ファンティ語を話している時でも英単語を交えることがあるんだよと答える。通常は英語で表現されるために、お年寄りしか知らないファンティ語の単語もあるそうだ。例えばアブーの実家の言葉はワーリー語なので、黒板や鉛筆をファンティ語では何というか知らないと言っていた。
また、アブーは6つの言語を話せると言っていたけど、お互いの言語はどの程度似通っているの?と聞いてみると、多分それぞれは日本語と英語くらい違うと思うよ、との答えが返ってきた。これには驚きだ。自分の北欧出身の知人たちは、仕事でヨーロッパ圏内を渡り歩いているので5〜6カ国語を当たり前に話していたが、ヨーロッパの言語(例えば仏語、イタリア語、スペイン語などのロマンス語)は割と類似していることを考えると、この状況の特異さは際立っている。
ところでココンペについて面白い話題もあるが、それについてはまたの機会に書くことになると思う。