Work and work!
さあ、新しい週の始まりだ。週末は気分が乗らなかったが、気合を入れて行きたいところ。
朝ご飯を食べながらエマニュエル先生に、昨日は教会から何時に帰ったんですか?と尋ねると、それなんだよ、と笑いながら17時半くらいだと答える。昨日までは教会の仕事もやらなくちゃいけなくて大変だったけど、やっと終わって落ち着いたところだよ、とおっしゃっていた。学校の中から外から色々と仕事をされていて大変である。
さて、ラボに着くと今日の作業について皆で共有する。図面を見ながらドリルで空ける穴、底板、シャフトの長さなどを確認した。
準備が整うと機械科を訪れ、加工について先生に説明を行った。今日行うことを想定している加工内容は、
– マグネット保持パーツの曲げ加工
– 支柱プレートへの穴あけと曲げ加工
– プレートのスロットの加工
– 木製ローターへの穴あけ
– シャフトの切断
– 底板の加工
– ベンチの組み上げ
である。
ちなみに先生に、昨日教会で君を見たよと言われた。先生もいらっしゃったんですね。
さて、まずはアルミニウムパーツの曲げ加工からだ。
曲げ機の使い方を教えてもらう
160個もパーツがあるのでなかなか時間のかかる作業だ。はじめは一度に10個くらい並べて試してみたが、精度が出ないのと逆に時間がかかることがわかったので1個ずつ行うことにした。
80個のパーツを曲げたところで、今度は残りのパーツを逆方向に曲げることにする。2個終わったところでアイザックが異変に気づいた。
「これって曲げ方向変えなくていいんじゃないの?」
アイザックがパーツを手に取り、組み合わせてみる。本当だ、パーツは160個とも全部同じ方向で大丈夫だ。じゃあこの2つを逆方向に曲げ直そう、と今曲げ終わったパーツを逆方向に90度曲げたところ、カキーン、という金属音がした。取り出してみるとアルミ板は割れている。やってしまった、とみんなで顔を見合わせる。アルミニウムは鉄に比べて降伏が早いので、この2個のパーツの修正は無理ということになった。パーツはきっかり160個しか切り出していないので最終的に2個少なくなるが、仕様にはほとんど影響はないだろう。
ボール盤で穴あけ
また、休むことなくスロットの部分をやする作業だ。やすっているとスティーブンが、違う違う、やすりはこうかけるんだよ、と見本を見せてくれる。やすりは両手で持って、水平に動かすのだ。基本的なことだが、誰に教わったこともないので非常に勉強になる。
やすりがけの指南を受ける
アルミニウム板の穴あけが終わったので、木製のプレートへの穴あけに移ろうとすると、ボール盤のアームが短くてドリルが穴の位置に届かない。現在使っていない工作機械が置いてある倉庫に案内してもらい、より大きなボール盤を使わせてもらった。
大きなボール盤で木材の加工
みんなで休憩していると、支持台に使うための木材をスティーブン、ダグラス、ダニエルが担いで工房に持ってきた。それを見た機械科の先生は、「おいおい、今度は木工かぁ〜」と目を丸くしている。スティーブンが”なぜファブラボなのに”機械加工をやったり色々なことをやっているのか先生に説明しているのを見て、先生方の間でもファブラボはレーザーカッターや電子回路を駆使したものづくりの場という印象があることが垣間見れた。このプロジェクトはその限られた範疇だけに留まるのではなく、エンジニアリングのあらゆる部門を横断し、統合することを目指すのである。
さて、アルミニウムの加工を終えたところで、シャフトの切断とタッピングの加工に移る。シャフトを決められた長さで切断し、さらに旋盤とタップを使ってネジ穴を切るのだ。
スチールシャフトを切断する
水を加えながら切っていくと、刃が半分くらい入ったかな?というところで先生がいきなり機械を止めた。シャフトを取り出して何やら切り口を見ている。
先生は顔を上げると、この材料は一体なんだ?とアブーに尋ねた。鉄ですと答えると、これは炭素鋼じゃあないかと言う。どうやらこのシャフトはこの機械では切れなさそうだ。手で切れるか試してみようということになり、バイスで固定して金ノコで切ろうとするも全く歯が立たない。
「ダメだ、これは高炭素鋼だ。これは切れないから別のシャフトを持って来なさい。」
使用することを想定していたシャフトが使えなくなるのは予想外の事態だ。低炭素鋼であれば切れそうなので、同じ径のシャフトを町で探そうということになった。
さて、加工の作業は一段落したのでラボに戻ることにする。
加工した部品その1
加工した部品その2
一仕事終えてラボに戻る
宿舎に戻ると、隣に住んでいるアイザック先生に出会った。街灯がつかなくなったのでこれから修理するところだそうだ。そういえば、今朝部屋の電気がつかなくなったことも関係あるかもしれないと思い、部屋の電気の調子が悪いことを伝えると、見てくれることになる。
ドライバーでスイッチのカバーを外し、導線にドライバー当てて電圧が来ていることを確認する。ガーナにはLEDの点灯で電圧がチェックできるドライバーがあって便利である。そしてスイッチに問題があるようだね、と壁からスイッチを外して分解を始めると、壁からものすごい数のアリが出てきた。まさかこいつらが電流をブロックしてたのだろうか?その後スイッチを開けて床に叩きつけると砂埃がたくさん出てきたが、これが原因だねと言って息を吹きかけて砂埃を飛ばし、元通りに直してくれた。修理は無事成功だ。
また何かあったら声かけてね、とアイザック先生。さすがガーナ人、身近な問題は自分で解決しているようで頼りになる。
あと、良かったらどうぞとバンクーを昼ごはんに頂いた。
久々のバンクー
フフはあまり風味がしないので、個人的にはバンクーの方が異質さがあって風情を感じる。ただ、この酸味にはまだ慣れてないなあ。
昼ごはんを食べたあと学校の中を歩いていると、おーい、こっち来いよと声をかけられた。行ってみると、生徒たちがココナッツを割って食べている。
ココナッツを食べている生徒たち
そういえば野生のココナッツを食べるのは初めてだ。ぜひひとつ、ということで割ってもらう。
ココナッツの中。ジュースがたっぷり入っている
ココナッツの中身ってこうなってるのか。ジュースがたっぷり入っている。このジュースを飲むだけなのかな、と思って生徒たちを見ていると、ナタで外側の殻を割って白い果肉の部分を食べている。自分も割ってもらって食べてみると、濃厚な味だ。これがココナッツミルクの原料なのかと納得。
ところでガーナではココナッツは国を象徴する食べ物なのだろうか。料理にもよく使われているし、ココナッツがどうのこうのって書かれた選挙のTシャツっぽい服を着てる人を町で見かけたのを思い出した。
アイザック先生に食器を返しに行くと、飛行機が飛んでいくのが目に入った。タコラディには空港がある。今回の滞在ではほとんで旅行する機会はないが、タマレやクマシまで飛んでいってみたいなあと思いを馳せた。
飛行機が飛んでいく
さて、ラボに戻ると作業の続きだ。シャフトは明日買いに行く事にし、土台の部分を作る。
木工の作業
作業をしていると、「やあ、エンジニア〜たち〜」とご機嫌なエマニュエル先生が入ってきた。こっちは順調ですよ、と告げる。
部材を切り終わると、今日は6時半に停電するからここまでにしよう、と言われる。
あれ、停電の時間って決まってるの?と思い尋ねると、要は計画停電らしい。こっちに来てから計画停電は初めてだ。それとも自分が知らなかっただけなのだろうか。
片付けの作業をしていると、6時38分に電気が切れた。日本の感覚では8分遅れだが、おお、ぴったりだ、と思ってしまった。これについては特にガーナが時間にルーズということではなく、遅れて当たり前だと自分が思い込んでいるだけかもしれない。
確かにガーナに来てから時間の遅れを気にしたことはないなあ。同じ西アフリカでもマリでは時間を守らないのが当たり前だったが、あの体験が自分の西アフリカのイメージを形作っているのかもしれない。