今回のまとめ
3/5 (Thu)
◯その1
・タコラディでの最終日 ユーザーテストにあてる
・朝、副校長であり、元FabLabディレクターのエマニュエル先生に挨拶しに行ったときに、そういえば最近PhDとりました これからはDr. Shoheiですというと、飛び跳ねて喜んでくれてこっちも嬉しくなった これからのアフリカでの戦いに良い影響を及ぼすことを期待する
・まずTTIの目の前にあるGod is Love Chop barに行く
・ダグラスのアドバイスで、最初から機械を持っていくのではなく、まずマネージャーと話をつけてから改めてマシンを持っていくことに
・マネージャーを呼んでもらう コミュニケーション能力の高いStephen(というもののガーナ人は全般的にコミュニケーションが極めて上手)がコーディネートしてくれて助かった
・マネージャーはひとしきり話を聞いた後、さらに上のマネージャー(おそらく一番偉い人)を呼びに行った
・機械の説明をすると、なかなか興味深く聞いていたようだった
・衝撃の事実が判明するのだが、数年前にTTIのOBの学生がフフパウンダーを開発して、このレストランに納入したとのこと!
・現場を見せてやる、といって裏口からレストランの内部にいれてもらう 良い展開
・マネージャーいわく、昔TTIの学生が作った機械は、買って使ったもののすぐに動かなくなり、現在は放置されているとのことだった 見ると、自分の開発したパウンド式ではなく、ミリング式のものだったが、両者を折衷したような、初めて見るデザインだった なかなかクリエイティブな代物で、TTIの学生やるじゃんと思った
・しかしこの一件があってから、TTIで作られたフフ調理器には少しdisappointedな様子だった TTIの学生は頑張ったのに、少し勿体無い気はする
・説明を受けた後、別室に案内されると、さらに衝撃の事実が明らかになった なんと、フフ調理器を所有していた!しかも2台!両方ともミリングタイプで、デザインが微妙に異なっていた 一台は新たに購入したものらしい 価格は2,700GHC。
じゃあEffia Kumaで見た、God is Loveにフフを納入している機械は何だったんだ?と疑問が生じた Stephenに尋ねると、自分も混乱していると言っていた Stephenはもしかすると、Effia Kumaのおじさんの勘違い(?)もあるかもしれないと言う インタビューの信ぴょう性が疑われる事案だったが、自分が解釈するに、「ごくたまにGod is Loveからフフを買いに来ることがある」ということだと思われる
・Chop barを後にし、ラボでStephen、ダグラスと議論する
◯その2
・Chop barでの聞きこみ調査で明らかになったことは、早く大量にフフを作れることがニーズであり、パウンド式のマシンはあまり求められていない、とのことだった
・しかし、今回の機械のターゲットはそこではない 最終工程でフフを成形するときに必要なパウンドを自動化することが機械の目的であり、そこにニーズがあるかが焦点である
・攻めるべきは調理場のおばさんたちだが、今回の機械の完成度ではそこは攻められなかった 理想的なシナリオとしては、調理場のおばさんたちに「これは便利!マネージャーこれ買って」という声を挙げてもらうことで、マネージャーを納得させることである
・そのおばさんたちをうならせるためには、きめ細やかな速度制御や、安定性など、もう少し機能的に詰める必要がある
・そうこうしていると、TTIの先生方がラボに物色しに来た。意見を聞きたい、というと、デモが無いとわからない。話はそれからだ、と言われる。これまではここで終ることが多かったが、実際に動かしてみせると「おお、本当に動いてる!これはすごい!素晴らしい機械だ!」で終わった。コンテンツとして消費してくれるな(単にネタとして楽しまないでほしい)と思う反面、やはり動く機械を見せることはガーナでは大事だと認識した、
・デモを「デバ(大規模な展示会)」でやって意見を問え、という意見をもらった どうやってメディアに周知したものかと思案していたが、こういう場でお披露目をするのが定石らしい 次のデバは5/1のメーデーにあると聞いた また、年に1回の別の展示会もアクラで開かれると聞いた
・服飾科のおばさん先生が機械が動いてるのを見て「テクノロジー!」と言ったのが面白かった
・両サイドのレールにローラーをつけて滑らかに滑らせろという機能的なフィードバックが一番多かった
・ミリングタイプではない、パウンド式(Natural poundingと言っていた)は、製品としては流通していないので、みんなの目をひくらしい
・ミリングタイプにはハエがたかるという難点があるとのユーザの指摘を受けた 確かにパウンド式は人が手でこねていることもあり、ハエがたからない
・全部自動化してしまえばいいのに、という声もあったのが興味深かった
・そもそもの疑問として、ミリングですりつぶしたキャッサバを手でハンバーグみたいにこねるだけではダメなのか、という疑問があった(装置の必要性に関わるかなり根源的な疑問だが) これに対するStephenの返答もまた衝撃的なものであり、(1)手でこねるだけではフフを十分に成形することはできないこと、(2)左手は調理に使ってはいけないこと(ええええ!!)というものだった ガーナではムスリム、クリスチャン問わず左手は不浄とされており、例えば年長者への挨拶において、左手で敬礼することは失礼にあたる
・本当かよと思って映像を解析したら、こねる人は右手のみを使っていた!これは新しい発見である
・フフを一人でつきながらこねるおばさんを見たことはあるが、何か不自由な格好で突いていたことを思い出した 仮にこの左手禁止ルールが不自由をもたらす制約となっているのだとすれば、ここに勝機はあるかもしれない
◯その3
・フフマシンの話に戻ると、God is Loveのマネージャーいわく、そもそもあのマシンはVolta Regionの小さい工場で製造されたらしい
・ヴォルタリージョンは遠いし(アクラの北東)見に行けないなあと思っていると、もしかするとタコラディのGRATIS foundationで作っているかもしれない、という話が出た
・GRATIS foundationとはTTIのように工業研修を行っている団体とのこと したがって行くことを即決
・タクシーとトロトロを乗り継いでGRATISに到着した 敷地に潜入する直前に、便宜上少しマネージャーに嘘をつくから口裏を合わせてとStephenに言われる 先生なのになかなかワルな一面あるなあと信頼を新たにする 実際はそこまで嘘ではなかったが
・GRATISはTTIに引けをとらない機材を所有しており、色々な機械を製造していた
・フフパウンダー的なものも置いてあった 参考までに、ある機械は5,000GHCだった。
・フフパウンダーは以前設計したことが有り、現在も改良を続けているとのこと やはり大量生産に目が向いており、パウンド式のものは作ったことが無いと言っていた
・調査の最後として、Effia Kumaにある、武居さんと行ったレストランに再度調査に行く
・機械をEffia Kumaに輸送するのは困難なので、iPadで映像を見せてフィードバックをもらうことに
・母娘3世代に機械の映像を見てもらう 怪訝な顔して見てるなあと思っていたら、割と印象は良かった おそらく一番重要な発見としては、「フフをつくのは人間ではなければならない」と思っているわけではなく、楽になるならそれに越したことはない、と思っていることだった
・タダなら買ってもいいよ、と軽口をかましてきたが、ディスカウントなどを説明すると、興味はありそうだった
・スピードコントローラの機能はウケた 現地の人にはシーリングファンのアナロジーがわかりやすいらしい 従来のフフパウンダーは全力で原動機を回すだけなので、低速回転の機械は新鮮だったらしい
・筐体のコストを下げることは必要である どこまでの値段なら買うかという点ははっきりとしなかった(実際の価格交渉ではないので、単なる質問には意味が無さそうだった)
・バッテリは電気がなくても使える反面、イニシャルコスト(新品で300セディ、中古で60セディ程度)の問題と、充電の問題があった。ラボではUPSの出力から充電していたが、チャージコントローラも附属して売る必要がある(高くはならないが、たぶん双方向サイリスタとかの部品が必要) もう少し太陽発電が普及してくると、太陽パネル+バッテリ+フフパウンダーの抱合せで売れたりして面白くなるのだが
◯その4
・以上をまとめると、
1.fufu調理器は、実は流通している。GRATIS foundationなどのローカルの製造拠点もガーナに存在することがわかった。
2.しかしミリングタイプではないパウンド式の機械(先生がたはNatural poundingと呼んでいた)は存在せず、潜在的なマーケットは存在するとの確信を得た
3.レストランの需要は「早く大量に作れること」にある。キャッサバをすりつぶすことであり、質にはあまりこだわっていない。
4.一方でレストランのおばさんたちは、実は手作業でのフフパウンディングは重労働だとは思っており(これ重要!「汗をかく」、という表現を使っていた)、この層をターゲットとして進める路線が良さそうである。この層はレストラン・一般消費者ともに存在する。今思ったが、一般家庭に普及させてから(フフパウンダーをフフの成型に使うことが当たり前になってから)レストランのおばさんたちに導入してもらうという逆シナリオもありだと思った