学部生研修2日目

Autodesk EAGLEを用いた電子回路の設計実習

 本実習では、Autodesk EAGLE(以下EAGLE)という電子回路CADを用いて、電子回路(PCB)の設計を行った以下に、演習に用いるために用意した基板の設計を示す。

設計演習用のPCB(回路図)
設計演習用のPCB(アートワーク)

さすがにProteusでの設計経験があるようで、回路図は難なく仕上げたものの、配線には苦戦している学生が多かった。特に女性の参加者に多かったようが、配線に進む前に部品の最適な配置を延々と試行錯誤している学生がおり、慎重さが垣間見られた。

また学生から、輪郭線(メカニカルレイヤー)を円形あるいは任意形状にしたいが可能か、という質問が出た。自分は基板形状をあまり意識したことがなかったので、やり方を調べる方法があったが、単純にDimensionの第20レイヤーに任意の線画を描画すればよいことが分かった。今思い返せば、なぜ基板形状を変更したいのか、その理由を聞いておけばよかった

EAGLEによる基板設計の様子

ほぼ全ての学生が配線を終えたところで、学生にクイズをだした。皆配線には苦労したと思う。では筆者がこの配線をやろうとすると、実際どれくらいの時間がかかるか?という質問である。一番短い学生で15分と答える者もいたが、だいたいの学生は1時間くらいと答えた。では答えを発表しますと言って、オートルータ(自動配線機能)を使って配線し、正解は5秒でしたと伝えると、教室中が「やられた!」という歓声に包まれた。[

LPKF S63基板加工機を用いた電子回路基板の加工実習

本実習ではLPKF社のS63基板加工機を用いて、実際に設計した基板の銅板への切削加工を行った。筆者は日本ではMITS社の基板加工機を愛用しており、LPKF社の加工機は初めてであったが、メカトロニクス学科のテクノロジストの助けもあって、操作方法をすぐに習得することができた。LPKFに搭載されていて、MITSに無い機能として、加工ツールのZ方向の自動キャリブレーション機能がある。大変便利な機能であり、製作者に優しい製品設計であると感動した。

S63基板加工機ではCircuit Proというソフトウェアを利用して、通常の基板加工機と同様にガーバデータ(RS-274X形式)を読み込み、ツールパスを生成し、加工機へデータを送信する。今回は簡単のために片面基板を設計したが、カメラを利用した位置合わせによって容易に両面基板を製作することも可能である。

参加者が一番知りたかったのは、複数の加工情報をどのように区別して加工機に送信するのか、という点であった。EAGLEではCAM ProcessorとLPKF S63用の定義ファイルを用いて、はんだ面データ(.sol拡張子)、Excellon形式ドリルデータ(.drd拡張子)、輪郭線情報(.outline拡張子)を吐き出すことができる。これらの各々をCircuit Proで読み込むことで、自動ツール交換装置(ATC)に対応したツールパスを生成できるということを、参加者は学んだ。

基板加工機のツールパス作成の説明を行う

 実際に基板切削を行ったところ、なぜか配線層の切削が浅い仕上がりとなり、綺麗に配線層が切り離されていなかった。Circuit Proのデフォルト設定では銅箔の厚みが18μmとなっているため、35μmに変更する必要があるが、この変更も問題なく反映されていたので、別の原因と考えられる。

失敗の原因を分析していると、Mr. Omondiが基板加工機ツール番号1番のマガジンが歪んでいることに気づいた。想定を超える過大な力(オーバーロード)がかかったとみられる。Circuit Proが生成したツールパスを確認すると、ツール番号1番は0.1mmのマイクロカッターが割当てられており、これは配線層(Bottom layer)の切削に関連する部分である(どのパスなのかは、パスが細かすぎるためか、Circuit Pro上のハイライトでは識別できなかった)。実際に配線層を切削するのはツール番号2番の0.2mmユニバーサルカッターである。Mr. Omondiの記憶によれば、ツール番号2番は切削時に使われていなかったという。この状況から考えられるのは、ツール1番を置くときにオーバーロードが発生し、異常を検知した基板加工機がツール番号2番の装填を中断し、外形線の加工に進んだというものである。それをもとに考えた結果、ツールパス生成の画面上で、0.1mmマイクロカッターの切削パスを削除してしまえば、この問題は発生せず、したがって綺麗に切削できるはずであるという仮説は得たものの、時間の関係から実際に試してみることはしなかった。

14. February 2018
Categories: JKUAT/PAUSTI | Tags: , | Leave a comment

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