N-1モータの破壊についての分析

分析

  • 酸化鉄(III)の添加により燃焼率が26%程度上昇した可能性がある(KNDXを用いたNakkaの実験を参照)
  • 燃焼室の定常圧力は燃焼速度に比例するため、したがって燃焼室圧力も最大で26%程度上昇したと考えられる。openMotorのシミュレーションでは燃焼室のピーク圧力は2.81MPaと計算された。これは酸化鉄を付加しない場合の値なので、酸化鉄を付加した実際の燃焼室圧力は2.81*1.26=3.54MPa程度と推定される。
  • 3.54MPaはPVCパイプの引張強度から算出した燃焼室の許容圧力である11.25MPaよりもまだ低いため、これだけでは破断に至らない(PVCパイプの引張強度は45MPaと仮定)。
  • 上記以外の燃焼室圧力上昇の要因として、イグナイターがノズルスロート部を塞ぎ、有効ノズル径が小さくなったことが考えられる。ノズルのスロート直径を10.5mmから徐々に下げてopenMotorのシミュレーションを繰り返したところ、ノズル直径が6.5mmのときにPVCパイプが破壊に至ることがわかった。実際には燃焼促進剤の酸化鉄を付加しているので、これよりも大きな値(7mmとか8mm)で破壊に至った可能性がある。

今後について

  • 燃焼室圧力を下げるためにグレインの分量を少なくする
  • イグナイターによるノズルの閉塞を防止する
  • 学生がノズル効率を高めるために提案したワッシャーのノズルへの装着(ノズルスロートの侵食を防ぐ)は安全性に疑問が残る。これは仮にPVCが再び破裂した場合、燃焼ガスで加速されたワッシャーが弾丸のように飛散するためである。ワッシャーつきのノズルは少なくとも安全性が確認されたモータに用いることとする。
  • KNSBの利用の検討を勧める。実際NakkaもPVCモータにはKNSU/KNDXではなくKNSBを使えといっている。下図のようにKNSBはKNSU/KNDXに比べてフラットな燃焼特性をもつため、同じトータルインパルスに対して低いピーク推力を示すことになり、より安全である。

27. April 2021
Categories: Nakuja project | Leave a comment

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