ソドムとゴモラ

起床はAM5:30。久しぶりの早起きだが、胸の高鳴りもあって気持ちの良い目覚め。

今日はガーナに滞在している高野君と会う約束がある。彼はガーナにおける太陽発電に関する調査に来ており、電力会社の方の所でお世話になっているそうだ。彼にはガーナでは手に入らないパーツを秋葉原で買ってきてもらうよう頼みごとをしており、その受渡しを今朝行うことにしていた。

静かな土曜日の夜明けを過ごしていると、高野君から連絡があった。そして7時前には無事に出会い、パーツを入手することが出来た。彼にはとても感謝している。

さて、これから早速アブーとの合流地点であるンクルマ・サークルへ向かう。朝は早い時間帯に移動しないと渋滞が起こるので、急いでタクシーに乗った。まだ少し早い時間帯なので比較的空いているなと思っていると、サークル周辺はすでに大混雑だ。人の往来も激しく、合流にはわかりづらそうなのでサークルをひとつやり過ごして次のサークルで下車した。場所の名前を尋ねると、このサークルはObetsebi Lamptey circleというそうだ。タクシー運転手にはオビチュビ・ラウンドアバウトで通じる。

合流地点のラウンドアバウト

1時間くらいたったところで無事にアブーと合流することが出来た。そしていざ、ソドムとゴモラへ。

ソドムとゴモラというのは通称で、本来のこのエリアの地名はAgbogbloshieというようだ。Agbogbloshieという地域は広い区域を指すようで、今から向かう廃棄物の集積場はその一部である。サッカーをしている子供たちの横を通り過ぎると、黒煙が立上がる沼が見えてきた。

ソドムとゴモラ

辺り一面の灰を踏みしめながら奥へと向かっていく。すると廃棄物を燃やしている少年たちがいた。場所は近そうだ。

さて、機械のスクラップ、PCの筐体などはところどころに散らばっているが、HDDは見当たらないので誰かに聞いてみようとなる。アブーが近くにいた人のところへ聞きに行ってくれるも、さすがに外国人がいることもあって金を払わないと教えない、というようなことを言われている。ただでさえ不慣れな場所なのに、なかなかに難儀な交渉となりそうだが、アブーは持ち前のコミュニケーション能力で男たちと話を進めている。ハウサ語を話すのか?というような、という声が聞こえてくるあたり、故郷の言葉を話して親近感を持ってもらおうとしているのだろうか。多くの言語を話せると、こういうときに便利なんだなあなどと考えていた。

さて彼らと話した結果、HDDがある店まで案内してくれるようだ。廃棄物に囲まれて仕事をする労働者の姿は、タコラディのココンペにも似ている。

案内してくれた店に着くと、店の店主に経緯を説明する。奥の部屋に通されると、HDDが大量に散らばっている。ここなら手に入りそうだ。どのような磁石が入っているか確認するために、持ってきたドライバーでHDDを開ける。ひとつ開けて磁石を取り出すと、店主はこれが欲しいのか、と尋ねてくる。アブーは「いや、これじゃなくて探しているのはこれより大きい磁石なんだ。IDEじゃなくて、おそらく SATAのハードディスクに入っていると思う」と言ってSATAのHDDを渡してもらう。これを開けてみるも、同じく小さい磁石だ。SATAでもものによるようだ。次に渡してもらった古めのハードディスクには大きな磁石が入っていた。これを探していたんだ、と店主に告げると、で、いくらで買うんだ?と言ってくる。ここからが本番の交渉だが、定価がついていない場所での価格交渉は難しい。あまりに低い金額だと相手にされないし、最初から高い金額で妥協するとそれ以下にすることはできず、自分で自分の首を締めることになる。

このような場合、店は絶対に最初の金額を提示せず、あくまでもこちらからファーストプライスを引き出そうとする。こちらの出方を見定めるためだ。こちらも下手には動けないので、アクラでの価格はわからないと粘るが、埒があかないので1個50ペソでどうだと伝える。すると1個10セディだと言ってきた。考えている20倍の金額である。これは難しい状況だ。

しばらく粘ったが、10セディが最終価格だと言って譲らない。困ったな、と思いながらもアブーと店を後にする。そしてこのように提案した。「店側はオブロニ(外国人)がいるので価格を不当に上げている可能性がある。一旦この場所を離れて、アブーに別の店を沙汰して一人で交渉してもらうのはどうだろう」するとアブーもそれでやってみようと賛成する。

そしてアブーと別れ、自分は離れた場所で待機することにした。しかしここはすごい煙だ。少しだけ滞在しただけなのに、すでに喉にダメージが来ている。さらに沼に捨てられたゴミが原因であると思われる、おびただしい数のハエが飛んでいる。健康および衛生的に好ましくないことは明らかだ。

1時間ほど経ったところだろうか、アブーから今どこにいる?と着信がある。どうやら終わったようなので先ほど別れた場所で落合うと、もう疲れたよ、との第一声だ。どうだった?というと、結果的に1個80ペソで磁石を買うことに成功したようだ。これは朗報だ。

詳しい話を聞いてみると、かなり交渉は大変だったようで、まず最初の店では一個5セディと言われたとのこと。つまりこの時点で先ほどの10セディが不当なふっかけだったことが明らかになる。2軒目を尋ねると、ここも5セディだという。続いて訪れた3軒目で1個3セディだと言われ、ここならいけるのでは?と思ったという。アブーは言う。「今回のプロジェクトのことを全て説明した。」そして「HDDの本体は要らない、磁石だけでいいんだ。磁石が取り除かれたHDDも依然としてスクラップで売れるんだから、一個50ペソで売ってくれ」という風に交渉を開始したところ、最終価格は1セディ、これが限界だと言われる。ここがアブーのすごいところだが、それでもダメだとそれを跳ね除ける。そして「磁石を店側で取り除いてくれるなら1個60ペソでもいい」とさらに交渉を続け、最終的に80セディで交渉成立することができたとのこと。

素晴らしい!それで、数は手に入りそうだった?と聞いてみると、その店のストックは少なかったので近くの店から融通して集めてくれるとのこと。数の問題もクリアし、さらに分解する手間も省けたので大成功といっていい。まさにアブーさまさまである。

店が磁石を集め終わるまで時間があるので、一旦アブーと別れることに。アブーはお兄さんの家があるマディナ、自分はガーナ大学のあるレゴンへと向かった。

ガーナ大学

ガーナ大学へ来たのは始めてだ。とても広い。

さて、向かうはファンティ語の教材を買うことのできる書店である。

 ガーナ大学の書店

書店の扉の前に近づくと、中から人が出てきた。扉の前に立つと、中にいたおじさんがCLOSEDという掛け看板をコンコンと叩いている。横に書いてある営業時間を見ると、土曜日は12:30までとある。しまった、時計を見ると12:30は過ぎている。

もうここに来ることもなさそうなので、困ったなあとしばらく扉の前で立っていると、おじさんが扉を開けて出てきて何が欲しいんだ?と尋ねてくる。辞書が欲しいんです、と言うと入りなさいといって開けてくれる。優しいおじさんで助かった。

辞書は見つかったが、表紙にはアカン語の辞書と書いてあるだけだ。これがアカン語にも方言があるのでファンティに対応しているかはどうかわからない。ファンティ語の教科書はありませんか?と聞くと書棚を教えてくれた。初級教科書1冊、文法書1冊、会話集3冊の計5冊を購入。アクラの詳細地図も買った。しめて54セディ。

さて、オビチュビサークルでアブーと合流し、再びAgbogbloshieへ。道すがらアブーが、「さっき店に電話したところだと、彼らは80個の磁石を全部開けていないようだ、最悪の場合、HDDを丸ごと持ち帰って自分たちで分解しなければならない」という。80個のHDDは少し重いが、磁石が手に入るのならば全く問題ない。それでも大丈夫だよ、と伝える。

マーケットの入り口に到着するとアブーに料金を手渡し、自分はここで待っているので頼んだよ、と送り出す。受け取りだけと思っていたが、時間がかかるようだ。 15分くらい経ったところだろうか、アブーから電話がある。

「ショウヘイ、問題が発生した」

OK、何があった?と確認すると、彼らはハードディスクを6つしか開けていなかったという。そしてそれ以上磁石が欲しければHDDごと買っていけというのだ。その価格、1個3セディ。これを80個も買うとかなりの金額になる。なんで店側は急に契約を破棄したんだと尋ねると、1つ80ペソで売るには手間がかかり過ぎ、磁石も含めてスクラップで売ってしまったほうが早いと判断したとのこと。確かにハードディスクには10個弱ほどネジ穴があり、一個開けるのも時間のかかる作業だ。アブーはじゃあ自分で80個開けるから1個80ペソで売ってくれと交渉してくれたそうだが、ダメだと言われたとのこと。交渉成立後に一方的に交渉を破棄してくるところがガーナのインフォーマルセクターの侮れないところだ。

この状況におけるアブーの提案はこうだ。金額は高いが一個3セディでHDDを購入し、自分たちで分解して磁石を取り出し、その後タコラディのマーケットでスクラップで売るというものだ。スクラップの買取値はもちろん低いが、これである程度は購入資金を回収できる。1個3セディは磁石を買うにはありえない金額なので躊躇したが、この機会を逸するとプロジェクトが水の泡になるかもしれない背水の陣、それで購入しても良いというゴーサインを出した。

そうして電話を切ると、しばらく時間がたったところでアブーが戻ってきた。様子を見ると、HDDは手にしていない。結局どうなったのか尋ねると、磁石は6個だけ確保して、HDDの購入は見送ったとの答えが帰ってきた。アブーがスティーブンに電話したところ、スティーブンが作戦中止を言い渡したとのことだ。以前スティーブン、アブー、ダグラス、自分の4人でタコラディのマーケットをあたったとき、 一個1セディでジャンクHDDの販売交渉に応じる店があったからだ。スティーブンからの提案は、アクラでの1個3セディはあまりにも高すぎるので、もう一度タコラディのマーケットでHDDを購入し、磁石を回収したあと再びスクラップとしてココンペで売る、というものだ。前回の交渉でスティーブンが購入しなかったのは学校側からのファンディングが下りていないという問題があったためだが、これについては学校側からのファンディングはもうあてにせず、自分が購入許可を出せば再び交渉を開始できる。また、十分な数のHDDが用意できるかという問題については、彼らの目算ではなんとかなるとの見通しとのことだ。

せっかくアクラまで来たものの、このような結果になってしまった。まあ次につながる結果ではあるので、あとはタコラディで奮闘するのみだ。

アブーはいつものことながら、今日は本当に頑張ってくれた。タコラディ行きのバスが出るカネシに着くと、今日の働きには本当に感謝している、とガーナ流の握手をしてアブーと別れた。アブーは今日もマディナのお兄さんの家に泊り、タコラディには明日帰ってくるそうだ。

さて、今日は一仕事終えたとカネシでバス待ちの行列に並ぶも、待てど暮らせどバスが来ない。バス待ちの列は長くなる一方だ。4:30から列に並んでいたが、バスが入ってきたのは日が暮れた6:30だった。

バス待ちをするも辺りは真っ暗

バスが来ると客と会社側で騒ぎが始まった。というのも、明らかにバス待ちの列を全部受け入れるキャパはバスにはない。先頭の人からチケットを購入してバスに乗り込むのだが、先頭に割り込む人が現れ、待っていた客同士で大声で喧嘩し始めた。絶対こうなるとは思っていたが、案の定である。自分は先頭から数えて4番目に並んでいたので、目の前で押し合いへし合いを始めたのでかなわない。おいおい、怪我するなよと思っていると一番体と声のでかいバス会社のスタッフが騒いでいる人を外に押し出し、大声で怒鳴りつけた。まだ騒ぎは落ち着いていないが、この隙に早く切符を買って乗りなさいとスタッフから切符を受け取り、バスへ乗り込む。すると驚くことに、バスの座席にはもう半分以上の人が座っている。自分は先頭から4番目なのになんでこんなに人が乗っているんだ?と首をかしげるも、奥の席へ無事座ることが出来た。

外の様子を見ると、優に100人以上はバス待ちの列に並んでいる。そんな列を尻目に、バスはしばらくして発車した。アクラからタコラディ行きのバスは乗る人がいる限り24時間出ているということなので、乗れないということはないそうなのだが。

タコラディまでは5時間弱の旅、ずっと寝ていたので気づくとマーケットサークルだ。まさに戻ってきたという安心感がある。

夜のマーケットサークル。あらためてゴミがすごい。

初めてタコラディを訪れた前回の訪問時もこのゴミの多さに驚いたが、何とかならないものだろうか。ここはもう自分の庭、といった体でタクシーへ乗り込むとTTIへ向かった。

 

 

 

17. September 2012
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