Monthly Archives for October 2012
Me ba. -また会いましょう-
今日は帰国の日。長いようで短かった今回の滞在もこれで終わりである。 午前10時20分タコラディ発アクラ行きの飛行機に乗るので、今朝は早めにエマニュエル先生の家に向かう。 通い慣れたこの道が懐かしく感じられる。 さて、エマニュエル先生と奥さんのジュリーに御礼を告げると、ラボへ向かった。 昨日の奮闘を物語るように、ラボの中は材料や工具が散乱した状態であった。 最後にラボのメンバーと先生で記念写真をとった。 彼らには本当にお世話になり、感謝している。 外を見ると雨が降っている。 時計を見るとそろそろ9時前、出発の時間である。タクシーを拾ってタコラディ空港まで向かう。TTIの門の前までアブーがついてきてくれた。タクシーに乗り込み、「また会おう、Me ba!(ファンティ語でI’ll be backの意味)」と伝えるとアブーが笑いながら手を振ってくれた。 雨の中のタクシーでは郷愁を誘うようなバラードが流れていた。短い間ではあったが、充実した日々を過ごしたタコラディを離れるのは寂しくもあったが、また帰って来るだろう。 タコラディ空港は本当に小さな空港だった。アクラまではほんの3、40分程度である。 Amtrakの飛行機 コトカ国際空港に到着すると、17時まで何もやることがないのでスーツケースに座り込んでいた。すると、スカーフをかぶった女の子が話しかけてきた。iPhoneのSIMの交換方法がわからないから教えて欲しいという。自分もiPhoneは開けたことがないが、ネジがついているのでこれをとれをいいのでは、とタコラディで購入したスクリューセットで試すが、うまくいかない。結局空港のインターネットカフェでWifiを使わせてもらい、検索すると横の穴に細い棒を差し込んで開けることがわかった。ちなみに彼女はアクラの学校に通っているギニア人で、お姉さんの見送りに来ているとのことだった。ギニアも一度行ってみたい国の一つである。 まだフライトには時間があるのでアクラモールを散策し、かねてから買って帰ろうと思っていたSamsung Galaxy Pocketを225セディで購入した。ちなみにこの携帯を買った店でAR.Drone 2.0が売られていたのが印象的であった。 さて、空港に戻って出国手続きを済ませる。至るところで賄賂の要求があったのが残念だった。仕方ないことなのかもしれないが。 成田へはドバイ経由で帰国する。
It’s just a beginning.
さあ、今日は泣いても笑っても最後の一日である。 8時30分にはラボに着いたが、ダグラスもアイザックもいない。ラボの外にスティーブンとアブーがいたので尋ねると、もう機械科の工房に移動して作業をしているそうだ。さすが今日は最後ということをみんなが理解して協力してくれている。これはうれしい。急いで自分も工房に向かう。 最後の旋盤加工 時間のかかる加工を2本のシャフトに対して行わないといけないので、手早く作業を進めることが肝心である。アイザックの様子を見ると、既に半分くらい加工が終わっている。これが火事場の馬鹿力というものなのか。 さて、こちらはダグラス、アブーとボール盤のある倉庫に移動して鉄板に穴を空ける。 鉄板への穴あけ 鉄板に穴が空いたので、次はこれにベアリングを溶接する作業である。鉄板とベアリングを持って溶接科に向かう。溶接科の先生は背が高くて大人しそうな方である。溶接科の先生と話していて興味深かったのが、最初アブーの加工法に難色を示したことだった。溶接の際に発生する多量の熱がベアリングを痛めてしまうことへの懸念があるためである。アブーがこれはプロトタイプであるため一時的な処置であること(temporal solution)、そして筆者が明日タコラディを去るために今日中に仕上げなければならず、限られた材料を考えると残された道はこれしかないことを説明して、ようやく説得することが出来た。また、この製品は何かの既成品のコピーなのか、それとも完全なオリジナルな設計なのかとも聞いてきて、完全なオリジナルの設計ですと答えると、ふーんという顔をしていた。 電気溶接を間近で見るのは初めてである。アースケーブルを底板に挟み、ホルダーに挟んだ溶接棒を母材であるプーリーとシャフトに近づけてアーク放電させる。 溶接を行う 溶接が終わった後の部品は非常に熱くなっている。 プーリーを溶接 ベアリングを溶接 溶接の動画 溶接が終わったので機械科の工房に戻ると、アイザックも作業を終えていた。皆でラボに戻って組立の作業である。 ラボに戻ると電子科のマイルス先生と息子さんがやってきた。昨日作ったアラームをもう一度見せて欲しいとのことなので、デモを見せて仕組みを簡単に説明した。Arduinoを使えば簡単にできますよというと、ArduinoをTTIでの教育に導入したいとおっしゃってくれた。Arduinoでどのようなことができるか、さらに開発環境が知りたいとのことなので、LEDの点滅やサーボモーター、AD変換の使い方をArduinoを使って説明した。Arduinoの基板がないと使えないのかと尋ねられたので、ArduinoでプログラムしたAVRのチップは水晶発振子とキャパシタがあれば単体で動作させることができることを説明した。すると日本からArduinoを購入して送ってくれ、価格はいくらだと質問される。だいたい30$くらいでしょうか、と答えると(実際はもう少し安かった)、少し高いなあという顔をしている。ここでFabduinoの出番だと思い、Arduinoは自作できるんです、回路図もネットでダウンロードできますよと伝えると、それはいいとなった。ただしArduinoを自作する場合はAVRにArduinoのブートローダを書き込む必要があるので、その書き込み方を説明した。ここでマイルス先生は席を外さないといけなくなったので、息子のジョンに更なる説明を行う。ブートローダを書き込んだAVRがArduinoでプログラム可能になることを説明するためにLEDの点滅を試し、delay関数で点滅の間隔が制御できることを説明すると、LEDはもういいから別のものを見せてくれと言われる。個人的にこの意識は素晴らしいと思った。というのも、電子工作のチュートリアルではLEDを点滅させて終わり、となってその先に進むことができないことがあるからだ。したがって可変抵抗から電圧値をアナログ入力してAD変換し、値を角度に変換してサーボモーターを制御する、というプログラムを書いてサーボモーターを動かしてみる。AD変換とmap関数の動作が初心者には少し複雑だったためかジョンはしばらく考え込んでいたので、説明の際に書いたノートの切れ端を復習用にと渡しておいた。しばらくするとマイルス先生が戻ってきたので、ジョンに基礎的なことを教えましたが、これからもメールやSkypeなどでフォローアップしますと約束をする。ガーナでプログラミングは教えられていないそうなので、Arduinoがその一助になれば嬉しい限りである。ジョンはゆくゆくラジコン飛行機が作りたいそうだが、これもArduinoとAVRプログラミングを使って作ることができる。マイルス先生はマイコンで制作したものをエキシビジョンで展示したいとも言っていた。さて、話を終えると2人は帰っていったので、分離器の作業に合流する。 ベアリングを溶接した鉄板およびプーリーを取り付けたシャフトが発電機に取り付けられた。 制作したシャフトを発電機に取り付けた様子 あと残されているのはローターに磁石を埋め込んでいく作業である。1ユニットの磁石数を多めに取ると磁石の数が足りなくなるので、厚い磁石は1枚のみ、一番薄い磁石は2枚で一組にし、スロットと磁石との間に紙を挟んで位置を固定しながら磁石を埋め込んでいく。 磁石にはローターの回転による遠心力が働くので、押さえつけるためにプラスチックのシートを外周に巻いていく。プラスチックシートとローターは画鋲を打って固定していった。 磁石を埋め込んでいく みんなで作業する 磁石の埋め込み作業をする傍ら、アイザックが約束していたファブラボTシャツを作ってくれた。 ビニールカッターでFabLabのロゴを切り出し、転写用の板にマスキング部分を作成する。 インクを転写するための板を完成させたアイザック これを使ってTシャツにインクを乗せていく。 FabLabTシャツ。これで晴れてファブラボガーナの一員 サイズもぴったりで、嬉しいおみやげとなった。 時を同じくして磁石の埋め込みが終わったので、運転試験を行うことにする。プーリーベルトが少し短かったようなので、発電機の下に板を挟んで底上げして高さを調節する。それではいざ、発進である! 最初の運転 エンジンが始動したと思った瞬間停止した。エンストである。エンジンの回転数が安定するまでは負荷をかけないほうが良いことがわかったので、まずはエンジンを安定させてから、徐々にプーリーを接触させていくことにした。そして2回目の運転で事件は起こった。 2回目の運転 なんとローターに埋め込んでいた大量の磁石が飛散したのだ。シールドのために設けていたプラスチックのシートを画鋲で固定していたのだが、強度が弱すぎたためである。手で確かめた感覚だとこれでいけるのではないかと思ったが、甘かった。磁石の固定については慎重に考慮しなければならないと思っていたのだが、計算をしたわけではないので判断が難しいところではあった。 とんだ失敗であるが、飛散した磁石が天井にくっついていたり、逃げ惑う子供たちがいたりと辺りは笑いに包まれた。するとエマニュエル先生が、何か音がしたけどどうしたとやってきた。事態を説明すると、怪我がなくて良かったと真剣な顔をされている。確かに一歩間違えると重大な事故になりかねない事態である。現にラボの窓にはヒビが入っていた。 ガラスを破損 この失敗を受けて、プラスチックのシートを金属のものに交換すること、遠心方向の力がかからないように軸方向に釘を打つことなどの対応策を話し合う。金属のシートはオイル缶を切り開いて制作することにした。 オイル缶を切って利用する 切り開いた缶はヘンリーが叩いて伸ばしてくれた。 アルミ板を叩いて平らにする このシートを横にのりしろを残した大きさに切っていく。 … Continue reading
ガーナ。
まさにガーナ、という一日でした。 今朝は早起きしてプログラムを完成させる。キーパッドを入力→数字を取得、というプログラムはできているので、現在時刻を編集する機能を付加したい。キーパッドの#に当たるボタンを長押しすると編集モードに入るという機能を実装したが、これができたときは少し嬉しかった。というのも、このコードは様々なLCDを使ったアプリに応用が可能だからだ。夢が膨らむところである。 エマニュエル先生の家で朝食を食べていると、今日は一緒に夕食を食べようと誘ってくれた。思い返すと夕食を一緒に食べるのは初めてかもしれない。うれしいお誘いを快諾する。 朝食を食べた後ラボに向かうと、ダグラスとアイザックが来ている。ダグラスに圧電スピーカー持ってる?と聞いてみると、普通のスピーカーならあるよ、とダグラスが以前作ったオーディアンプを出してくれた。 ArduinoからDTMF信号を出力するコードを試すとうまくいった。とここで、ArduinoのToneライブラリというのを発見する。色々な曲が試せるようだ。これまでに書いたすべてのコードを統合すると、チャイムのプロトタイプの完成である! アラームの回路が完成した TTI alarm これはすごい、と喜んでもらったので嬉しかった。するとスティーブンがエマニュエル先生と電子工学の先生であるマイルスを呼んできた。マイルス先生にこのチャイムの回路図はあるか、と聞かれたのでまだ作ってませんが作って渡します、と約束をする。実際、分離器の方が忙しくてアラームにかける時間の余裕はほとんどないのだが。 さて、アラームは一段落したので分離器の組立作業を再開する。 工作する部品について相談する 残っている作業はドライブシャフトとベルトコンベアを駆動するシャフトの旋盤による削り出し、ローターの接合、鉄板へのベアリングの溶接、そして全部品のアセンブリである。 まずは旋盤での作業のためにシャフトを切断する。 学校の購買所で購入したΦ14のシャフトを切断 そして機械科の工房へ向かう。アイザックが旋盤の作業をすすめる傍ら、アブーと自分は鉄板へのベアリングの溶接を行うことにする。まず適当な厚みの鉄板を探し、切断機で切断する。 鉄板を切断 その後ボール盤で穴を開ける。径が大きいので、木工の際に使用していた倉庫に置いてあるボール盤を利用した。 事件が起こったのはそのときである。アイザックが旋盤作業を行なっている横でアブーと話していると、ガタッという音がして突然部屋の電気が切れた。そう、ここでまさかの停電である。この時の自分の頭の中は真っ白を通り越して悟りの境地に近づいていたかもしれない。今日全てをスピーディのこなしても間に合うかわからないのに、作業できなくなるとは。アブーはやれやれという顔をしながら、”.., Ghana.”と一言呟いただけだった。 電気が消えた工房 立派な旋盤や工作機械を備えているこの場所でも、停電には抗うことができないのである。 立派な旋盤もこうなっては使えない ラボに戻ると、焦っても仕方がないので今できることをやることにする。まずはローターを重ねあわせて接合する。中心にはスペーサーとして小さい円盤が入っている。 ローターの接合。3枚の板を貼り合わせる そしてシャフト以外の部分の組立を行う。 みんなで組み立て あとは鉄板へのベアリングの溶接が残っているが、もし溶接科でガス溶接が使えるなら今日中に加工ができるかもしれない。溶接科に向かい、担当の先生に尋ねると、ガス溶接はやっておらず、電気溶接のみとのことだ。ガス溶接を使わないのは燃料が高いことも理由であるらしい。ところで溶接科からラボに帰る道すがら、非常用発電機が置いてあるのを目にした。なんで停電の際に使わないの?と尋ねると、やはりこれも燃料が高いからというのが理由であるらしい。なんともはや。 今日はこれ以上作業をすすめることができないので、ゆっくりと過ごしていた。少年がフルーツを売りに来たので、みんなで休憩をする。 フルーツを売りに来た少年 学年を聞くと、今は小学校3年生らしい。ガーナではこれくらいの子供が水を売ったりフルーツを売ったりしている。ファブラボのみんなが彼をからかったりしているが、こういう風にお兄さんにいじられて強くなっていくのだろう。 その後辺りが暗くなると、発電機を試してみようということになった。ここでスティーブンが言った言葉にアブーが反応すると、2人が騒ぎ始めた。スティーブンの話ではこの部屋には電気のコンセントの差込口があり、そこから逆に部屋に電気を供給できるらしいが、アブーはそんなコンセントはないと言っているようだ。ダグラスもスティーブンの側について討論をし始めた。スティーブンは実物を見せるというと、アブーをICTラボに連れて行った。今回はスティーブンの勝ちのようだ。ちなみにそのコンセントとはこのようなものである。 各部屋にある電力の供給口(インレット) これもガーナならではなのだろうか。コンセントとは電気をとるものであって、電気を入れるものではないと思っていた自分にとっては画期的な仕組みであった。 さて、発電機をセットアップしていると、エマニュエル先生がやってきた。誘われていたディナーの時間になったようだ。ラボにみんなを残して自分はエマニュエル先生の家へと向かう。 家に着くと、ダラーリとダラー、そして彼らの友達が来ていた。同じ宿舎に住んでいる先生の子供だろうか。今日のメニューはRice cakeとナッツのスープとのことだ。 ガーナ風Rice cake 相変わらず停電が続いているので、ランタンを食卓においた上での食事である。スープには鶏肉と魚が入っており、とても美味しい。最後にガーナの家庭料理を食べることができて非常に満足である。デザートにはスイカをごちそうになった。 エマニュエル先生と話している中で、例の話を振ってみた。ガーナの子供たちは停電の際はどうやって勉強しているのか?という質問である。エマニュエル先生いわく、やはりランタンを使って勉強するようだ。「同じ質問をダラーリにしてみたら、夜より朝に勉強する方が好きだと言っていましたよ」、と伝えると笑ってくれたものの、すぐに奥の子供たちが遊んでいる部屋に入って行って、勉強しなさいと言っている。もしかしたらダラーリは夜に勉強しない子だ、というのを悪い意味でとられたのかもしれない。自分は「電気を使わないシンプルな解決策」という意味で面白いと思ったのだが、ダラーリに申し訳ないことをしてしまったかもしれない。 … Continue reading
カクム国立公園
今日はアブーとエマニュエル先生、そして奥さんの4人でカクム国立公園へ出かける予定である。