ガーナ。

まさにガーナ、という一日でした。

今朝は早起きしてプログラムを完成させる。キーパッドを入力→数字を取得、というプログラムはできているので、現在時刻を編集する機能を付加したい。キーパッドの#に当たるボタンを長押しすると編集モードに入るという機能を実装したが、これができたときは少し嬉しかった。というのも、このコードは様々なLCDを使ったアプリに応用が可能だからだ。夢が膨らむところである。

エマニュエル先生の家で朝食を食べていると、今日は一緒に夕食を食べようと誘ってくれた。思い返すと夕食を一緒に食べるのは初めてかもしれない。うれしいお誘いを快諾する。

朝食を食べた後ラボに向かうと、ダグラスとアイザックが来ている。ダグラスに圧電スピーカー持ってる?と聞いてみると、普通のスピーカーならあるよ、とダグラスが以前作ったオーディアンプを出してくれた。

ArduinoからDTMF信号を出力するコードを試すとうまくいった。とここで、ArduinoのToneライブラリというのを発見する。色々な曲が試せるようだ。これまでに書いたすべてのコードを統合すると、チャイムのプロトタイプの完成である!

アラームの回路が完成した


TTI alarm 

これはすごい、と喜んでもらったので嬉しかった。するとスティーブンがエマニュエル先生と電子工学の先生であるマイルスを呼んできた。マイルス先生にこのチャイムの回路図はあるか、と聞かれたのでまだ作ってませんが作って渡します、と約束をする。実際、分離器の方が忙しくてアラームにかける時間の余裕はほとんどないのだが。

さて、アラームは一段落したので分離器の組立作業を再開する。

工作する部品について相談する 

残っている作業はドライブシャフトとベルトコンベアを駆動するシャフトの旋盤による削り出し、ローターの接合、鉄板へのベアリングの溶接、そして全部品のアセンブリである。

まずは旋盤での作業のためにシャフトを切断する。

学校の購買所で購入したΦ14のシャフトを切断

そして機械科の工房へ向かう。アイザックが旋盤の作業をすすめる傍ら、アブーと自分は鉄板へのベアリングの溶接を行うことにする。まず適当な厚みの鉄板を探し、切断機で切断する。

鉄板を切断

その後ボール盤で穴を開ける。径が大きいので、木工の際に使用していた倉庫に置いてあるボール盤を利用した。

事件が起こったのはそのときである。アイザックが旋盤作業を行なっている横でアブーと話していると、ガタッという音がして突然部屋の電気が切れた。そう、ここでまさかの停電である。この時の自分の頭の中は真っ白を通り越して悟りの境地に近づいていたかもしれない。今日全てをスピーディのこなしても間に合うかわからないのに、作業できなくなるとは。アブーはやれやれという顔をしながら、”.., Ghana.”と一言呟いただけだった。

電気が消えた工房

立派な旋盤や工作機械を備えているこの場所でも、停電には抗うことができないのである。

立派な旋盤もこうなっては使えない

ラボに戻ると、焦っても仕方がないので今できることをやることにする。まずはローターを重ねあわせて接合する。中心にはスペーサーとして小さい円盤が入っている。

ローターの接合。3枚の板を貼り合わせる

そしてシャフト以外の部分の組立を行う。

みんなで組み立て

あとは鉄板へのベアリングの溶接が残っているが、もし溶接科でガス溶接が使えるなら今日中に加工ができるかもしれない。溶接科に向かい、担当の先生に尋ねると、ガス溶接はやっておらず、電気溶接のみとのことだ。ガス溶接を使わないのは燃料が高いことも理由であるらしい。ところで溶接科からラボに帰る道すがら、非常用発電機が置いてあるのを目にした。なんで停電の際に使わないの?と尋ねると、やはりこれも燃料が高いからというのが理由であるらしい。なんともはや。

今日はこれ以上作業をすすめることができないので、ゆっくりと過ごしていた。少年がフルーツを売りに来たので、みんなで休憩をする。

フルーツを売りに来た少年

学年を聞くと、今は小学校3年生らしい。ガーナではこれくらいの子供が水を売ったりフルーツを売ったりしている。ファブラボのみんなが彼をからかったりしているが、こういう風にお兄さんにいじられて強くなっていくのだろう。

その後辺りが暗くなると、発電機を試してみようということになった。ここでスティーブンが言った言葉にアブーが反応すると、2人が騒ぎ始めた。スティーブンの話ではこの部屋には電気のコンセントの差込口があり、そこから逆に部屋に電気を供給できるらしいが、アブーはそんなコンセントはないと言っているようだ。ダグラスもスティーブンの側について討論をし始めた。スティーブンは実物を見せるというと、アブーをICTラボに連れて行った。今回はスティーブンの勝ちのようだ。ちなみにそのコンセントとはこのようなものである。

各部屋にある電力の供給口(インレット)

これもガーナならではなのだろうか。コンセントとは電気をとるものであって、電気を入れるものではないと思っていた自分にとっては画期的な仕組みであった。

さて、発電機をセットアップしていると、エマニュエル先生がやってきた。誘われていたディナーの時間になったようだ。ラボにみんなを残して自分はエマニュエル先生の家へと向かう。

家に着くと、ダラーリとダラー、そして彼らの友達が来ていた。同じ宿舎に住んでいる先生の子供だろうか。今日のメニューはRice cakeとナッツのスープとのことだ。

ガーナ風Rice cake

相変わらず停電が続いているので、ランタンを食卓においた上での食事である。スープには鶏肉と魚が入っており、とても美味しい。最後にガーナの家庭料理を食べることができて非常に満足である。デザートにはスイカをごちそうになった。

エマニュエル先生と話している中で、例の話を振ってみた。ガーナの子供たちは停電の際はどうやって勉強しているのか?という質問である。エマニュエル先生いわく、やはりランタンを使って勉強するようだ。「同じ質問をダラーリにしてみたら、夜より朝に勉強する方が好きだと言っていましたよ」、と伝えると笑ってくれたものの、すぐに奥の子供たちが遊んでいる部屋に入って行って、勉強しなさいと言っている。もしかしたらダラーリは夜に勉強しない子だ、というのを悪い意味でとられたのかもしれない。自分は「電気を使わないシンプルな解決策」という意味で面白いと思ったのだが、ダラーリに申し訳ないことをしてしまったかもしれない。

子供たちが部屋から出てくると、教科書を出して勉強を始めた。面白いのはITの教科書だ。Wordの使い方や、Eメールの使い方など、極めて実践的、アプリケーションに特化した内容である。コンピュータの使い方を早いうちから教えようという教育方針が伺える。

そんなことを考えている傍、子供たちはランタンの灯りで勉強を続けるのであった。

ランタンの灯りで勉強する子供

ご飯を食べ終わるとアブーから連絡があり、自分の荷物をどうするかと尋ねてきてくれた。荷物はそのままの状態で放置してあるので、アブーに迎えに来てもらってラボに戻ることにする。御礼を言ってエマニュエル先生の家を後にし、ちょうどアブーのバイクの後ろに腰掛けた瞬間教員宿舎の灯りが点いた。やっと電気が回復したようだ。今日は比較的停電が長かったように思う。

ラボに戻るとCNCの運転動画を撮影するべく、回路をセットアップする。

回路の運転動画

その後、アブーが時間があるようだったので、XBeeの使い方を教えた。XBeeはX-CTUというソフトウェアを使ってファームウェアの書き換えを行うのだが、この使い方には非常に癖があってややこしい。ATモードとAPIモードがあって、ということを説明し、ループバックテストを行った。 その後ArduinoのXBeeライブラリを使ったテストをしようとAPIモードに切り替えて、とやっていたらはまってしまい、時間を費やしてしまった。するとアブーがもう日が変わる頃なんだけど、と伝えてくる。時計を見ると本当だ、もう午前0時だ。だいたいコンセプトはわかったよ、とのことなので、片付けをしてラボを後にした。

09. October 2012
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