Me ba. -また会いましょう-
今日は帰国の日。長いようで短かった今回の滞在もこれで終わりである。
午前10時20分タコラディ発アクラ行きの飛行機に乗るので、今朝は早めにエマニュエル先生の家に向かう。
通い慣れたこの道が懐かしく感じられる。
さて、エマニュエル先生と奥さんのジュリーに御礼を告げると、ラボへ向かった。
昨日の奮闘を物語るように、ラボの中は材料や工具が散乱した状態であった。
最後にラボのメンバーと先生で記念写真をとった。
彼らには本当にお世話になり、感謝している。
外を見ると雨が降っている。
時計を見るとそろそろ9時前、出発の時間である。タクシーを拾ってタコラディ空港まで向かう。TTIの門の前までアブーがついてきてくれた。タクシーに乗り込み、「また会おう、Me ba!(ファンティ語でI’ll be backの意味)」と伝えるとアブーが笑いながら手を振ってくれた。
雨の中のタクシーでは郷愁を誘うようなバラードが流れていた。短い間ではあったが、充実した日々を過ごしたタコラディを離れるのは寂しくもあったが、また帰って来るだろう。
タコラディ空港は本当に小さな空港だった。アクラまではほんの3、40分程度である。
Amtrakの飛行機
コトカ国際空港に到着すると、17時まで何もやることがないのでスーツケースに座り込んでいた。すると、スカーフをかぶった女の子が話しかけてきた。iPhoneのSIMの交換方法がわからないから教えて欲しいという。自分もiPhoneは開けたことがないが、ネジがついているのでこれをとれをいいのでは、とタコラディで購入したスクリューセットで試すが、うまくいかない。結局空港のインターネットカフェでWifiを使わせてもらい、検索すると横の穴に細い棒を差し込んで開けることがわかった。ちなみに彼女はアクラの学校に通っているギニア人で、お姉さんの見送りに来ているとのことだった。ギニアも一度行ってみたい国の一つである。
まだフライトには時間があるのでアクラモールを散策し、かねてから買って帰ろうと思っていたSamsung Galaxy Pocketを225セディで購入した。ちなみにこの携帯を買った店でAR.Drone 2.0が売られていたのが印象的であった。
さて、空港に戻って出国手続きを済ませる。至るところで賄賂の要求があったのが残念だった。仕方ないことなのかもしれないが。
成田へはドバイ経由で帰国する。
It’s just a beginning.
さあ、今日は泣いても笑っても最後の一日である。
8時30分にはラボに着いたが、ダグラスもアイザックもいない。ラボの外にスティーブンとアブーがいたので尋ねると、もう機械科の工房に移動して作業をしているそうだ。さすが今日は最後ということをみんなが理解して協力してくれている。これはうれしい。急いで自分も工房に向かう。
時間のかかる加工を2本のシャフトに対して行わないといけないので、手早く作業を進めることが肝心である。アイザックの様子を見ると、既に半分くらい加工が終わっている。これが火事場の馬鹿力というものなのか。
さて、こちらはダグラス、アブーとボール盤のある倉庫に移動して鉄板に穴を空ける。
鉄板に穴が空いたので、次はこれにベアリングを溶接する作業である。鉄板とベアリングを持って溶接科に向かう。溶接科の先生は背が高くて大人しそうな方である。溶接科の先生と話していて興味深かったのが、最初アブーの加工法に難色を示したことだった。溶接の際に発生する多量の熱がベアリングを痛めてしまうことへの懸念があるためである。アブーがこれはプロトタイプであるため一時的な処置であること(temporal solution)、そして筆者が明日タコラディを去るために今日中に仕上げなければならず、限られた材料を考えると残された道はこれしかないことを説明して、ようやく説得することが出来た。また、この製品は何かの既成品のコピーなのか、それとも完全なオリジナルな設計なのかとも聞いてきて、完全なオリジナルの設計ですと答えると、ふーんという顔をしていた。
電気溶接を間近で見るのは初めてである。アースケーブルを底板に挟み、ホルダーに挟んだ溶接棒を母材であるプーリーとシャフトに近づけてアーク放電させる。
溶接の動画
溶接が終わったので機械科の工房に戻ると、アイザックも作業を終えていた。皆でラボに戻って組立の作業である。
ラボに戻ると電子科のマイルス先生と息子さんがやってきた。昨日作ったアラームをもう一度見せて欲しいとのことなので、デモを見せて仕組みを簡単に説明した。Arduinoを使えば簡単にできますよというと、ArduinoをTTIでの教育に導入したいとおっしゃってくれた。Arduinoでどのようなことができるか、さらに開発環境が知りたいとのことなので、LEDの点滅やサーボモーター、AD変換の使い方をArduinoを使って説明した。Arduinoの基板がないと使えないのかと尋ねられたので、ArduinoでプログラムしたAVRのチップは水晶発振子とキャパシタがあれば単体で動作させることができることを説明した。すると日本からArduinoを購入して送ってくれ、価格はいくらだと質問される。だいたい30$くらいでしょうか、と答えると(実際はもう少し安かった)、少し高いなあという顔をしている。ここでFabduinoの出番だと思い、Arduinoは自作できるんです、回路図もネットでダウンロードできますよと伝えると、それはいいとなった。ただしArduinoを自作する場合はAVRにArduinoのブートローダを書き込む必要があるので、その書き込み方を説明した。ここでマイルス先生は席を外さないといけなくなったので、息子のジョンに更なる説明を行う。ブートローダを書き込んだAVRがArduinoでプログラム可能になることを説明するためにLEDの点滅を試し、delay関数で点滅の間隔が制御できることを説明すると、LEDはもういいから別のものを見せてくれと言われる。個人的にこの意識は素晴らしいと思った。というのも、電子工作のチュートリアルではLEDを点滅させて終わり、となってその先に進むことができないことがあるからだ。したがって可変抵抗から電圧値をアナログ入力してAD変換し、値を角度に変換してサーボモーターを制御する、というプログラムを書いてサーボモーターを動かしてみる。AD変換とmap関数の動作が初心者には少し複雑だったためかジョンはしばらく考え込んでいたので、説明の際に書いたノートの切れ端を復習用にと渡しておいた。しばらくするとマイルス先生が戻ってきたので、ジョンに基礎的なことを教えましたが、これからもメールやSkypeなどでフォローアップしますと約束をする。ガーナでプログラミングは教えられていないそうなので、Arduinoがその一助になれば嬉しい限りである。ジョンはゆくゆくラジコン飛行機が作りたいそうだが、これもArduinoとAVRプログラミングを使って作ることができる。マイルス先生はマイコンで制作したものをエキシビジョンで展示したいとも言っていた。さて、話を終えると2人は帰っていったので、分離器の作業に合流する。
ベアリングを溶接した鉄板およびプーリーを取り付けたシャフトが発電機に取り付けられた。
あと残されているのはローターに磁石を埋め込んでいく作業である。1ユニットの磁石数を多めに取ると磁石の数が足りなくなるので、厚い磁石は1枚のみ、一番薄い磁石は2枚で一組にし、スロットと磁石との間に紙を挟んで位置を固定しながら磁石を埋め込んでいく。
磁石にはローターの回転による遠心力が働くので、押さえつけるためにプラスチックのシートを外周に巻いていく。プラスチックシートとローターは画鋲を打って固定していった。
磁石の埋め込み作業をする傍ら、アイザックが約束していたファブラボTシャツを作ってくれた。
ビニールカッターでFabLabのロゴを切り出し、転写用の板にマスキング部分を作成する。
これを使ってTシャツにインクを乗せていく。
サイズもぴったりで、嬉しいおみやげとなった。
時を同じくして磁石の埋め込みが終わったので、運転試験を行うことにする。プーリーベルトが少し短かったようなので、発電機の下に板を挟んで底上げして高さを調節する。それではいざ、発進である!
最初の運転
エンジンが始動したと思った瞬間停止した。エンストである。エンジンの回転数が安定するまでは負荷をかけないほうが良いことがわかったので、まずはエンジンを安定させてから、徐々にプーリーを接触させていくことにした。そして2回目の運転で事件は起こった。
2回目の運転
なんとローターに埋め込んでいた大量の磁石が飛散したのだ。シールドのために設けていたプラスチックのシートを画鋲で固定していたのだが、強度が弱すぎたためである。手で確かめた感覚だとこれでいけるのではないかと思ったが、甘かった。磁石の固定については慎重に考慮しなければならないと思っていたのだが、計算をしたわけではないので判断が難しいところではあった。
とんだ失敗であるが、飛散した磁石が天井にくっついていたり、逃げ惑う子供たちがいたりと辺りは笑いに包まれた。するとエマニュエル先生が、何か音がしたけどどうしたとやってきた。事態を説明すると、怪我がなくて良かったと真剣な顔をされている。確かに一歩間違えると重大な事故になりかねない事態である。現にラボの窓にはヒビが入っていた。
ガラスを破損
この失敗を受けて、プラスチックのシートを金属のものに交換すること、遠心方向の力がかからないように軸方向に釘を打つことなどの対応策を話し合う。金属のシートはオイル缶を切り開いて制作することにした。
切り開いた缶はヘンリーが叩いて伸ばしてくれた。
アルミ板を叩いて平らにする
このシートを横にのりしろを残した大きさに切っていく。
アルミシートを切っていく
のりしろを曲げてローターにフィットするように取り付ける。
シールドの取り付け
ここで時計を見ると時間は18時を回っていた。普段ならとっくにラボのメンバーは帰っている時間だが、今日は最後の日とあって皆付き合ってくれた。
シールドを取り付け終わったので分離テストを再開する。
金属の分離テスト
一円玉、釘をベルトコンベアの上に置いて最高回転数の時にそれらが動かされるか試してみる。途中、一円玉が跳ね上がって飛んでいったのを見て歓声が上がったが、それはベルトコンベアから脱落した1円玉がローターに弾き飛ばされたことに気づく。ローターとベルトの間のクリアランスを極限まで小さくしてみるなど、その後何度か条件を変えてテストを試みたが金属はついに動かされなかった。
最後のテストが終わり、部屋にはアブー、ヘンリー、そしてもう一人の生徒が残るのみであった。自分もアブーも放心状態という感じで、しばらく渦電流分離器の隣に何も言わずに腰掛けていた。するとエマニュエル先生がラボにやってきた。どうだった?と尋ねるので、クリアランス、磁石の磁力が弱いこと、磁場の方向が直線的でないことなど複合的な要因で金属を分離することができなかったことを告げる。
またコンベアベルトを動かしてみるが、こちらも製作精度の甘さが積もって余分にトルクがかかっており、滑らかには動いてくれない。
ベルトコンベアの駆動
とりあえずは動いたものの、これからこのプロトタイプを改変していけるという所に立てたという段階である。当初想定していたのは、このプロトタイプが如何に変わっていくのかというところだったが、とてもそんなところまで到達することはできなかった。磁石などの材料が手に入らないこと、CNCの突然の故障、そして停電など、数多くの事柄が積み重なり、予想以上に時間がかかってしまったが、これは途上国におけるものづくりの現状を知るための貴重な体験となった、
自分はエマニュエル先生にこう告げた。プロトタイプが機能するところまではたどり着かなかったが、この経験を通してガーナという国でどのような材料が手に入り、どのような機材を使うことができ、そしてどれくらいの時間がかかるか、などの大まかな感覚をつかむことができた。もちろんこのプロジェクトはこれで終わりではなく、これからより効率的で、役に立つものづくりをファブラボガーナで行なっていくための最初の一歩である。自分はこの経験を研究に反映して、これからも良い関係を築いて行きたい、と。エマニュエル先生も納得してくださり、今後の発展ための第一歩という形で今回のプロジェクトは幕を閉じたのであった。
エマニュエル先生には自分が先週末から構想していたソーラーCNCの話もした。TTI工房では旋盤などが使えるが、停電の際には機能しない。したがって、ソーラーセルでカーバッテリーを充電し、そこからステッピングモータの電力を取り出すCNCである。さらにこのCNCは折りたたみ可能でスーツケースの中に収めることができ、設置場所を選ばず、例えば屋外など、どこでも使うことができる。ガーナでは所望の大きさや形状の材料が手に入ることは稀であり、基本的に材料は加工することが前提となる。今回の滞在では木工CNCを使わせてもらうことが出来たが、安価な木材を材料としてCNCを用いて自由な寸法に加工することは、ボトルネックとなっている加工の速さと、材料の入手性という2つの問題を一度に解決できるので、とても有効であることを悟った。
日本に帰ったら、まずはこのCNCについて検討することから始めよう。
ガーナ。
まさにガーナ、という一日でした。
今朝は早起きしてプログラムを完成させる。キーパッドを入力→数字を取得、というプログラムはできているので、現在時刻を編集する機能を付加したい。キーパッドの#に当たるボタンを長押しすると編集モードに入るという機能を実装したが、これができたときは少し嬉しかった。というのも、このコードは様々なLCDを使ったアプリに応用が可能だからだ。夢が膨らむところである。
エマニュエル先生の家で朝食を食べていると、今日は一緒に夕食を食べようと誘ってくれた。思い返すと夕食を一緒に食べるのは初めてかもしれない。うれしいお誘いを快諾する。
朝食を食べた後ラボに向かうと、ダグラスとアイザックが来ている。ダグラスに圧電スピーカー持ってる?と聞いてみると、普通のスピーカーならあるよ、とダグラスが以前作ったオーディアンプを出してくれた。
ArduinoからDTMF信号を出力するコードを試すとうまくいった。とここで、ArduinoのToneライブラリというのを発見する。色々な曲が試せるようだ。これまでに書いたすべてのコードを統合すると、チャイムのプロトタイプの完成である!
アラームの回路が完成した
TTI alarm
これはすごい、と喜んでもらったので嬉しかった。するとスティーブンがエマニュエル先生と電子工学の先生であるマイルスを呼んできた。マイルス先生にこのチャイムの回路図はあるか、と聞かれたのでまだ作ってませんが作って渡します、と約束をする。実際、分離器の方が忙しくてアラームにかける時間の余裕はほとんどないのだが。
さて、アラームは一段落したので分離器の組立作業を再開する。
工作する部品について相談する
残っている作業はドライブシャフトとベルトコンベアを駆動するシャフトの旋盤による削り出し、ローターの接合、鉄板へのベアリングの溶接、そして全部品のアセンブリである。
まずは旋盤での作業のためにシャフトを切断する。
学校の購買所で購入したΦ14のシャフトを切断
そして機械科の工房へ向かう。アイザックが旋盤の作業をすすめる傍ら、アブーと自分は鉄板へのベアリングの溶接を行うことにする。まず適当な厚みの鉄板を探し、切断機で切断する。
鉄板を切断
その後ボール盤で穴を開ける。径が大きいので、木工の際に使用していた倉庫に置いてあるボール盤を利用した。
事件が起こったのはそのときである。アイザックが旋盤作業を行なっている横でアブーと話していると、ガタッという音がして突然部屋の電気が切れた。そう、ここでまさかの停電である。この時の自分の頭の中は真っ白を通り越して悟りの境地に近づいていたかもしれない。今日全てをスピーディのこなしても間に合うかわからないのに、作業できなくなるとは。アブーはやれやれという顔をしながら、”.., Ghana.”と一言呟いただけだった。
電気が消えた工房
立派な旋盤や工作機械を備えているこの場所でも、停電には抗うことができないのである。
立派な旋盤もこうなっては使えない
ラボに戻ると、焦っても仕方がないので今できることをやることにする。まずはローターを重ねあわせて接合する。中心にはスペーサーとして小さい円盤が入っている。
ローターの接合。3枚の板を貼り合わせる
そしてシャフト以外の部分の組立を行う。
みんなで組み立て
あとは鉄板へのベアリングの溶接が残っているが、もし溶接科でガス溶接が使えるなら今日中に加工ができるかもしれない。溶接科に向かい、担当の先生に尋ねると、ガス溶接はやっておらず、電気溶接のみとのことだ。ガス溶接を使わないのは燃料が高いことも理由であるらしい。ところで溶接科からラボに帰る道すがら、非常用発電機が置いてあるのを目にした。なんで停電の際に使わないの?と尋ねると、やはりこれも燃料が高いからというのが理由であるらしい。なんともはや。
今日はこれ以上作業をすすめることができないので、ゆっくりと過ごしていた。少年がフルーツを売りに来たので、みんなで休憩をする。
フルーツを売りに来た少年
学年を聞くと、今は小学校3年生らしい。ガーナではこれくらいの子供が水を売ったりフルーツを売ったりしている。ファブラボのみんなが彼をからかったりしているが、こういう風にお兄さんにいじられて強くなっていくのだろう。
その後辺りが暗くなると、発電機を試してみようということになった。ここでスティーブンが言った言葉にアブーが反応すると、2人が騒ぎ始めた。スティーブンの話ではこの部屋には電気のコンセントの差込口があり、そこから逆に部屋に電気を供給できるらしいが、アブーはそんなコンセントはないと言っているようだ。ダグラスもスティーブンの側について討論をし始めた。スティーブンは実物を見せるというと、アブーをICTラボに連れて行った。今回はスティーブンの勝ちのようだ。ちなみにそのコンセントとはこのようなものである。
各部屋にある電力の供給口(インレット)
これもガーナならではなのだろうか。コンセントとは電気をとるものであって、電気を入れるものではないと思っていた自分にとっては画期的な仕組みであった。
さて、発電機をセットアップしていると、エマニュエル先生がやってきた。誘われていたディナーの時間になったようだ。ラボにみんなを残して自分はエマニュエル先生の家へと向かう。
家に着くと、ダラーリとダラー、そして彼らの友達が来ていた。同じ宿舎に住んでいる先生の子供だろうか。今日のメニューはRice cakeとナッツのスープとのことだ。
ガーナ風Rice cake
エマニュエル先生と話している中で、例の話を振ってみた。ガーナの子供たちは停電の際はどうやって勉強しているのか?という質問である。エマニュエル先生いわく、やはりランタンを使って勉強するようだ。「同じ質問をダラーリにしてみたら、夜より朝に勉強する方が好きだと言っていましたよ」、と伝えると笑ってくれたものの、すぐに奥の子供たちが遊んでいる部屋に入って行って、勉強しなさいと言っている。もしかしたらダラーリは夜に勉強しない子だ、というのを悪い意味でとられたのかもしれない。自分は「電気を使わないシンプルな解決策」という意味で面白いと思ったのだが、ダラーリに申し訳ないことをしてしまったかもしれない。
子供たちが部屋から出てくると、教科書を出して勉強を始めた。面白いのはITの教科書だ。Wordの使い方や、Eメールの使い方など、極めて実践的、アプリケーションに特化した内容である。コンピュータの使い方を早いうちから教えようという教育方針が伺える。
そんなことを考えている傍、子供たちはランタンの灯りで勉強を続けるのであった。
ランタンの灯りで勉強する子供
ご飯を食べ終わるとアブーから連絡があり、自分の荷物をどうするかと尋ねてきてくれた。荷物はそのままの状態で放置してあるので、アブーに迎えに来てもらってラボに戻ることにする。御礼を言ってエマニュエル先生の家を後にし、ちょうどアブーのバイクの後ろに腰掛けた瞬間教員宿舎の灯りが点いた。やっと電気が回復したようだ。今日は比較的停電が長かったように思う。
ラボに戻るとCNCの運転動画を撮影するべく、回路をセットアップする。
回路の運転動画
その後、アブーが時間があるようだったので、XBeeの使い方を教えた。XBeeはX-CTUというソフトウェアを使ってファームウェアの書き換えを行うのだが、この使い方には非常に癖があってややこしい。ATモードとAPIモードがあって、ということを説明し、ループバックテストを行った。 その後ArduinoのXBeeライブラリを使ったテストをしようとAPIモードに切り替えて、とやっていたらはまってしまい、時間を費やしてしまった。するとアブーがもう日が変わる頃なんだけど、と伝えてくる。時計を見ると本当だ、もう午前0時だ。だいたいコンセプトはわかったよ、とのことなので、片付けをしてラボを後にした。
カクム国立公園
今日はアブーとエマニュエル先生、そして奥さんの4人でカクム国立公園へ出かける予定である。
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発電機をゲット
今朝はクレジットが失効した携帯電話をチャージしようと思い、7:30くらいにTTIの近くのキオスクをぶらつくも、この時間はまだ店が開いていなかった。だいたい8:30とか9:00くらいにならないと店に人は来ないようだ。
携帯が使えないので、8時前になるとエマニュエル先生の家に向かっていった。すると水売りのトラックが停まっている。水を買いに行くのは大変な作業だと思っていたが、集合住宅ではこういう売り方をしているのか、と納得する。
水売りのおじさん
さて、ラボに行くも今日は人がまだ来ていなかったのでアブーの到着を待つことに。しばらくするとアブーとアイザックがやってきたので、土台を新たなパーツに交換する。
底板の交換
そして磁石が現在いくつ手に入っているかを確認するために、スロットに合うように磁石を数個組み合わせてユニットを作り、マスキングテープで巻いてひと固まりにしていく。
ローターのスロットに磁石を埋め込んでいく
すると、48個のユニットがあることがわかった。これだと若干少ないので、磁極の数を増やす目的で、各ユニットを薄くすることにした。こうするとユニットは65個程度になるので、残りは15ユニット、磁石で言うと30個程度があればいい計算になる。これだけの数を月曜日に集めることができるか。
数え終わった磁石
ちなみに今日も子供たちがラボにやってきた。いま写真を見ていて気づいたが、この子たちは兄弟だったのか。眉毛がそっくりである。
ラボに遊びに来る兄弟
彼らとのやりとりで興味深かったものとして、こんなものがあった。ガーナで何食べてるの?と聞かれたので、みんなと同じだよ、ライス、バンクー、フフ、何でも食べるよと言うと、僕はフフもバンクーも好きじゃない、ライスが好きだという返事が帰ってきた。隣の子供も僕もライスがいいと言う。これは意外だ。というのも、アブーとご飯を食べにいくとほとんどバンクーしか食べないからである。さらに子供たちの要求はとどまることを知らず、お腹がすいた、家にお米ないの?と聞いてくる。自分は自炊はしていないので、お米はないよ、家に帰って食べなさいと言って別れたが、この件が気になったので後でアブーに質問してみた。アブーの見解では、子供たちは毎日フフやバンクーを食べているのでフフやバンクーには飽きており、たまに食べられるライスが好きなんじゃないかな、とのことだ。
土台を完成させると、いよいよ発電機を購入すべく町へ向かう。発電器の店に行く前にハードウェアショップでスクリューを購入したのだが、ここでも面白いことがあった。1ダースいくら?と聞くと2セディという。自分たちはスクリューが48本必要なので4ダースくださいというと、おじさんはスクリューの数を数え始めたが、アブーが異変に気づいた。「おじさん、それいくつです?」するとおじさんは「この塊が24個、それが4つ」とのことだ。どうやら1ダースは24個だと思っているらしい。そこでアブーが、それだと多すぎます、2ダースにしてください」と伝えると、48個にしてくれた。不思議ではあるが、今までずっとそうして来たということは特に問題はなかったのだろう。価格は4セディになったので5セディを渡すと、2セディお釣りをくれたので、「おじさん、1セディお釣りが多いです」とアブーは言って、1セディを返して店を後にした。正直に申告しあうのは素晴らしいところであるが、少し悠長でもある。
そして次はあたりをつけていた発電機の店へ向かう。手頃な大きさの発電機があったので、これをくださいというと、それは故障してる可能性があるから売らないと言われてしまった。自分たちが欲しい発電機は小型のものだが、なかなか所望のサイズは見つからない。次の店をあたり、その次の店、と結局4軒ほど回ったところで良さそうな発電機を売っている店を発見した。
発電機とポンプを売っている店
発電機を売っている店はポンプも売っているのが常である。さて、この発電機の出力はいくらですか?と確認すると最大出力が1.5kWだそうだ。出力は十分そうなので、これをくださいというと、もう一つ同じ出力のものがあるという。最初の方はガソリンだけで動かせるが、もうひとつの方はガソリンとオイルの混合油を用いるそうだ。価格は前者が400セディ、後者が350セディとのこと。アブーとどっちにしようと話すと、耐久性を考えると前者の方がよさそうだと言う結論になり、最初の方をくださいと伝える。TTIでやっているプロジェクトで使うんです、今までにかなり出費して、これが最後の部品なのでまけてくれませんかとアブーが頼むと、380セディまでまけてもらうことが出来た。
購入した発電機
店の息子がガソリンを入れてエンジンをかけてくれると無事に始動した。 オーナーが使い方教えようか?とアブーに言うと、 「大丈夫です、自分はエンジニアなので。この発電機をこれから分解するんですよ」と笑いながら答える。アブーは自動車科で学んだので、原動機はお手のものである。するとさっきまでは威勢の良かったオーナーも、そうか、じゃあまた来た時に逆に教えてくれと言われていた。なんともはや。
発電機は重いので、店からTTIまではタクシーを拾った。ラボに着くと、早速オルタネータのカバーを開けてシャフトの様子を確認する。
オルタネータの分解
話し合った結果、オルタネータから出ているシャフトの径にあわせて旋盤でシャフトを削りだし、Φ12のベアリングが入るように外側だけ径を変えたシャフトを作ることにした。Φ12のベアリングは鉄板に溶接し、鉄板ごとオルタネータにネジ留めすることとする。 そしてオルタネータの外側に引き出したシャフトにはプーリーを溶接し、 プーリーベルトでローターのプーリーと接続することにした。プーリーベルトを張るための仕組みとして、余っているプレートにスロットをつけて引っ張る仕組みを作ることにした。これらの加工は月曜日に行うことになるが、一日で完成させなければならない。
発電機に関するディスカッションが終わると、アブーはローターの中央に挟み込む中敷きの板を作るために、もう一度AudioCraftに向かっていった。その間自分はステッピングモータの回路に取り組む。朝試したみたところマイコンからの出力が出ておらず、結局ブレッドボードを使うよう変更したのだ。
アブーが帰ってくると、明日は何時にラボに来るの?と聞かれたので、いつもと同じ9時頃に来ようと思うと言うと、自分は明日の朝は洗濯をしたいので、ラボの鍵を渡しとくよと言う。アブーは日曜日にたまった洗濯物を片付けるのが習慣のようだ。手洗いにこだわりがあるようで、アメリカに行ったときに毎日洗濯機を使っていたが、どうも綺麗になっていない感触があって、手で洗わせてくれと思っていたそうである。手洗いするのはいい運動にもなるので、運動する時間が取れない最近では調度良いとのことだ。
ここでアブーが、「不思議に思ってたんだけど、今回の滞在ではまったく旅行に行かなかったよね」、と尋ねてくる。そうか、アブーも不思議だと思っていたのか。そうなんだよ、2、3週間でプロトタイプを片付けて時間が余ったら旅行しようと思ってたんだけど、と自分の本音を話す。思い返すと今回の製作にはかなりの時間を要したが、その理由は材料が手に入らないことが一番の理由であった。先週はカクム国立公園に行こうという計画があったが、アクラに磁石を調達しに行ったために、その計画は流れたのであった。すると、もし良ければ明日どこか行かない?と提案してきてくれた。これは素晴らしい提案である。自分も旅行したいと思っていた、ここから近いブスアビーチにも行ったことないし、というとじゃあブスアビーチに明日行こうか、となった。
夕食をChop barで済ませると、エマニュエル先生の家に伺い、明日の外出の話をする。最初はブスアビーチに行こうと思いますと伝えたが、エマニュエル先生やジュリーの話を聞いているとカクム国立公園の方が楽しそうに思えてきたので、行き先を変更することにした。するとエマニュエル先生は、もしかすると学校のドライバーにピックアップを頼めるかもしれないと言って校長先生に電話をして下さった。結果はOKとのことだ。出発は明日の10時である。
明日は今回の滞在において最初で最後の観光を楽しむことにしよう。