Tag Archives for ケニア

技官研修5日目

C言語によるArduinoプログラミング実習第三 この日の午前は、前日に説明していなかったArduinoによるプログラミングの要素を解説した。具体的には以下の2つである。 N型FETを用いたDCモータの速度制御 ステッピングモータの励磁の基礎と角度制御  DCモータにはケニア現地で調達したDVDの駆動用モータを利用し、N型FETをドライバとして使うことで、FETのゲート電圧をArduinoからPWM駆動して回転速度を制御する方法を学んだ。また、ステッピングモータはiPICに在庫として保管されていたULN2003Aドライバつきの小型ステッピングモータを利用し、サードパーティのArduinoライブラリを利用してステッピングモータの角度制御を行う方法を解説した。 MIT App Inventor 2を用いたAndroidプログラミング実習  本実習は当初開催を想定していなかったが、MATLABによる制御実習が割愛されたことと、受講者にアンケートをとったところ希望が多かったため、実習を実施した。 MIT App Inventor 2(以下AI2)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)によってメンテナンスされているAndroidアプリケーションの開発環境である。教育用プログラミング言語であるScratchに似たグラフィカルインターフェースを用いて、視覚的にプログラミングできることが特徴である。また、スマートフォンという身近な機器を自由に制御できるという体験は、多くのプログラミング初心者にとって新鮮な体験である。筆者は2016年にガーナの工業高校(Takoradi Technical Institute)で、教員及び学生を対象として、AI2を用いた一週間のプログラミング講座を担当した経験があり、教育におけるその有効性を実感していた。今回ケニアでも同様の試みを行ってみたかった、というのが背景である。 とりわけ参加者の興味を引いたのが、音声発話のアプリケーションである。任意の文章をテキストボックスに入力して実行ボタンを押すと、入力した文章が音声に合成されてスマートフォンから聞こえてくる、というものである。それだけでも結構面白がってもらえたのだが、たまたま参加者の一人がスワヒリ語を入力してもきちんと発音される事に気づいた。そうなると今度は自分の部族の言葉(Local language)を話させたいけど可能か?という質問が筆者のもとに来た。もちろん筆者はケニアの部族語を入力して発話させた経験がない(そもそも発音が正しいのかどうか分からない)ので、やってみればわかるよと伝えた。その参加者が早速試すと、周囲が爆笑に包まれたのであった。どうやらアクセントが微妙に違うが、割といい感じに発音されているらしい。筆者はケニアの言葉に詳しくないが、おそらくローマ字表記にかなり忠実に発音される言語なのであろう。筆者が以前滞在していたガーナの西部地方におけるファンティ語では、独自表記される子音の発音が多く、このようにうまく発音されるわけではないだろうと推測される。ケニアには42の異なる部族があり、政治への影響もあると聞く。自分の部族の言葉に自信のアイデンティティを感じている者も多いのだろうと感じた瞬間であった。

09. February 2018
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技官研修4日目

本日の研修では、マイクロコントローラを制御するためのプログラミングを学んだ。Arduinoと呼ばれる8ビットのマイクロコントローラを利用し、プログラムの開発環境としてArduino IDEを用いることで、機械設計によく使われる制御要素のプログラミング技術を習得することを目的とした。デジタル電子回路を制御するためには必須の技術であり、参加者のモチベーションも高かった。 C言語によるArduinoプログラミング実習第一 この講座では、Arduinoに関する簡単な説明と、プログラミングの基礎を説明した。ArduinoはC言語をベースに独自の関数を追加して拡張したArduino言語を用いて開発を行う。講習の際に心がけたのは、トップダウンにプログラミング言語の文法の解説を行うことはせず、あくまでも「それによって何ができるか」というトピックにもとづいて、その方法を解説するということである。本講習では、以下のトピックに基づいて実習を行った。 デジタル入出力とLEDのOn/Off制御 PWM(Pulse Width Modulation)とLEDの電流制御 UARTを用いたPC-Arduino間のシリアル通信 for文による繰り返し制御 プログラムのソースコードはなるべく簡潔にし、原理はホワイトボードを用いて分かりやすく解説することを心がけた。なかにはプログラミングのセンスを感じる質問を投げかけてきた参加者もおり、JKUATにおけるプログラミング教育のポテンシャルを感じる場面もあった。 参加者の声としてC/C++プログラミング言語は学校で学んだが、実際に手を動かして実習を行ったことはなかったので、自信につながったという嬉しい声も聞かれた。 C言語によるArduinoプログラミング実習第二 この日の午後は、引き続きArduinoのプログラミング実習を行った。内容は以下である。 if文による条件分岐 A/D変換による可変抵抗器の両端電圧の読み取り PWMによるサーボモータの角度制御 実習:可変抵抗器を用いたサーボモータの角度指令制御  A/D変換値とPWM出力のスケール変換を行うmap関数というArduinoの組み込み関数の理解が肝であったが、おおむね理解してもらえたように思う。また、サーボモータというアクチュエータの制御は、ロボット設計に向けた第一歩であり、興味を持ってもらえたように感じた。

08. February 2018
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技官研修3日目

本実習では、Autodesk Inventorを用いて2種類のシミュレーションを行う方法を解説し、実習を行った。この実習科目についても、iPICスタッフから是非研修を行ってほしいという要請があった。 iPICスタッフからの聞き取り調査によれば、彼らが用いたシミュレーションという言葉は、3DCAD上で設計したモデルのアニメーション動作のことを意味していた。これを学びたい背景は、製品設計において、仕様や動作を説明する際に活用したいということであった。したがって、Autodesk Inventorという機械設計で用いる3Dモデリングソフトウェアを利用し、シミュレーションの実習を行った。 Autodesk Inventorを選定した理由は以下である。 教育版の無償ライセンスが存在する アセンブリ拘束条件に対するアニメーションが作成可能である 構造解析(FEA)が可能である 研修に先んじて調査したところ、JKUATでは機械科にSolidWorksのライセンスが導入されているとのことであった。しかしiPICにはSolidWorksのライセンスは導入されていなかったため、教育用無償版ライセンスが利用可能なAutodesk Inventorを研修に採用した。また、今回の研修に必要な機能である、アセンブリ拘束条件に対するアニメーション機能と、構造シミュレーション機能(FEA)が可能である点も重要であった。 補足として、同様の条件を満たすAutodesk Fusion360の利用も検討したが、参加者の多くはAutodesk Inventorの経験は多少あるものの、Autodesk Fusion 360は利用したことが無いという者が大多数だったため、今回はAutodesk Inventorを利用することにした。 Autodesk Inventorを用いた運動学シミュレーション実習  本実習では、平歯車の噛合動作のアニメーションの作成を行った。本テーマを選定した理由は、機械設計で最も頻出する、回転拘束に対してアニメーションを設定するという項目を解説したかったためである。なぜ回転拘束に対するアニメーションが重要であるかというと、機械設計ではモータやエンジンなどの回転駆動軸が、クランクシャフトやリンク機構を介して機械の全体動作を生み出すことが多いためである。 平歯車の設計はAutodesk Inventorに内蔵されるSpur Gears Component Generatorを利用して行った。そして大小2つの平歯車に対して、拘束とギア比を適切に設定することで、歯車の回転シミュレーションが行えることを確認した。また、最終的に作成したアニメーションを動画ファイル(.wmv形式)に書き出す方法も学んだ。  Autodesk Inventorを用いた力学シミュレーション実習  Autodesk Inventorを用いて行うことのできるシミュレーションには運動学シミュレーションと、力学シミュレーション(構造解析)がある。iPICスタッフからの要望は前者のみであったが、後者も機械設計では重要なスキルであり、念の為に受講者に受講希望があるか多数決を取ったところ、ほぼ全員が(非常に前のめりな様子で)学習したいと挙手した。このため、当初のスケジュールに追加して研修を行った。 実際に行ったのは、有限要素法(FEM)による片持梁の応力・変位解析である。まず簡単に片持梁の材料力学理論を解説すると(片方を固定端、もう一方を自由端、自由端の末端に集中荷重)、参加者の多くが、理論は学んだことがある、という反応を示した。  実習ではまずAutodesk Inventorを起動し、片持梁のモデリングを行った。その後Stress Analysisメニューから新規Studyを生成し、境界条件設定、荷重設定とメッシュ生成を行い、有限要素計算を実行した。von Mises応力および変位のヒートマップ表示を確認し、さらにアニメーションの生成方法を学んだ。そして運動学シミュレーションと同様に、動画の書き出し方法を習得した。  筆者の印象であるが、FEMによる応力解析には参加者が特に興味を示していた。 電子回路基板への電子部品の実装実習(はんだ付け) この日の午後はLPKF S63基板加工機を用いて作成した、DCモータの速度制御基板に対して、電子部品を実装するはんだ付けの実習を行った。筆者には驚きであったが、参加者の多くがはんだ付けは初めてであるようだった[。 実装した部品は、整流用ダイオード、積層セラミックコンデンサ、電気抵抗、およびFETである。事前に各部品に対する注意点の説明も行った(ダイオードの極性、電気抵抗のカラーコード等)。また、はんだ付けの代表的な不良パターンについても解説した(はんだ過少による接触不良、いもはんだ、ブリッジ)。なかでも、いもはんだの説明の際に、日本ではこの接触不良をその形状からPotato solderと呼ぶと解説したところ、受講者からは大きな笑いが起こった。はんだ付けの実習の際には、そっちのはTomato … Continue reading

07. February 2018
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技官研修2日目

Autodesk EAGLEを用いた電子回路の設計実習 本実習では、Autodesk EAGLE(以下EAGLE)という電子回路CADを用いて、電子回路(PCB)の設計を行った。電子回路の設計は、1) 回路図(Schematic)作成、2) 回路パターン(Artwork)作成、3) 加工用ガーバデータ作成、という3つのプロセスに分かれている。EAGLEはこれらの3つの工程を全てカバーするソフトウェアであり、教育版の無償ライセンスが提供されている。 回路CADの選定にあたっては、以下の観点をもとにした。 筆者が使い慣れていること 教育版の無償ライセンスがあること JKUATで導入しているLPKF社の基板加工機に対応していること 回路CADのなかでも比較的シンプルな操作体系であること まず1に関して、JKUATではProteusを多く利用していると聞いたが、筆者は電子回路CADとしてEAGLEとAltium Designerを普段の業務に利用しており、Proteusを利用した経験がなかった。また2 について、EAGLEには無償ライセンスがあり、学生や教員の自習に活用してもらうことを考えると、積極的に使いたい理由であった。EAGLEの設計データをLPKF S63で使うためのガーバデータ(RS-274X形式)に変換するためのCAM定義ファイルがサードパーティから提供されていたことも好都合であった。最後に、これは電気系の専門の参加者から感想として聞いたのだが、ProteusよりもEAGLEの方がシンプルで使いやすいとのことであった。初心者の教育的な観点からは、はじめから高度で複雑な機能を搭載したソフトウェアよりは、操作がシンプルで全体像を見渡せるものを最初に学んだほうが、のちのち応用が効くと感じているため、EAGLEを選んだのは正解であったと言える。  以下に、演習に用いるために用意した基板の設計を示す。 実際に実習時には、EAGLEの機能解説に想定より時間を要したため、DCモータの速度制御という趣旨は残したまま回路を簡易化し、以下の回路設計を行った。  今回はAdafruitの提供するEAGLEライブラリを利用したため、ライブラリの自作方法は解説しなかった。それもあって、参加者は特に詰まるところなく設計を完了させていた。ライブラリの自作方法を研修に含めると、かなり時間を要することになると思われる。 従来から分かりづらかったEAGLEのCAM Processorの操作インターフェースはEAGLE8.6.0から変更されており、多少改善が見られたが、依然としてCAM定義ファイルを開くメニューへの導線がわかりづらく、参加者から一番質問が出たのはこの箇所であった。 最初に準備した設計ではオートルータ(自動配線)の利用方法も解説する予定であったが、変更後の設計があまりに簡素であることもあり、オートルータの利用方法は解説しなかった。講習が終わった後の時間に、数人に対して補習としてオートルータの使い方を説明した。 LPKF S63基板加工機を用いた電子回路基板の加工実習 本実習ではLPKF社のS63基板加工機を用いて、実際に設計した基板の銅板への切削加工を行った。筆者は日本ではMITS社の基板加工機を愛用しており、LPKF社の加工機は初めてであったが、メカトロニクス学科のテクノロジストの助けもあって、操作方法をすぐに習得することができた。LPKFに搭載されていて、MITSに無い機能として、加工ツールのZ方向の自動キャリブレーション機能がある。大変便利な機能であり、製作者に優しい製品設計であると感動した。 S63基板加工機ではCircuit Proというソフトウェアを利用して、通常の基板加工機と同様にガーバデータ(RS-274X形式)を読み込み、ツールパスを生成し、加工機へデータを送信する。今回は簡単のために片面基板を設計したが、カメラを利用した位置合わせによって容易に両面基板を製作することも可能である。  参加者が一番知りたかったのは、複数の加工情報をどのように区別して加工機に送信するのか、という点であった。EAGLEではCAM ProcessorとLPKF S63用の定義ファイルを用いて、はんだ面データ(.sol拡張子)、Excellon形式ドリルデータ(.drd拡張子)、輪郭線情報(.outline拡張子)を吐き出すことができる。これらの各々をCircuit Proで読み込むことで、自動ツール交換装置(ATC)に対応したツールパスを生成できるということを、参加者は学んだ。

06. February 2018
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技官研修1日目

研修初日はハンズオンの研修(実際に手を動かす実習)はなく、講師および参加者の簡単な自己紹介と、グループワークを行った。 ディスカッションを軸とした研修を最初に導入した理由は、iPICスタッフのDr. KihatoおよびC/PのMr. Omondiのリクエストによる。Kihato氏からのリクエストは、「技術の指導だけでなく、日本の支援という利点を活かし、ものづくりの心をいかにAfrican innovationに活用するかを議論して欲しい」というものであった。Kihato氏とさらなる議論を行ったところ、「もの」ではなく「こと」に焦点を当てることの必要性、という視点も新たに明らかになった。Kihato氏は、日本の経済発展というのは、そのような「こと」に焦点を当てたことも背景にあるのではないか、という。確かに日本の製造業を発展させた背景には、一見製造それ自体と無関係に思える部分(整理や整頓と言った、製造に取り組む姿勢や、「車ではなく、ひとをつくる」というトヨタの思想など)も関係があるかもしれないと納得した。結局彼の真意を推し量れば、単一の技術シーズを基軸にイノベーションを捉えるのではなく、このケニアという土地が抱える問題を解決することに焦点をおき、そもそもどのようなことが求められているのか、広い視点に立って議論を行い、そこで技術が果たせる役割は何であるのか、包括的に考えることの必要性をスタッフにも知ってほしいということであったと考えられる。このアドバイスを基に、グループディスカッションのテーマを設定し、議論を行った。 本グループディスカッションでは、アフリカンイノベーションに関する議論を行った。まず参加者に問うたのは、既存のアフリカンイノベーションの事例はどのようなものであるか、ということである。例として、以下のようなものが挙げられた。 カテゴリ イノベーション事例(受講者の表記による) 農業 3 in 1 plant mill, Hay baler, Wind-mill pump, Money maker pump, Beans thresher, Hydraulic pump, Maize sheller, Motorbike driven water pump, Use of drones for spraying farms, Stirling machine, Oil … Continue reading

05. February 2018
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