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ガーナでの問題って何?
タイトルは高校生に尋ねてみた質問です。 起床後、洗濯をしようと蛇口をひねると今朝も水がでない。勘弁してくれ、と思うが仕方ない。夜は疲れてて洗濯する気にならないんだよなぁ。明日に持ち越しである。 今朝はporridge(オートミールみたいなもの:ファンティでココ)のタンブラウをいただく。コーン、キャッサバ、豆、その他のいろんな穀物を混ぜて煮た料理である。砂糖とコーヒー用のコンデンスミルクを入れて飲むのがエマニュエル家の方式らしい。クスは雷おこしだったが、タンブラウは果たしてどんな味がするのか? タンブラウに砂糖を入れて食べる お、これはいける。完全にきなこ餅の味だ。きなこ餅を似たら再現できそうです。ちなみに二杯目は塩を入れていただきました。 また今日はジュリーに、昨日あなたを町で見たよ、と言われる。別にやましいことをしていたわけではないが、気づかないところで見られていた、と思い少しぎくっとしてしまった。ジュリーは自分が昨日ファンティの教材を購入した本屋の真向かいのキリスト教関係の本屋で働いているそうで、見かけたが通りの反対側で声をかけられなかったそうだ。 ラボに向かう前にキオスクに寄ってSIMカードのチャージ用のバウチャーを購入する。今まで使っていたMTNは高くて出費がかさんでおり、今日からAirtelに乗り換えるのだ。AirtelはMTNのほぼ半額の料金で使える。 Airtelのドングルを装着 さてバウチャーをスクラッチしてアクティベーションコードを表示し、チャージを行う。と思ったらInvalid voucherとなってチャージできない。15セディも払ったのに、と思ってアイザックに助けを乞う。アイザックの携帯からアクセスしてもうまくいかない。ダグラスがカスタマーセンターに電話をかけて確認してくれたが、このコードは使えないそうだ。返金してもらいに2人でキオスクに行くと、キオスクのおばちゃんは「うちじゃ返金しないよ!Airtelのオフィスに行っとくれ!」と突っぱねる。まあバウチャーのコードが使えないのは確かに不慮の事態だし、おばちゃんの気持ちはわかる。もう一度ダグラスがカスタマーセンターに確認し、町のAirtelオフィスに行こうとの話になる。 乗り合いタクシーで町へ。Airtelオフィスではすぐに対応してもらい、無事にチャージできた。ありがとう、ダグラス。帰りがけに2件ほど電器店に寄り、ダグラスはラップトップPCの交換用ディスプレイを購入。やはりパーツを購入して修理は自分で、というのが基本である。 シャープ製ディスプレイ。ラップトップのディスプレイってこんな風になってるのか さて、午後は例のCNCルーターを有する会社のAudioCraftを訪問する予定である。 その前に昼ごはんを。 今回の滞在で初のフフ。バンクーよりフフの方が好きだなぁ。少数派みたいだけど ご飯を食べていると、さっきネットでファンティ語の教材を勉強していたらファンティ語話者の著名人の欄にコフィー・アナン元国連事務総長を見つけたことを思い出した。恥ずかしながらアナンさんがガーナ人ということを今日初めて知ったのでした。ファンティはクマシなどアシャンティ地方やガーナ沿岸部でアカン語の方言として話されているようである。ところでガーナの言葉っていくつあるんだ?と思い調べてみると、79個と書いてあるページを見つけた。アブーに確認すると、そのうちよく認知されているのは42個らしい。ちなみに君はいくつの言語を話せるの?と聞いてみると、6つ話せるという(ファンティ語、ガー語、英語、ハウサ語、エウェ語、あとひとつは母親の実家の村の言葉)。おそらく多少の類似性、互換性はあるだろうが(少なくともファンティとハウサは言語構造が大きく異なると推測する)これだけの言葉を話すのはすごい。アフリカではこれがスタンダードなのか。ちなみにセネガルのダカール行きの航空機に乗った時、隣のセネガル人は10個の言語をネイティブレベルで話していた。 AudioCraftに到着すると、中にはベンツが停まっている。中を見せてもらうと、思っていたより大きな作業場である。きれいに黒塗りされたスピーカーの筐体が30個、いやもっとだろうか、置かれている。 くだんのCNCは中国製で4000ドルだそうだ。見た感じ100mm×150mm×20mmくらいのストロークだが、この値段はまあリーズナブルだといえると思う。 CNCを導入するまではスピーカーの筐体を手作りしていたそうだが、CNCの導入によりこれまでよりも断然速く、しかも管理されたクオリティで生産できるようになり、繁盛している様子だ。 色々と話をしていると社長がやってきた。話を聞いてもらえることになり、庭に椅子を並べて皆で腰掛けた。社長は忙しそうでひっきりなしに携帯電話がかかってくる。今回のプロジェクトの経緯を説明し、可能であればCNCをお貸しして欲しいと伝えると、「もちろんだ。ファブラボには(CNCの導入に際して)とても世話になったから好きに使ってくれ。朝から晩までいつでも来てもいいぞ」と、社長らしい気前のよいお返事をいただいた。親分気質というか、まさに社長の風格を感じる。お礼を伝えるのも束の間、次の仕事があるようですぐにベンツに乗って飛んで行ってしまった。 今日は挨拶だけにとどめてファブラボに戻ることにした。息子さんと話した結果、実際の加工は月曜日になりそうだ。また少し間が空くが、約束を得ることが出来たのは前進だ。 ラボに帰ると、かねてから聞いてみたかった質問をアブーとダグラスにぶつけてみた。率直に「今、何かほしいもの、作ってみたいものはあるか?」という質問である。2人とも、いきなりの質問にうーん、とうなっている。自分はガーナで求められているもの、人々のニーズが知りたいんだというと、それならば自分たちも身の回りの問題を発見して解決するプロジェクトをやってきたと言う。一つは携帯電話の充電というニーズを満たすためのシステムとして太陽電池を利用したシステムを制作し、実際に村に行って備え付けたそうだ。今はどうなってるの?と尋ねると、実は壊れてしまって使えない状況にあるそうだ。そのため強化したフレームを作り直し、改善している最中であるとのこと。 そしてもう一つのプロジェクトが非常に興味深いものだった。銀行のロビーで携帯電話を使うことは禁止されているそうだが、彼らいわく99.5%のガーナ人は無視して携帯電話を使うそうだ。そこで妨害電波を発射して携帯電話の通話を無効化するジャミング装置を作るというプロジェクトがあるという。これには大笑いしてしまった、と同時に、ものすごいこのプロダクトを作ってみたい衝動に駆られた。公共のスペースで携帯の電波を無理矢理妨害したい、というのは日本じゃ考えられないニーズだ(ミュージカルシアターの電波シールドがあるか)。それに妨害電波の発振回路、というのはギークっぽくていい。 明日以降、このプロダクトにも並行して取り組むことにしよう。参考のために回路図をダグラスにもらった。 その後CADの手直しをしたいな、と思っているとまた停電だ。30分しても復旧しないので、今日は諦めて帰宅することにする。 ファブラボを出ると、家にランタンある?とアブーに聞かれる。暗闇の部屋では移動することもままならないので、ランタンを買うべく近くのお店へ。5セディでLEDランタンを購入した。このサイズがUSDで約2.5$で手に入るのは安いなぁ。マリ共和国のドゴン族の村でもLEDランタン使ってたけど、これくらいの価格帯なのかと納得。まあ本体に比べると電池が高いのではあるが。
材料の選定に関する私的メモ
材料の選定における「木材+金属の提案」→「フル金属で作ろう」→「やはり木材」という曲折は自分の研究にとって学びの大きい経験だった。最初の提案の意図は、「負荷のかかる軸周りに金属を利用し、それ以外の部分は加工しやすく安価な木材を使う」という提案だった。これがリジェクトされてフル金属の提案に賛成した理由は、木材は劣化しやすくランニングコストがかかることであった。そして最終的に金属加工に困難が予想され、木材が選ばれたのであった。 これだけの事例だが、材料の選定という工学的な意思決定に関して興味深い考察を行うことができる。 結論から言うと、自分の中で明示的ではなかった思考の前提条件が明らかになった。 まず「木材+金属の提案」フェーズでは、「プロトタイプとしての加工容易性」と「価格が安価」という2つの観点をこちらから主張した。 そして「フル金属への合意」フェーズにおいて、「価格が安価」という点について金属の方がランニングコストが低く、修繕のコストもかからないことを彼らに説明された。また、「高い慣性モーメント」と「強磁性体」というおまけの機能(あったほうがいいかもしれないが、オプション)があることも提案を補強する理由とされた。今考えるに、つまりは「プロトタイプという目的」を最優先に主張しなかったことが曲折の要因であると考えられる。 しかし更に考えると、自分はこの地ガーナにおいて「資源に対する価値観」と「金属加工のハードル」という2点の認識に関するチューニングを誤っていたのではないか、というのが本考察である。 「資源に関する価値観」とは、簡潔に言うと失敗を重ねてゴミを出すことに対する憂慮である。自分の提案する手法は、プロトタイプを素早く作って新たなニーズに応じて改変していくということであるが、いたずらに失敗を重ねることは無駄なゴミを出すことにほかならない。もし木材を使ったプロトタイプがうまくいった暁には(木材は捨てて)どうせ金属で作ることになりそうだから、最初から金属で作っちゃう方がいいかなと考えたのである。(これについては、作った木材のプロトタイプの再利用を考えることで自分のフレームワークを改善することができるかもしれない。) 次の「金属加工のハードル」の意味は、「自分は金属加工に慣れていないが、彼ら(特に機械科の学生)にとっては金属加工、溶接などはお手の物なのでは?」と考えたことである。金工が容易であるなら(前述の理由もあって)金属をとらないわけはない、と思ったのであった。(結局、当初想定しなかった困難が発生して金属加工を回避した)。実際に彼らと接していると、「え、そんなに金属加工って当たり前なの」と思うことが多い。自分も帰国したら金属加工、溶接の腕を上げよう。
気づきの多い一日
いつもより早く目覚める。 シャワーを浴びようと蛇口をひねると水がでない。水圧が下がってる、まじかぁ。こういうときはバケツに貯めておいた水を浴びるのである。アフリカにも慣れてきた。 普段通りエマニュエル先生の家で朝ごはんを食べているといきなり停電になる。すぐに電力が復帰することが多いのであまり気にしていなかったのだが、部屋に帰ってしばらくしても電気が来ない。ファブラボに向かうと電気がないまま生徒たちが作業をしている。 今日は電気来てないね、と言うとあと数分で来るよと言う。しかしすぐに笑いながら訂正し、数分で電気が来るかもしれないし、今日中には来ないかもしれないとのこと。普段の様子だとお昼には復旧するというが、果たして今日はどうなのだろう。 ちなみに最近けたたましくサイレンを鳴らしながらTTIの目の前の道路を過ぎ去っていく車列を目にする。みんなが釘付けになってるからなんだろうと思っていると、なんと首都のアクラへ向かう現金輸送車らしい。説明しづらいが、護衛の車をつけて爆音でサイレンを鳴らして走っていく現金輸送車の光景は何となく滑稽である。上島竜兵のお前ら絶対押すなよ!を思い出すからかなぁ。逆に目立たなくしたほうがいいんじゃないの?とも思えてくる。 さて、今日はこのプロジェクトにとって大きな進捗があるはずだ。今日は完成させた図面をもとに材料を集めに町へ繰り出す予定である。プリントアウトした図面を見ながら、寸法やボルトの数など細かいところをチェックしていく。部品の寸法は利用するフライホイールの形状に大きく影響を受けるので確定値ではないということを確認し、いよいよ出かけようという話になった。 そんななか、スティーブンがこう提案した。ショウヘイは店の中に入らない方がいい。自分たちだけで行けばタダでもらえるかもしれないスクラップも、外人が一人いるだけで商魂を出してくる可能性があるという。OK、了解、じゃあ影で見とくよと伝える。 ここで、アブーの様子が少し変なことにスティーブンが気づく。何か問題でも?とアブーに尋ねると、しばらく考えたあと「フライホイールにM2のボルトの穴は開かないんじゃないか?」と言う。ハッとして考えなおすと、確かに厚みのある鋼材にM2の穴を貫通しようとすると、剪断応力でドリルが破壊しそうだ。するとアブーが何やら思いついたように棚の上にある椅子の天板用の板を手にとった。そして言った一言が、「やっぱり木材を使うのはどうだろう?」 よさげな木材を発見した そうか、ここで木材に戻るのか。さらに、「どうせなら動力軸のベアリングを支える支柱やその他の部材も全部木材で作ってしまえばいい。知り合いの会社のCNCルーターで切断できるから。」と言う。ガーナーでCNCルーターを使うとは!デジタルファブリケーションの潮流はすごいなぁと感慨深い瞬間でもあった。このCNCルーターの会社については別の投稿で述べることになると思う。 確かに今必要なのはプロトタイプを作ることであるし、さらにCNCを使えるなら木材を使ったほうが良い。それだと設計変更が必要になるね、と言われ、正直「また設計からかぁ」と思ったが仕方がない。再設計して図面を書きなおすことにする。 気を取り直して木材版プロトタイプの再設計を行う。毎日ライノで設計している今日この頃、図面を描く速度はかなり速くなってきた。クリアランスの減少、ベアリングの径の統一、支柱にベルト調整用のスロットを開ける、などアブーからのアドバイスを受けた再設計図面は、CNCルーターでの出力を考えて2D形式のdxfで書き出した。ちなみにエドワードはライノにとても興味を示しており、AutoCADよりライノの方がいいのかなぁと独り言を言っては上級生に「お前はAutoCADで良し」といった風に諌められている。 自分がPCで設計を行なっている後ろでは生徒たちがラボの大掃除の続きを行なっている。全部の棚をひっくり返した部屋は何ともすさまじい光景である。今日はエマニュエル先生もラボに張り付いて指示を飛ばしており、生徒たちは少し緊張した面持ちで真剣に作業に取り組んでいる。先生に厳しく指示を受けるというこの光景は大学では見られない、やはり高校なんだなぁという思いを新たにした。 14時を回った頃だったか、電気がやっと復旧した。こちらも設計が終わったので掃除の手伝いをしようとするが、今日の作業は備品の整理なのでいまいち要領を得ない。 手持ち無沙汰にしているとご飯食べてきなよといわれたので、昼食をとるために、またファンティ語の教材を得るべく本屋を目指して学校を出る。 今日はトロトロに乗って町に出て見ることにする。トロトロは乗合タクシーで、料金は30ペソ。タクシーの10分の1である。マーケットサークルに近づいたのでトロトロを降り、書店を探す。2点ほど回ったが、あまり良さ気な教材は得られず、結局ファンティ語の会話例文集を購入した。 食堂に入って遅い昼食をとりながら会話帳に目を通すと、なんか例文が変だ。 「268. John is not good at reading. – John mmbo noho mbodzen mo akenkan mu.」ジョンは読むのが下手 「270. Your hand writing is very poor. – … Continue reading
ファブラボ大掃除
今日は仕上がった図面をもとに材料を買い出しに行くことを計画している。 部品図をプリントアウトするためのプリンタはICTラボの中にあるそうなので連れて行ってもらう。 プリンタを使っていると子供が自分にも使わせてくれという。スティーブンに尋ねると、生徒は使えないとのこと。インクも貴重なのだろうか。 図面を持ってファブラボに戻るとなにやら机や椅子をひっくり返している。どうやら今日は年に2回ある大掃除の日なのだそうだ。自分のプロジェクトも彼らの助けなしには達成できないし、ファブラボを使わせていただいている身としても大掃除を手伝うことにする。 この大掃除で机の配置が結構変わった。部屋の入り口から3分の2くらいの位置までPC机が並べられているが、個人的には奥に押し込められているレーザーやモデラ、電子工作机をもっと余裕持って配置すればいいのにと思うところではある。 みんなで落花生を食べながら休憩 しかしガーナ人は陽気である。掃除もおしゃべりをしながらなので楽しそうだ。ファンティ語の会話についていけずにいると、 いま、キャプテン・プラネットというアニメのネタで盛り上がっていたと教えてくれた。先生や上級生は知っているが、若い子は知らないからついてこれないんだ、とのこと。自分より下の世代は知らないアニメというと赤ずきんチャチャとか魔方陣グルグルみたいなものか。どこの国でもTV番組でジェネレーションギャップを測るのはあるものですね。 掃除をしているとFabLab all over the worldと書かれたFabLabの広報用のようなシートが出てきた。ガーナで印刷したのかどうか定かではないが、こういう広報活動がMITってうまいなぁと感心した。 FabLab all over the worldを広げて 綺麗になったファブラボで、明日から作業を再開しよう。
初めての日曜日
昨日遅くまで作業をしていたせいか、多少疲労感の残る目覚め。 ラボを訪ねると、鍵がかかっている。アブーから着信があり、 彼はいま洗濯物を洗ってるところだとのこと。わざわざ鍵を開けるためだけに来てもらうのも悪いので、今日は大丈夫だ、もしラボに来るなら教えてと伝える。 そうだ、日曜日は休むべきだ。ということでタコラディの町へ繰り出す。地元の人は町の中心部をタウンと呼んでいる。シティじゃないのがポイント。高い建物も存在しない、まさにタウン。 TTIからタコラディ市内にでると、幹線道路が3本走っている。真ん中のLiberation Rd.を南に歩いて行くとマーケットサークルにたどり着くことを学んだ。 しかし協力隊も入っておらず、全く外国人の気配がしないタコラディ。単身で乗り込んでいる身としては寂しさを感じることもあるが、一たび町中に出ると中国人、中国人と言って騒がれるので寂しくはない。 ぶらぶら歩いていると女の人に腕をつかまれた。中国人?と聞かれたので日本人と答える。あなたまだ結婚してないでしょ、結婚して日本に連れて行ってくれと頼まれた。初めてのプロポーズに苦笑いしつつ「オーケー」と情けない返事を返す。こういうとき何か気の利いた返し方はないのだろうか。 朝ごはんをまだ食べていなかったのでローカルフードの食堂を探す。You 84のスーパーの2Fはこじゃれたレストランになっているのでここでも食べられるが、せっかくの滞在なので地元の食事を楽しみたいところ。 そうこうしていると食堂を発見。店の女の子がフフやバンクーを売っているのが見える。鍋の中のスープはひたすら茶色い。よく考えるとこの茶色い色素ってスパイスの色なのだろうか。ターメリックとか? バンクーは昨日食べたのでライスとチキンを注文する。ライスの上にケチャップで和えたスパゲッティをのせて、その上にスープの上澄みの部分をソースとしてかけてくれるのが現地流。 ご飯にスパゲッティかけるのが面白い。関西ではお好み焼きと御飯を一緒に食べるのと一緒か 席は埋まっているので、体格のいいお兄さんと相席した。運悪くスピーカーの目の前に座ってしまい、鼓膜がやぶれんばかりの爆音とともに朝食を食べる。昔デスメタルのライブで鼓膜を痛めた記憶がよみがえった。ガーナの音楽は好きなんだけど、スピーカーの前での食事は一種の苦行である。 さてご飯を済ませると、かねてから習得したいと思っていたファンティ語(現地語)の教材を購入すべく本屋を探す。耳の奥ではまだガーニアンミュージックが響いている。歩いていると看板を発見、いくつか本屋はあるみたいだ。しかし店の前に立っている少年に尋ねると今日は日曜日なので閉店しているとのこと。平日にまた来よう。 次はトシコさんに聞いたいくつかのお店を探してみようと散策を続ける。タコラディはパイナップルが美味しいと聞いていたが、道端でパイナップルを切って売っているおばさんを発見。一つ50ペソは安い。 とてもフレッシュです パイナップルをほおばっていると、道の向こう側から大声で「カガワ、カガワ!(ガの位置にアクセント)」と呼ばれて吹き出してしまった。彼らにとって日本人とはマンUの香川なのか、と感慨にふけっていると、腰に下げた時計は何かと聞かれた。ガーナに来る前に勧められてつけているベープのことだが、これ時計に見えるんだ。 さて、次はベーカリー(パームベーカリー)を探してみようと散策を続ける。ハーバー行きのシェアタクシーのステーションの近くにあるそうだが、場所がわからない。ロンリープラネットとにらめっこをしていると、中学生くらいの子供たちに声をかけられた。名前はアーベイトとデニスという。どこに行くの?と聞かれたのでベーカリーと答えると、連れて行ってくれるという。 到着したのは普通のブース式のパン屋さん。教えてもらった店はたぶんここじゃないけど、パンを1セディだけ売ってもらった。 お昼も近くなったのでそろそろ帰ろうと思う。2人とは電話番号を交換した。バングラデシュでも子供たちが電話番号を教えてというのはよくあることである。 STCのバスステーションの近くに向かうと、North Seaというレストランを発見。ここも教えてもらったお店のうちの一つである。さっき朝ごはんを食べたばっかりだが、調査がてら店の中へ。なかなか綺麗な内装である。カウンターにはウィスキーやワインなどの酒瓶が所狭しと並んでおり、酒好きの友達と飲みに来てみたいなと思った。 飲み友がいないのがつらい ここでは軽くハンバーガーとオレンジジュースを頼むだけに留める。 少し休憩したあとTTIに戻った。タクシーに乗るとだいたい4セディとられるが、何も言わずに3セディ渡すと大丈夫だった。やっぱり現地価格は3セディなんだ。 TTIに戻るとエマニュエル先生が昼ごはんに誘ってくれる。さっき食べたばっかりだが、お誘いなのでとお家へ向かう。2人の息子たちと奥さんのジュリーを紹介してもらった。上のお姉さんは結婚してアクラに住んでいるそうだ。 お昼ご飯をごちそうになり(朝ごはんとほとんど同じメニューだった(笑))、ソファーに腰掛けてエマニュエル先生と話す。ところで専門は何?と聞かれたので簡潔に設計支援システムですと答える。自身の 専攻である航空宇宙工学から適正技術の設計支援という現在のテーマへの変遷を話すのはなかなか難しいことである。学部時代は熱流体をやっていて、ロケットエンジンも設計しましたというとウケがいい。(確かに学部の授業ではロケットエンジンの構造及び設計という授業が一番楽しかった)。そこから現在の研究テーマに移るわけであるが、発展途上国のニーズに適応するようなプロダクトの開発をいかにして工学的に支援できるかに興味があり、このような実践活動を通じて知見を得たいのだと話すと納得していただいたご様子。 君の設計図面を見たよ、とエマニュエル先生。廃棄物処理問題を解決するためのこのプロダクトは良い着眼点だ、とおっしゃっていただいた。このプロジェクトは他の学科も巻き込んでTTIにおける統合的なプロジェクトとして取り組む価値があるともおっしゃっていただいた。かねてよりエマニュエル先生のお考えは聞いていたが、このようなものだ。講義で理論を学ぶだけではなく、プロジェクトに即してハンズオンスキルを身に付けることが必要である。そして大事なことは学科を横断したプロジェクトを行うこと。ファブラボに通う電子科だけでなく、TTIには機械、溶接、冷凍・空調設備、建築などの学科が存在する。そのような学生の知恵を結集してプロジェクトを行う教育プログラムを目標としているそうだ。その起爆剤としてファブラボを活用していきたいとエマニュエル先生が熱弁を奮う姿に、自分もまた共感し、再び奮起するのであった。自分のプロダクトの開発には溶接や機械加工が必要であるし、生徒たちにとってよい教材となってくれることを願う。 さて、話は多岐にわたった。3DプリンタのRepRapを日本のファブラボでも製作したりしているが、いずれオリジナルの3Dプリンタを開発してTTIに持ってきたいというと、 大喜びだ。また、自分がAVRのプログラミングやMODELAの使い方を生徒に教えているのを見て、テーマはなんでもいいから1日か2日のワークショップを開いて欲しいという。それはこちらとしても光栄な機会だ。iOSやAndroidなどのモバイル開発、Ruby on Railsを使ったWebデータベースアプリケーションの開発など教えたいことはたくさんあるが、おそらくArduinoの使い方を教えるのが効果が大きいように思われる。というのも彼らはハードウェアの製作には熟知しており、ソフトウェアの基礎もわかっている。しかしハードウェアをソフトウェアで制御するというところのリンクが不十分な印象があるからだ。XBeeも持ってきたことだし、無線通信を試してみても面白そうだ。 そういえば今年は去年は時間がなくて出せなかったJICAへの要請を出すと言っていた。この学校は実践に即した画期的な教育プログラムを提供できる可能性を秘めていると思うので、うまくJICAの支援が入ればもっと面白くなると思う。もしそうなったときはアドバイザーとして参加できないだろうか、と思いを巡らせるのであった。