プロジェクトのてこ入れ

今日はアブーに会うことができるのか。そしてAudioCraftでCNCを動かせるか。

滞在も2週間を経過した。そろそろプロジェクトをスムーズに動かしたいところだ。

期待と不安が錯綜するなか、ラボへ向かう。

ラボへ着くとスティーブンが早速話があるという。もちろん自分のプロジェクトについてだ。

確認すると、先週の土曜日以降、メインプロジェクトは完全にストップしている状態だ。プロトタイプの設計は終わっているが、AudioCraftでの切削加工はアブーがいない現状では進めることができない。

そんな状況に置かれたこのプロジェクトをどう進めていくか、話し合いたいと言ってきてくれた。まずはアブーがどこにいるのか教えてくれないかというと、アブーとは連絡がつかない状態で、タコラディにいるのかアクラにいるのかもわからないという。

今はプロトタイプを一刻も早く完成させるのが先決だが、アブーの所在がわからない現状では打つ手立てがない。分離器が完成した後の粉砕機の話を並行で進める提案も考えられたが、タスクが分散するとプロジェクトの収拾がつかなくなるので辛抱した。スティーブンがアブーにもう一度確認をとってくれるという。

しばらくするとスティーブンが戻ってきて、アブーと連絡がとれたという。今タコラディ行きのバスに乗ったそうだ。だとすれば今日中にはタコラディに戻ってくるだろう。

帰りは当初日曜日の予定だったので喜ぶところではないが、一応の朗報である。今日中にAudioCraftに行ける可能性もある。

スティーブンからもう一つ提案があるという。このプロジェクトのファンディングは基本的に自分が行うつもりだが、FabLabや学生を巻き込んでいることからも、学校側にもファンディングのお願いをしようということだった。これについてはエマニュエル先生から校長先生の方に話をつけてくれるそうで、その際にはプロジェクトの内容と、経費がどれだけかかるのかを示す必要があるということだ。つまり、プロポーザルを書くことになった。学校側からファイナンス面でのサポートを受けられるのはこちらとしても有難い。

さて、スティーブンとはその2点を確認して作業に戻った。メインプロジェクトについて今動けない状態なので、サブプロジェクトというか、他にできることを進める。

今日はCNCのステッピングモータを動かしてみる。昨日思いついたTA7291Pを2つ使った回路を組んで、Arduinoを使って電源を投入する。すると、動いた!

CNCのステッピングモータが動いた!

これはうれしい。マイコンを使っておらず、ドライバICがないこのラボではステッピングモータを動かしたのは初めてではないだろうか。中華9Vスイッチング電源も役に立った、1000Hzだと若干トルクが弱く、脱調気味であるが、500Hzだと安定している。400パルスで1回転するので、この場合の1秒間の回転数は1.2回転だ。この速度は少し遅い。

調べてみると、Arduinoのdelay関数にはdelay_loop1のような刻みを細かく指定できる関数があるようだ。これを使うともう少し好ましい周波数を探ることができそうだ。とりあえずはこれで良しとする。

モーターの動作確認はできたので、次はG-CODEからパルスを生成するソフトウェア環境を構築する。ソフトウェアにはLinuxCNCを使うため、インストール方法を探っていると、LinuxCNCの使用にはリアルタイムカーネルが必要だそうだ。調べてみると自分でビルドするのは大変だが、あらかじめLinuxCNCが入ったUbuntuパッケージが提供されていることを知る。ラボのWindows端末の一つにこのUbuntuを入れてデュアルブートで使うことにしよう。

しかしLinuxCNCが入ったUbuntuは700MB近くある。この容量ではモデムでのダウンロードは不可能だ。ボーダフォンで行うしかない。ということでLinuxCNCについては後回しにした。

昨日設計したMOSFETモジュールをダグラスに手伝ってもらいながら切削する。cam.pyの使い方は全く未知の世界だ。EAGLEからCAM Processorを起動し、デバイスをGERBER RS274Xにしてジョブを実行するとcmpファイルが生成されるが、これをcam.pyから読み込むのだということを知った。道理で昨日brdファイルが読み込めなかったわけだ。

cam.pyで編集するダグラス

MODELAの裏技らしきものも教えてもらった。言葉では説明しにくいのだが、切削途中にVIEWボタンを押してプロッタを待機位置に移動すると、前回送信されていたデータがMODELAの誤作動を招く。このときVIEWボタンが点滅しているが、UPボタンを長押しするとVIEWボタンの点滅が消えて正常状態に復帰する。

原理が全くもって不明だが、これで治るとは一種のマジックだ。

さて、次はプロジェクトのプロポーザルを作ってしまおう。

Wordのテンプレートなど使ったことなかったが、見た目を綺麗にしてみようと思い使ってみた。

プロジェクトのプロポーザル

記載すべき事項は概要、経費、スケジュール、図面などであるが、最も重要なのは必要な予算である。大体こんな感じかな、とできたものをスティーブンに見せる。するとスティーブンからアドバイスがあるという。学校側がかかるコストをすべて負担してくれることはまずない。半分もいかないだろう、おそらく4分の1といったところではないだろうか。彼らが見るのは中身よりも総額である。つまりは、常識的な範囲で多少総額を多めになるようにしておいたほうが良いだろうとのことだ。まあ、どこの誰でも考えることではある。

プロポーザルを書き終わるとHardware centerにプリントアウトに向かう。エマニュエル先生もいらっしゃったので、完成したプロポーザルを確認してもらった。学校側には明日話をしてもらえるようだ。

さて、事務的な作業が終わったので開発に戻る。アブーは結局今日は来ないだろう。ということで、午前中に検討していたCNCソフトウェアをダウンロードするためにボーダフォンに行く事にする。データのダウンロードのために町まで出ないといけないのは一苦労だ。

TTIを出ようとすると、遅くならないようにと守衛さんに言われたので1時間か1時間半で帰ります、と伝えてトロトロに乗り込む。 今日のトロトロにはバックミラーにポムポムプリンがぶら下がっていたのが印象的だった。

久方ぶりのポムポムプリン

ボーダフォンに着くと、1時間の券を買って早速LinuxCNCをダウンロードする。ダウンロードの必要時間はちょうど1時間だ。間に合うのだろうか、と思い30分くらい経ったところで30分延長したいと受付に申し出る。延長の券を売ってくれたが、これがどうにも機能しない。店の人が何回か試したが、駄目である。1時間分のセッションが終わったらもう一度ログインし直してくれと言われたので、ダウンロードが進行中なんですというと、そういうことか、という様子。まあ多分時間内に終わるから大丈夫だよ、と言って受付に戻っていった。結果的にはぎりぎりで間に合ったのだが。

ボーダフォンを出ると、辺りは真っ暗だ。このボーダフォンが位置するCape coast Rd.はものすごい速度で車が飛ばしているので、横断するのには注意が必要だ。ダッカのMohakhaliを貫く通りも横断には一苦労だったが、こっちのほうは交差点がない直線なのでトップスピードは格段に上だ。大型のトレーラーがすごい速度で横を通り過ぎ去っていくのには緊張する。

晩御飯は近くのレストランに入って食べた。

フフと魚のスープ

店を出た瞬間、溝にはまって肝を冷やした。小さい溝だったが、やはり気をつけないといけない。

トロトロに乗るべくLiberation Rd.に向かうが、夜とあって道がわからない。そういえば夜にサークル周辺を歩いたのは初めてだ。やけに真っ暗なことに気づき、たぶん停電しているんだろうなと思う。そうこうしているうちに、何とかLiberation Rd.のトロトロ下車地点にたどり着く。ここで問題なのが、トロトロは降車場所は分かるが乗車場所がわからないということ。そもそもこの時間に北行きのトロトロがあるのだろうか、と思っているとサークル行きのトロトロが到着し、客が降りている。全員が下車し終わるとすぐに別の客が乗っているので、もしや折り返し運転するのではと思って運転手にTTI行く?と聞いてみると乗れという。なるほど、この路線のトロトロは全く休憩をとらずにシャトル輸送しているのか。トロトロの仕組みが分かったのは収穫だ。

TTIの門を通ると、守衛さんがベンチで横になった寝ていた。横を通り過ぎようとすると、今帰ったんだ、と声をかけられる。はい、というと1時間で帰るって言ってたじゃないかと言う。もしかして門限があって、扉を開けて待っててくれたのかな?すいません、トロトロを捕まえられなくて、と言うと、そうだったのかと言う。おやすみなさいと告げて家へ向かう。

家へ向かう道は完全に真っ暗だ。なんだろう、何やらエンジンの音がする。回転数は高くないが音が大きくなることから近づいてくるようだ。しかし姿が全く見えない、車か?まずい、このままだとぶつかる、と思わず手に握っていたLEDライトでアピールする。10mまで近づいた時に2人乗りの原付だと分かった。ライトを点けていないので、あやうくぶつかるところだったが、万事休す。映画で言うと戦闘機に向かって撃たれたミサイルが近づいてくるような感覚だった。

千石電商で買った100円のライトが役に立った。夜の出歩きには懐中電灯は持っていたほうがいい。

家に戻るとご近所さんが外に出ておしゃべりをしていた。家の中よりも外のほうが明るい。”Ghana, always light off” だそうだ。

05. September 2012
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