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ミスコミュニケーション

今日はパーツの穴あけなどを行う予定だが、準備ができるまでにCNCの作業をすることにした。昨日少し早く帰ったこともあり、作業したくてうずうずしていたのだ。 ステッピングモータの回路をブレッドボードに組む。コードもX-Yモータを動かせるように改良した。 X-Yモータを動かす回路 ステッピングモータを回すが、うまく回らずに振動している。なぜだろう。 パルスの信号に雑音が入っていることを疑い、パルスの電圧が知りたいと思っていると、それならオシロスコープを使えばいいじゃないかと言われる。 そうだ、ここにはオシロスコープが置いてあるのだ。素晴らしい。 オシロスコープでパルスの電圧を測定 オシロスコープでパルスの波形を見ると、パラレルポートからの平常時の平均電圧が0.6V以上出ていることがわかった。これがマイコン側のデジタル入力の誤作動を招いているようだ。平常時の電圧はGNDに落としたいので、MOSFETを途中段にかませてスイッチングを行うことにした。ただし、注意しないといけないのがパルス電圧の最大値だ。オシロスコープで見ると、最大でパルス電圧は60V以上出ている。ここでMOSFETの2SK2545のデータシートを見ると、ゲート電圧の許容値は4Vとある。これに60Vをかけるのはまずい。 60Vのパルスを5Vでカットオフするためにはどうしようと考える。こういうMOSFETの使い方は初めてだ。普通はレベルコンバータ使うのかなと思ってデータシートを見ると、5V-3.3Vの変換が主な用途のようだ。いや、5Vに降圧するDC-DCコンバータを使えばいいんじゃないか、と思っていると、三端子レギュレータでいいじゃないか、とアブーが7805を取り出してきた。そうだ、それでいこう。 早速回路を組んでいると、スティーブンがラボのドアから顔を出して何か言っている。 「機械科の工房、もう閉まっちゃうよ」 一瞬沈黙した。あれ、工房が使える様になったら教えてくれると思っていたのだが。 慌ててアブーに確認する。朝は生徒がいるから工房を使えないと思っていた。こっちは使えるようになるまでCNCの作業をして待ってたつもりだったんだけど、と。 アブーも、そうなの?それは知らなかった。CNCをやり始めたから今日はこれやるのかなと思って手伝ってたよ、という。 これには少し焦り、次の様に伝えた。いや、優先順位は分離器の方が先だ。あっちをまずやろう、と。 じゃあ急いで機械科に行かないとね、もう閉まってしまうかもしれないし、となり、CNCの作業を中断する。時間は12時を回ったところだ。 これはとんだミスコミュニケーションだ。確かに今まで少しスティーブンに頼りすぎていたかもしれない。このプロジェクトは自分が責任を持って遂行しなければならない、という意識が薄くなっていたように思う。 段取りが二転三転するなどうまくいかないことは多いが、こんなものだからとあきらめてはいけない。自分が変えられるところはどんどん主張していかないとダメだ。この一件は大きな教訓になった。 さて、昨日のアルミ板を持って機械科に移動だ。昨日加工した2mmのエンドミルも持っていく。機械科に到着すると、昨日の先生にボール盤を貸して下さいとお願いをする。 この2mmのエンドミルはドリルチャックにはまるでしょうかと尋ねると、それだと弱そうだからこのドリルビットを使いなさいと2.5mmのビットを貸してくれた。  ボール盤で穴あけ さて、並行して別パーツの切断およびケガキ作業を進める。ドリルの穴あけと切断は出来たが、支柱の穴あけは工房の閉館までに間に合わなかった。この間たったの2時間だったが、工房とラボを行ったり来たり、まさに駆け抜けた2時間であった。 ラボに戻ると、手作業でのアルミ板の切断だ。アイザックとダニエルがリズムよくアルミ板を切断する。  アルミ板を切断する 100枚くらい切り終わったところで、疲れたでしょうと言って交代した。 切り粉まみれになって切り続ける  ラボを訪れた女性(おそらく先生)が、ひたすら金属板を切っている自分たちを見て、ええと、ここはベーシックワークショップ(一般作業工房)だったの?という。何やらアブーをからかっているようだ。アブーが少し間をおいてから、マダム、ここはファブラボですよと答える。先生らしき女性が、だってファブラボってもっと電子工作とかやるところでしょ、とからかうと、アブーが再び We’re FabLab. We make almost anything. と言い放った。へえ、という感じで肩をすくめて先生は去っていった。そうだ。ファブラボはなんでも作る場所なのだ。 そうこうしていると、160枚のパーツを切り出すことができた。かなり汗をかいた。ずっとノコギリを握っていたので、しびれて手が握れない。 少し疲れたので宿舎に戻り、休憩することにした。チョコパイを食べて手にとって食べていると違和感があることに気づいた。手に何かついている感触がある。ふと手元を見ると、アリが指にまとわりついている。え、なんで?と思ってチョコパイを見ると、アリだらけのチョコパイを食べていたことに気づいた。アリが出たり入ったり、もはや巣みたいになっている。何十匹アリを食べたのか知らないが、明日起きたらスパイダーマンになってたり、あるいはザムザみたいに変身していないことを望む。開封した食べ物は缶に入れるなどの処置が必要だということを学んだ。アリの多さは気になっていたのだが。 さて、ラボに戻るとCNCの作業の続きだ。三端子レギュレータでパルス電圧を5Vに降圧してMOSFETをスイッチングし、MOSFETの出力をマイコンに入力するように変更した。 パラレルポートからパルスを送ると、動いている。しかし動作方向が逆だ。何でだろう。 もう一度オシロを見てみよう、と三端子レギュレータからの電圧を観測すると常に5V出ている。ああ、やってしまったことに気づく。三端子レギュレータは常に出力電圧を一定にするものだった。今やるべきことは5Vで電圧をカットオフしたいだけで、平常時の電圧を昇圧したいわけではない。 こういうとき何を使うんだっけ、と調べていると、そうだ定電圧ダイオードってあったな、あれが使えるんじゃないっけと思いつく。定電圧ダイオードは別名ツェナーダイオードという。どうやらこれが使えそうだ。 … Continue reading

08. September 2012
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This is engineering.

さて、今日はついに本格的な加工に入ることができる。 ラボに着くと、早速スティーブンがケガキ針を借りてきてくれた。まずは切断する部品のマーキングだ。切断する部品の共有をすべくみんなで集まる。こういう部品が必要だ、とプリントアウトした図面を見せ、 定規で位置を測ってケガキ針で印をつける。 ここでアブーが言った。少し寸法が大き過ぎないだろうか?もう少し高さを短くすれば、無駄が少ない。確かにもう少し小さくてもよさそうだ。この変更によりローターの円周が減少するので、80個の磁極が配置できるかどうか検証しなければならない。少し待ってて、とノートに手計算を始める。 ここでアブーがちょっと来て、という。スティーブンが何か思いついたようだ。アルミ板は厚みがあるので、今まで両側に2枚ずつ設けていた板を、1枚ずつにすれば材料が削減できるという提案だ。なるほど、アルミ板は剛性があるのでその改良はありだなと思う。 するとパーツはL字型になる。待てよ、そうすると対照形にすれば長方形のブロック1枚から2枚のパーツが得られるはずだ。そう提案するとアブーが、いや、その加工は不可能だ。ノコギリは一方向にしか入らないので、加工中に90度進路変更するのは無理だ、と言う。そうだそうだ、すぐにツールパスが頭に浮かぶのはさすが機械屋だなぁ、見習わなければ。 スティーブンも同じ疑問を持ったようで、なんでそうしないんだ、と同じ事を言う。だからプラズマやレーザーで切るんじゃないんだって、とアブーがまた厚紙をカッターで切って実演を始めた。口で納得させられなければ、厚紙を使う。それがここの作法なんだな、と興味深かった。 さて、設計変更を了承し、新たな部品の寸法が明らかになった。さて、あとはケガキ作業だ。 定規でマークした位置をつないで直線を引いていく。 けがき作業を行う筆者 こんな感じの直線を引いていく   みんなでけがく ケガキが完了した。広い板をけがくのは割とエネルギーの要る作業だ。 さて、 次はこれを機械科に持っていく。機械科の工房(メカニカル・ワークショップ)にアルミ板を持って移動した。 機械科の先生方には昨日の午前中に挨拶とプロジェクト説明に伺っていたので話が早い。早速機械を準備してくれた。 金属の切断機。大きい。 切断機はとても大きかった。まさに工場だな、と思っていると、電源が入り、動作チェックが始まった。 ここでどのように切るのかを先生に伝える。すると何やら先生の顔が曇った。 アルミ板の端っこに、不要な部分として切り落とすマージンを設けていたのだが、これはマシンの刻み幅より小さくて切れないという。ケガキ方向を変えてこい、と先生が言っているようだ。 またケガキ作業を行うのは体力的にも時間的にも無理だ。本当に無理なのか?そう思って、そのマージンは無視してスパン方向に60mm刻みで切ってもらうのは駄目ですか?と言ってみる。つまりはケガキを無視する作戦だ。 そうすると、ケガキを無視するならそれでもいいという事になった。実はこの機械は最初に定めた切断長を自動で送る機構がついており、長手方向に同じ長さで切断する分にはケガキは実質的に不要だったことになる。なんということだ。 ここでも自分が言い出さなかったらまたケガキ作業を行うところだった。やはり、気を抜いてはならない。どうすれば効率的にできるかを常に考えるのだ。 スティーブンがアイザックは機械科なんだから指摘するべきだよと言い、アイザックは照れ笑いを浮かべている。 さて、同意がとれたので機械を動かし始める。金属板がいとも簡単に切断され、床に落とされていく。金属の切れる音はなんとも爽快だ。 この切断機のコントロールは足もとのフットスイッチで行う。機械科所属のアイザックがこの作業を買ってでた。 アルミ板の切断を行うアイザック 切りだされたアルミ板 なんとも簡単に切断を行うことが出来た。 つぎは、このパーツをL字型に切断する作業だ。ケガキ位置が変わったので、もう一度ケガキ作業が必要だが、これはまたしんどい作業になりそうだ。すると機械科の先生が、これ使うといいよとゲージがついたケガキ針を貸してくれた。おお、ナイス。これで作業が効率化する。というか、これは書類なしでも貸してくれるのね…。 さて、ラボに戻って新しいケガキ針を使ってケガキ作業を行う。これは早い。機械科のプライドが芽生えたのか、この作業もアイザックが先陣を切ってやりはじめた。  新しいケガキ針で作業の効率化 そして並行してL字型に切り落とす作業を進める。バイスを借りてきてアルミ板を固定し、ノコギリで切り落とす。 アルミ板をワイルドに切断する 切り出したパーツを見てアブーがちょっと待って、という。切り落とした後のパーツにはドリルで穴を開ける作業が必要だが、この状態だとドリルで穴を開けるのが難しい、という。そこでまた機械科に行ってドリルの穴を開けてから切り落とそうという事になった。 そしてその穴あけに使うドリルの話になる。ドリルビットには2mmを使うことを想定していたが、ラボには2mmはあったっけ?と棚を探す。するとモデラ用の2mmを発見した。だが、このミルは切削用なので先端が尖っておらず、穴あけには不向きだ。グラインダでエッジを落としてドリル用に改造しよう、とアブーが提案した。 切削用ミルのエッジを落としてドリル用に改造する さて、加工における問題は解決した。しかし機械科は昼過ぎに閉まってしまうので、急いでケガキを終えて機械科に向かう。ファブラボメンバー総出でアルミ板を手に携えて行進だ。 機械科に着くと、ちょうどドアから先生が出てきたところだった。スティーブンが、加工したいんですけど、と言うと軽く首を降っている。あちゃー、どうやら今ちょうど閉まったところのようだ。 … Continue reading

07. September 2012
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アブーの帰還

朝扉を叩く音がする。開けてみると、アブーだ。ついに帰ってきた。 久しぶりの再会を果たしたのも束の間、状況を報告する。今日AudioCraftに行けそうか、と尋ねると先方から送られてきたメールを見せてくれた。 The spindle is off. There’s so much to do. どうやらマシントラブルがあったようだ。アブーはこれからAudioCraftに向かって修理して来るという。1時間かそこらで戻ってくるというが、無事に治ればよいのだが。 今日の朝食はククだった。前回よりも飲みやすい。クスをセットで食べるのがアザッソ家の方式らしい。エマニュエル先生は甘いクスはあまり好みではないようだ。 今日はまずLinuxCNCが同梱されたUbuntuをインストールしたい。空のCDある?とダグラスに聞くと、買いに行くから朝ごはん食べるまで待ってて、と言われる。しばらくしてTTIを後にし、お店へ向かう。 TTI最寄りの本屋、A-Z bookshop この店は、こないだファンティ語のテキストを探していたときに寄った店だ。 無事にCD-Rを購入。 ラボに戻り、ブート用CDを作成してUbuntuをインストールした。 起動してみると、LinuxCNCもインストールされている。 また、並行してスティーブンと一緒にエマニュエル先生に昨日のプロポーザルを持っていく。無事に受理され、校長先生に提出してくれるそうだ。 さて、作業をしているとアブーが帰ってきた。 どうだった?と聞くと、かなり悪い状況だとの返事。スピンドルモータを修理していたら、回路をショートさせてしまったようで動かなくなったとのこと。 想定はしていたが、難しい展開だ。準備していたCNCでの加工はできなくなった。 急遽、対応策をみんなで話し合うことに。話し合いの結果、木材を使わずに金属を使うことになった。ただ、フライホイールの利用を想定していたローターの車輪には、先と変わらず椅子の天板の椅子を使うことに。 どうやってマグネットを支持するか、という点についてはアブーが知恵をだしてくれた。このようなパーツを作ればいいと言って厚紙を切り始めるアブー。設計上のコンセンサスを取る上で、この紙を使った方法は非常に有効だ。より早く、より簡単にイメージを共有することができる。 厚紙を切って部品を造り立体のイメージを共有する 方針が決まったので、あとは部品の切り出しだ。使える部品を洗い出そう、と言って材料をかき集める。大きなアルミ板と、鉄製のシャフト、あとベアリングが集まった。 鉄のシャフトとベアリングを集める ファブラボに置いてあったアルミ板を使う さて、 部品の切り出しには図面が必要だ。切り出す図面をプリントアウトしてくれないかな、その前に設計の変更が必要かな?と言われる。 いや、再設計は断じてダメだ。寸法の変更はあるとしても、これ以上CADの書き直しで無駄な時間をとりたくない。木製のプロトタイプの寸法を使えばいいと思う、それをプリントアウトするから待っててくれといってCADを開くが、もともと寸法を入れるつもりがなかったので、ライノの3dmファイルには寸法が表示されていない。急いで図面に寸法を入れ、またマグネット保持用の鉄パーツを設計した。そしてICTラボでプリントアウトを行う。 ところで、ICTラボでプリントをしているときにふと気づく。はて、簡単な2D図面でしかもマニュアル加工なのになんでCAD図面が必要なんだ。手書きのスケッチでもいいじゃないか、と。CADで作業していた30分が無駄のように感じられてテンションが下がったが、まあ仕方ない。どうすれば効率的に進めることができるか、これまで以上に注意を払っていこう。 さて図面も上がったので、実際の加工に移る。アルミ板の加工には部品図のケガキ(マーキング)が必要だ。ケガキ針ある?と尋ねると、ファブラボには置いておらず、機械科にあるとのこと。スティーブンがケガキ針と、あと直角定規を機械科から借りてくると言ってラボから出ていった、 しばらくするとスティーブンがPCを携えてラボに戻ってきた。借りるもののリストをメモとして作っていきたいので、もう一度借用品を教えてくれという。 メモを作成するスティーブン いいよと伝えるが、はて、必要なのはケガキ針(スクレーパ)と直角定規(トライスクエア)の2つのみだ。メモをとるまでもない。しかもPCを使っているのを見て、さっき設計図をプリントしていた時のことが脳裏をよぎる。「なんでパソコン取り出してるんだ、手書きのメモでいいじゃないか」すかさずスティーブンに「手書きのメモでいいんじゃないの?」と言ってみる。スティーブンはうなずきながら、こう説明してくれた。機械科に行ってきたら、エマニュエル先生名義での借用を請求する書類を持って来なさいと言われた。なので今から書類を作ってエマニュエル先生からサインを貰い、機械科に提出するのだと。その言葉には驚きを隠せなかった。 「たかがケガキ針と直角定規を借りるのになんで書類が必要なんだ」 いちいち上司の許可が要るとは外務省のツイッターじゃあるまいしとは思ったが、仕方がない。ここが国立の教育機関であることを忘れてはいけない。ファブラボはオープンな工房だが、TTIではファブラボはその一部だ。ファブラボを一歩出ると、そこは普通の高校である。 スティーブンは書類を仕上げるとエマニュエル先生の元に向かっていった。しばらくして戻ってきたが、機械科はもう閉まっていたので借りるのは明日になるとのこと。 本当にものづくりには時間がかかるものである。 … Continue reading

07. September 2012
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プロジェクトのてこ入れ

今日はアブーに会うことができるのか。そしてAudioCraftでCNCを動かせるか。 滞在も2週間を経過した。そろそろプロジェクトをスムーズに動かしたいところだ。 期待と不安が錯綜するなか、ラボへ向かう。 ラボへ着くとスティーブンが早速話があるという。もちろん自分のプロジェクトについてだ。 確認すると、先週の土曜日以降、メインプロジェクトは完全にストップしている状態だ。プロトタイプの設計は終わっているが、AudioCraftでの切削加工はアブーがいない現状では進めることができない。 そんな状況に置かれたこのプロジェクトをどう進めていくか、話し合いたいと言ってきてくれた。まずはアブーがどこにいるのか教えてくれないかというと、アブーとは連絡がつかない状態で、タコラディにいるのかアクラにいるのかもわからないという。 今はプロトタイプを一刻も早く完成させるのが先決だが、アブーの所在がわからない現状では打つ手立てがない。分離器が完成した後の粉砕機の話を並行で進める提案も考えられたが、タスクが分散するとプロジェクトの収拾がつかなくなるので辛抱した。スティーブンがアブーにもう一度確認をとってくれるという。 しばらくするとスティーブンが戻ってきて、アブーと連絡がとれたという。今タコラディ行きのバスに乗ったそうだ。だとすれば今日中にはタコラディに戻ってくるだろう。 帰りは当初日曜日の予定だったので喜ぶところではないが、一応の朗報である。今日中にAudioCraftに行ける可能性もある。 スティーブンからもう一つ提案があるという。このプロジェクトのファンディングは基本的に自分が行うつもりだが、FabLabや学生を巻き込んでいることからも、学校側にもファンディングのお願いをしようということだった。これについてはエマニュエル先生から校長先生の方に話をつけてくれるそうで、その際にはプロジェクトの内容と、経費がどれだけかかるのかを示す必要があるということだ。つまり、プロポーザルを書くことになった。学校側からファイナンス面でのサポートを受けられるのはこちらとしても有難い。 さて、スティーブンとはその2点を確認して作業に戻った。メインプロジェクトについて今動けない状態なので、サブプロジェクトというか、他にできることを進める。 今日はCNCのステッピングモータを動かしてみる。昨日思いついたTA7291Pを2つ使った回路を組んで、Arduinoを使って電源を投入する。すると、動いた! CNCのステッピングモータが動いた! これはうれしい。マイコンを使っておらず、ドライバICがないこのラボではステッピングモータを動かしたのは初めてではないだろうか。中華9Vスイッチング電源も役に立った、1000Hzだと若干トルクが弱く、脱調気味であるが、500Hzだと安定している。400パルスで1回転するので、この場合の1秒間の回転数は1.2回転だ。この速度は少し遅い。 調べてみると、Arduinoのdelay関数にはdelay_loop1のような刻みを細かく指定できる関数があるようだ。これを使うともう少し好ましい周波数を探ることができそうだ。とりあえずはこれで良しとする。 モーターの動作確認はできたので、次はG-CODEからパルスを生成するソフトウェア環境を構築する。ソフトウェアにはLinuxCNCを使うため、インストール方法を探っていると、LinuxCNCの使用にはリアルタイムカーネルが必要だそうだ。調べてみると自分でビルドするのは大変だが、あらかじめLinuxCNCが入ったUbuntuパッケージが提供されていることを知る。ラボのWindows端末の一つにこのUbuntuを入れてデュアルブートで使うことにしよう。 しかしLinuxCNCが入ったUbuntuは700MB近くある。この容量ではモデムでのダウンロードは不可能だ。ボーダフォンで行うしかない。ということでLinuxCNCについては後回しにした。 昨日設計したMOSFETモジュールをダグラスに手伝ってもらいながら切削する。cam.pyの使い方は全く未知の世界だ。EAGLEからCAM Processorを起動し、デバイスをGERBER RS274Xにしてジョブを実行するとcmpファイルが生成されるが、これをcam.pyから読み込むのだということを知った。道理で昨日brdファイルが読み込めなかったわけだ。 cam.pyで編集するダグラス MODELAの裏技らしきものも教えてもらった。言葉では説明しにくいのだが、切削途中にVIEWボタンを押してプロッタを待機位置に移動すると、前回送信されていたデータがMODELAの誤作動を招く。このときVIEWボタンが点滅しているが、UPボタンを長押しするとVIEWボタンの点滅が消えて正常状態に復帰する。 原理が全くもって不明だが、これで治るとは一種のマジックだ。 さて、次はプロジェクトのプロポーザルを作ってしまおう。 Wordのテンプレートなど使ったことなかったが、見た目を綺麗にしてみようと思い使ってみた。 プロジェクトのプロポーザル 記載すべき事項は概要、経費、スケジュール、図面などであるが、最も重要なのは必要な予算である。大体こんな感じかな、とできたものをスティーブンに見せる。するとスティーブンからアドバイスがあるという。学校側がかかるコストをすべて負担してくれることはまずない。半分もいかないだろう、おそらく4分の1といったところではないだろうか。彼らが見るのは中身よりも総額である。つまりは、常識的な範囲で多少総額を多めになるようにしておいたほうが良いだろうとのことだ。まあ、どこの誰でも考えることではある。 プロポーザルを書き終わるとHardware centerにプリントアウトに向かう。エマニュエル先生もいらっしゃったので、完成したプロポーザルを確認してもらった。学校側には明日話をしてもらえるようだ。 さて、事務的な作業が終わったので開発に戻る。アブーは結局今日は来ないだろう。ということで、午前中に検討していたCNCソフトウェアをダウンロードするためにボーダフォンに行く事にする。データのダウンロードのために町まで出ないといけないのは一苦労だ。 TTIを出ようとすると、遅くならないようにと守衛さんに言われたので1時間か1時間半で帰ります、と伝えてトロトロに乗り込む。 今日のトロトロにはバックミラーにポムポムプリンがぶら下がっていたのが印象的だった。 久方ぶりのポムポムプリン ボーダフォンに着くと、1時間の券を買って早速LinuxCNCをダウンロードする。ダウンロードの必要時間はちょうど1時間だ。間に合うのだろうか、と思い30分くらい経ったところで30分延長したいと受付に申し出る。延長の券を売ってくれたが、これがどうにも機能しない。店の人が何回か試したが、駄目である。1時間分のセッションが終わったらもう一度ログインし直してくれと言われたので、ダウンロードが進行中なんですというと、そういうことか、という様子。まあ多分時間内に終わるから大丈夫だよ、と言って受付に戻っていった。結果的にはぎりぎりで間に合ったのだが。 ボーダフォンを出ると、辺りは真っ暗だ。このボーダフォンが位置するCape coast Rd.はものすごい速度で車が飛ばしているので、横断するのには注意が必要だ。ダッカのMohakhaliを貫く通りも横断には一苦労だったが、こっちのほうは交差点がない直線なのでトップスピードは格段に上だ。大型のトレーラーがすごい速度で横を通り過ぎ去っていくのには緊張する。 晩御飯は近くのレストランに入って食べた。 フフと魚のスープ 店を出た瞬間、溝にはまって肝を冷やした。小さい溝だったが、やはり気をつけないといけない。 … Continue reading

05. September 2012
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あせらずに行こう

事務的な朝の作業を済ませると、ラボに向かってCADの修正を行う。 CNCで切り出す木材のパーツにスロットをつけて、再度dxf形式で書き出す作業だ。 作業をしているとオベッドがやってきた。 この子は鼻歌を唄いながら思ったことをつぶやく可愛い子だ。 いつも絵を描いてるよね、と言われる。確かにこの前オベッドがいるときもモデリングの作業をしていた。 君が絵を書くのが好きなら、僕は歌を唄うのが好きだ、とオベッド。この子はいろんなことに疑問を持つので面白い。 絵がうまいんだね、とオベッド。言っておくが自分の絵心の無さは筋金入りだ。自分は絵が下手だけど、ソフトウェアを使ってるから素早く絵が書けるんだよ、と伝える。自分はソフトウェア使えないや、それになんて速くタイピングできるんだ、自分もいつかそんなに速くタイピングしたいなあと言う。 そしてそのラップトップいいね、とオベッド。ガーナ人はみんなMac book airに興味津々だ。何その薄いPC?アップルのPCなの、と尋ねてくる。HDD入ってないの?とオベッド。薄いHDDが入ってるんだよと伝える。すると家にラップトップが欲しいなあ、それ置いてってよ、と言う。残念ながらそれは無理だ。 するとオベッドがあることに気づいた。なんで日本語使えるのにOSの言語設定を英語にしてるの?と。 これには参った。強いて言えば英語ソフトウェアを使っているときに日本語と英語が画面に入り交じっているのが嫌だからというのが理由だが、うまく説明できない。うやむやにしてごまかす。子供はいろんなことに気づくなあ。 他にも、いつ洗濯してるの?洗濯機、手洗い?家に帰ったら一人で何してるの?御飯食べて寝るだけ?とか疑問に思ったことをひたすら聞いてくる。家に帰っても絵を描いてるの?と言われたときは吹き出した。これは仕事だからやってるんだよと言うと、いつも仕事で忙しんだねと言われた。 Facebookをやってる?と聞かれたのでやってるよと答えると、自分もやってるという。彼のアカウントでログインすると、ymailというのを使っていた。こないだ買った蚊取り線香のパッケージに書かれてた代理店もymailだったな。ガーナのメールサービスなのだろうか。 ログインすると、これ見て、avatar知ってる?という。avatarなら知ってるよというが、なんか違う。Avatar: The Last Airbender(アバター 伝説の少年アン)という番組だそうだ。wikipedia見たら日本でもやってたらしい。その登場人物の解説を事細かくしてくれた。 すると今度はこれがお兄さん、と言ってお兄さんにメッセージを送る。 オベッド:hi お兄さん:what? bad boy 兄弟のやり取りが微笑ましかった。 ところでカメラ持ってないの?と聞かれたのであるよ、と見せると写真をとってくれという。 若干キメ顔のオベッド すると今度はカメラを手に取り、周りの写真を撮り始めた。 作業中のエベネザ 筆者近影 今度はアングルを工夫し始めた 色々と話に付き合っているとモデリングの作業は完了した。次はMOSFETを実装するPCB基板のパターン作成だ。 まずはEAGLEで回路図を書く。 お昼をもう回っているので、お腹がへったとオベッド。お母さんが家にまだ帰ってきてないようで、ここで時間をつぶしているようだ。しばらく遊んでいたが、どうやら時間が来たようで家に帰っていった。 さて、PCBパターンができたのでMODELAで切り出すことに。まずUbuntuとMODELAのシリアル通信を確認する。うまく通信しないので、シリアルの設定を変更する。ボーレートは9600で合ってそうなので、おそらくハードウェアフロー制御がOFFになっていたのではないかと思う。Linuxではminicomというソフトでシリアル通信を設定できることがわかった。 さて、基板を削り出そうとするとダグラスがやってきてcam.pyの使い方を教えてくれた。このソフトは使ったことないが、すごい多機能だ。Epilogレーザー、OMAXウォータージェット、その他カッティングマシンへのNCコードはひと通り出力できるらしい。もちろんMODELAのRMLもサポートしている。 さらに便利だなと思ったのが、座標の移動にgotoというコマンドを使っている。コマンドラインからMODELAのペンプロッタの座標を移動できるのだ(もともとはmoveというコマンドをリネームしている)。これは便利だ。原点をこのコマンドで調節して、相対座標を使って切削するのか、絶対座標での切削しか知らない自分には新たな発見だ。実際には絶対座標を利用していたが、目視で確認しながら位置を調節できるので、無駄が少ない。ここからも材料を極限まで有効活用するという姿勢が感じ取れる。 さて、自分の作ったbrdファイルをcam.pyで開こうとするが開けない。OS XとLinuxの改行コードの違いによる問題じゃないか、とか原因を探っていると、EAGLEのバージョンが自分の使っている6.2ではなく、5.7であることをダグラスが発見する。 そうなるとUbuntu側のアップデートが必要だ。このネット環境ではたかが数10MBのダウンロードに1時間以上かかる。なかなか不便だ。 あまりに時間がかかるので、自分で作ったRMLスクリプトを転送したが、座標が整合していない。日本ではうまくいっているのに、何でだろう。とりあえずEAGLEのアップデートを待とう。 MOSFETが使えないことにはステッピングモータが試せない。DCモータ用のTA7291Pは2個あるが、バイポーラトランジスタなのでスイッチング速度が遅いのと電圧降下があってステッピングモータには不向きだ。いや、待てよ。ある程度の周波数のパルスには応じるはずだから、テストには使えるはずだ。明日試しに使ってみよう。 … Continue reading

04. September 2012
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